コミッションへの誘い
車の姿が少ない市街から離れた道路を一台の高級車が走っていた。その車の後部座席で目を閉じて、今後の策を考えていたオッタビアの携帯が鳴った。
ちらりとオッタビアが携帯のディスプレイに目をやる。そこには発信者ではなく、番号が表示されていた。
誰だ?
そう思ったオッタビアは怪訝そうにその電話に出た。
「やあ、君がオッタビア君かね」
オッタビアが名乗る前に相手が話しはじめた。
「私はコルレオーネだ。話しがあるのだが、今、時間はあるかね?」
オッタビアにとって予想外の相手だった。
この電話の意図は何か?
どう言う態度で臨むか?
オッタビアがそんな事を考え、一瞬返す言葉が出なかった。
「どうした。返事が無いが」
「ああ、すまない。話とは何だ?」
「ぞんざいな口の聞き方だな。私にそんな口の聞き方をする奴は、この国にはお前以外にはおるまい。」
この国最大のファミリーのボスのその言葉にオッタビアはどうすべきか少し考えたが、そのままで行く事にした。
「で、話とは何だ?」
「ガンビーナファミリーが君に壊滅させられてしまったもんで、コミッションに欠員が出てしまった。お前、その穴に入らないか?いい話しだと思うが、どうかね?」
オッタビアは目標の一つだったコミッション参加の話が出た事で、少しにやりとした。
「そう言う事なら、話しに乗ってもいいが」
「ははは。何だか、こちらが戦争に負けたみたいな言いようだな。私が短気な奴でなくてよかったな」
笑いながらの言葉ではあったが、一種の不気味さが潜んでいた。
「まあいい、お前にも言いたい事があるだろう。その話をしたい。場所は私の支配下にあるホテルだ。そして、来てもらうのはお前と警護にもう一人の二名だけだ」
「二人?」
「そうだ。私のテリトリーに何人もの他ファミリーを入れる訳にはいかない。コミッションを開く時でさえ、人数は数人に制限しているんだからな」
「分かった。行かせてもらう」
「では、細かい事は私の配下から連絡があるので、そこでつめてくれ」
二人は電話を切った。オッタビアは少し緊張が解けた感じだった。一方のコルレオーネは少しにやっとしながら、つぶやいた。
「さて、誰を警護に連れてくるかな」
ホテルの前に一台の車が止まった。ドアボーイが後部座席のドアを開けると、煌びやかなドレスを着た女性が降りて来た。それはクラウディアだった。そして、それに続いて降りて来たのはオッタビアだった。ドアの所にはホテルの従業員とは思えない身なりの男が立っていて、二人はその男に招かれるまま、ホテルの中に入って行く。
普段は大勢の宿泊客がいると思われる豪華な造りのロビーには客の姿は全く見られない。そんな静かなロビーを三人は進み、ホテルの奥にあるラウンジに入って行った。中にも客の姿はなく、唯一中ほどに置かれた丸いテーブルに一人の男が座り、その横に一人の男が立っているだけだった。
「やあ。よく来てくれたね」
座っていた男が立ち上がり、手を差し出した。
「いえ。こちらこそ」
電話の時とは打って変わった口調で、オッタビアが答えながら、手を重ねた。
「二人だけと言ったが、えらく綺麗なお譲さんを連れて来られたもんだ」
そう言ったコルレオーネの微笑みには、どこかしてやったりの気持が浮かんでいた。




