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帰る場所を守るために―国家災害統括特殊救助機関 "暁" の継承者達―  作者: HANA
第4章 時代は廻る

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第47話 To Know Reimei

翌日。

第一特務隊訓練場。


「隊長、統括室からです」

訓練を終えたばかりの本城が日向に端末を差し出した。

日向はタオルで汗を拭きながら画面を見る。

発信元。

──統括室。


「俺?」

思わず眉が寄る。

隣では黒崎兄弟が訓練記録の確認や片付けをしていた。

「隊長、何かやらかした?」

「隊長はやらかさないだろ」

「じゃあ悠真か」

「なんで、俺?」

「お前は毎日何かしらやらかしてる」

「……否定出来ない」

黒崎兄弟と悠真は軽口を言い合い、笑っていた。

そんな3人を横目に日向は端末を取る。

『日向隊長』

聞こえてきたのは奏の声だった。

「はい」

『本日14時。黎明本部第3会議室へ。黒崎兄弟と悠真も』

「会議ですか?」

『はい』

「議題は?」

『来れば分かる』

通信が切れると日向は端末を見つめたまま固まった。


「……嫌な予感しかしねぇ」

「何でした?」

駿が日向に声を掛けると日向は気まずそうな顔をしていた。

「14時、第3会議室、駿、謙、悠真も」

「あー」

駿も察したような顔をした。

「怒られるやつ?」

「俺もそう思う」

二人が同時にため息を吐き、謙と悠真は肩を落としていた。


その頃、医療棟でカルテ確認を行っていた蒼志の元にも呼び出しが掛かった。

『神代班長』

「はい…」

発信元は同じ統括室だ。


『14時、第3会議室へ』

「はぁ…」

蒼志の眉が僅かに寄る。

医療班長である自分が会議室に呼ばれる理由が思い当たらなかった。


最近問題を起こした記憶もない。

むしろ平和だった。

平和過ぎるくらいに。


蒼志は顎に手を置き、考え込むと隣にいた医療班員が声を掛けた。

「どうしました?」

「……呼び出し食らった。…父さん何かやった?」

「何で総統なんですか」

「大体父さんだから」

医療班員が苦笑した。


誰も理由を知らない。

だが統括室からの呼び出しに良い思い出は無かった。


13時53分。

黎明本部第3会議室の中にはすでに蒼真達が候補者達の到着を待ち構えていた。


「そろそろ来るか」

蓮が他の会議の資料にめを棟していたのを閉じると呟く。

長年、第一は指定の時刻の5分前には揃う。もう呼び出しを受けた5名が入室してきてもおかしくはない。


「帰っていいか」

「ダメだ」

真顔で言う蒼真に蓮は即答した。

律が眼鏡を押し上げ、奏は既に笑いを堪えている。

葛城は椅子へ深く座りながら呟いた。

「候補者より、お前の方が面倒だな」

「知ってる」

「自覚あるのかよ」

14時まで、あと少しだった。


13時54分

黎明本部第3会議室の扉の前に第一特務隊4名と蒼志が到着していた。


「蒼志もなんかしたの?」

「してない。…と思う」

「呼び出し理由は聞いたか?」

「いや……」

蒼志も呼び出されていたことに他の4名は驚きながら、日向がドアノブに手をかけ扉を開けた。

扉を開けた瞬間、5人は思わず足が止まった。


黎明総統・神代蒼真

総統補佐官・黒瀬蓮

本部統括特別執行官・葛城礼二

統括室部長及び特別執行官・朝倉奏

全部隊統括管理責任者・久我律


黎明上層部が勢揃いしていた。

5人は入口から動けず、固まっていた。


そんな様子を見た蒼真が低い声を落とした。

その声はどこか苛立ちが感じられた。

「座れ」

蒼真が指差すとそれぞれが急いで着席をした。

そして全員が席へ着いた所で奏が資料を配り始めた。


「本日の議題です」

候補者達は資料を受け取ると一斉に表紙の文字に釘付けになった。

沈黙。

さらに沈黙。


——次期総統・総統補佐官候補者一覧

  その選定、教育に関して。


その表紙の文字は5名に衝撃を与えているのは間違いない。


「……は?」

最初に声を出したのは日向だった。

その隣で駿も固まったまま表紙の文字を見つめ続け、謙は何度も目を擦り文字の確認をしている。

悠真は資料と蒼真を交互に見ては目を見開く。

蒼志に至っては「何で俺が呼ばれた」と首を傾げている。


会議室の向こう側に座る幹部達。

蓮だけが腕を組み候補者の顔を眺め、蒼真は興味ないとばかりに窓の外を眺めている。

葛城、奏、律は候補者たちの反応に肩を振るわせている。


候補者達はまだ知らない。

この会議が。

自分達の未来を決める第一歩になる事を。


候補者達の反応を一通り見届けると、葛城がついに堪えきれず吹き出した。


「お前ら良い顔してんな」

「良い顔じゃねぇですよ。何なんですかこれ」

「見たまんまだ」

すぐに返事を返す日向に葛城が肩を竦めた。


「だから何で俺達なんですか」

今度は駿が口を開いた。


当然の疑問だった。

総統候補。

補佐官候補。

そんな言葉を突然突き付けられて理解出来る訳がない。


蒼志も資料を捲りながら眉を寄せていた。

「俺、医療班なんですけど」

「知ってる」

蒼真が窓の外を見たまま答える。

「じゃあ何でですか」

「知らん」

「「知らんのかよ」」

候補者達の声が綺麗に揃った。

葛城達が再び吹き出す中、蓮だけは真顔で蒼志に視線を向け口を開いた。

「お前は俺に言え」

「何でですか」

「入れたの俺だから」

会議室が静まり返り、候補者全員の視線が蓮へ向いた。

蒼志は迷いながらもどうして自分が呼び出されたのかの理由を蓮に尋ねた。


「補佐官」

「なんだ」

「何で入れたんですか」

「知らん」

「いや、なんで?!」

蒼志が即座に突っ込むと奏が顔を伏せて肩を震わせる。

葛城と奏は額を押さえていた。


この会議。

始まってまだ数分だった。

だが既に酷い。


とはいえ、この幹部達の集まる会議はいつもこんな様子なのだ。

それを候補者達が知るわけもなく、未だ窓の外を眺めている蒼真も何を考えているのか分からず、候補者たちは怯えていた。

そんな蒼真の様子を蓮は横目で見て蒼真は今、くだらないことしか考えていない。と蓮は確信していた。


「とりあえず」

口を開かない蒼真に変わり、蓮が話し出した。

「お前らは現時点での候補だ」

ようやく真面目な話になったようだ、と候補者達は姿勢を正した。

「決定じゃない、”候補”だ。だから今すぐ何か変わる訳じゃない」

その言葉に悠真達は少しだけ安堵の表情を見せ、小さく息を吐いた。

しかし次に葛城が落とした言葉に再び固まった。


「教育は始める」

「教育?」

謙が聞き返すと葛城は頷き続けた。


「総統とは何か、補佐官とは何か、それを知る為の教育だ」

会議室の空気が少しだけ変わり、一気に空気が張りつめて感じられた。

今まで笑っていた奏と律も口を閉じていた。

そして初めて蒼真が窓の外から視線を戻し、候補者達を見る。


一人一人を。

ゆっくりと。


「勘違いするな」

静かな声だった。

だが、その声は候補者達には重たく感じられた。


「お前らを総統にする会議じゃねぇ」

候補者達が息を呑んだ。

蒼真は候補者達から視線を外さずに続けた。

「黎明を知る為の会議だ」

それだけ言うと資料へ視線を落とした。


そんな蒼真を悠真は思わず見つめた。

駿も。

謙も。

日向も。

蒼志も。


誰もまだ分からない。

何故、自分がここにいるのか。

何故、自分が選ばれたのか。

その答えを知るのは。

まだ少し先の話だった。


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