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クラウディア 参戦

 「何だ?」


 ヴィクトルがそう言って立ち上がると、窓に歩み寄り下を眺めた。

 そこには門を爆破し、敷地内に車で乱入してくるソルジャーたちがいた。

 今、攻め込んでくるとしたら、ベルッチファミリー以外ありえない。

 ヴィクトルが窓から反転するのと、ほぼ同時に配下の者が飛び込んできた。


 「ボス、ベルッチファミリーの襲撃です」

 「分かっている。先代をやったあの女もいるはずだ。あの女はどこにいる?

 あの女は絶対来ているはずだ。奴は簡単には倒せんぞ。ロケット砲を用意しておけ」

 「はい」


 男はそう応えると、応戦のため部屋を出て行った。


 「ここまで攻め込まれるまで、気づかないとは」


 ヴィクトルが忌々しげに言った頃には、屋敷の正面で激しい銃撃戦が始まっていた。

 戦闘を有利に運ぶため、どちらのファミリーも敵の背後に回る事を考えていた。

 ガンビーナの屋敷には外に通ずる地下通路がある。

 場合によっては逃走のために、場合によっては敵の背後に回るために。

 今回は敵の背後をとるために、ガンビーナ側のソルジャーたちがその地下通路を進んでいた。彼らのミッションはこの地下通路を通り、屋敷の外に一旦出て、屋敷の塀に沿ってオッタビアたちが爆破した門をから入り、オッタビアたちの背後を襲うと言うものだ。

 彼らが進む地下通路はほとんど使われた事がなかったため、かなり澱んだ空気で満たされていた。

 薄暗く、狭い地下通路をマシンガンを構えたソルジャーたちが進んで行く。

 やがて、その先に階段が現れた。

 階段のその先には空き家状態の民家の二階のクローゼットにつながっていた。

 ソルジャーたちが次々に姿を現す。

 長年、空き家状態のその家の床には埃が積もっていて、ソルジャーたちが慌ただしく歩くたびに、埃が部屋に舞い上がって行く。

 ソルジャーたちは階段を使い、一階を目指す。

 階段を下りた先にはこの家の玄関があった。

 先頭の男が、玄関のドアを開けた。

 耳に束の間も止むことのない銃撃音が届く。

 男が開いたドアから、外の様子をうかがう。

 近くに敵のソルジャーたちはいない。

 男が一度背後を振り向き、他のソルジャーたちに行くぞと一度頷いてみせた。

 背後のソルジャーたちがそれに頷き返したのを確認すると、戦闘の男が走り出した。

 その民家から出てきたソルジャーたちは民家の前にあった道路を横断し、反対側の歩道に走り寄った。その歩道はガンビーナの屋敷の塀に沿って続いている。

 ソルジャーたちが塀に沿って走り出す。


 その姿を車の中から、見つめている者達がいた。

 ガンビーナの屋敷とつながる地下通路ある。その噂が本当なら、屋敷に進入したソルジャーたちの背後を突こうと、そこからガンビーナ側のソルジャーたちが出てくるはずである。

 そして、その通路は逆に屋敷に攻め込むことにも使える。そう踏んだベルッチ側は監視の部隊を各所に配置していた。


 「もしもし、地下通路の出口を発見した」


 道路わきに停車している車の中の男が、クラウディアに電話をした。

 ガンビーナの屋敷の中の木の上からガンビーナのソルジャーたちを狙撃していたクラウディアが狙撃銃を小脇にかかえ、電話を耳に当てていた。

 無言のまま電話を切ると、クラウディアが木の上から飛び降りる。


 サクッ。


 着地の音を残し、クラウディアの姿が一瞬の内に消えた。

 次にクラウディアが姿を現したのは、ガンビーナの屋敷の門の前だった。

 一度立ち止まったクラウディアが、電話をかけてきた男の場所の方角に目をやる。

 歩道の上を走って向かってくる大勢のソルジャーたちの姿が、クラウディアの視界に入った。

 向かってきているソルジャーたちもクラウディアの姿を視認した。

 ベルッチファミリーには恐ろしい女のソルジャーがいる。

 そんな話は今や常識だ。ソルジャーたちは自分たちが向かっている先にいる女こそ、そのソルジャーに違いない。そう確信した。

 先手必勝。

 ソルジャーたちが、マシンガンのトリガーに指をかける。

 銃口の先はクラウディアである。

 ソルジャーたちがトリガーを引く。

 先頭を進むソルジャーたちのマシンガンが一斉に火を噴く。

 その瞬間、クラウディアの姿が消えた。


 「何だ?

 どこに行った?」


 恐怖に襲われながら、トリガーを緩め、ソルジャーたちが立ち止まって、クラウディアの居場所を探す。

 考えられるのはそのまま屋敷の中に逃げ込んだ。

 そう納得しかけた時、目の前にクラウディアが姿を現した。

 慌てて、銃口を向けようとしたが、その時には目にもとまらぬクラウディアの拳が先頭にいたソルジャーたちの顔面に命中した。

 クラウディアの拳を顔面に受けたソルジャーたちは顔面を陥没させ、後方に吹き飛んで行く。

 当然、その後方にもソルジャーたちがいる。突然、自分の前にいるソルジャーが猛スピードで吹き飛んでくる。

 激突されたソルジャーも後方にのけぞりながら、倒れて行く。

 クラウディアが倒れたソルジャーたちを力いっぱい踏みつけて、後方のソルジャーたちに向かって行く。


 ボキッ!


 「げはっ」


 クラウディアに踏みつけられたソルジャーたちの身体からは鈍い音がして、口からは言葉ではない声が出る。

 踏みつけられた場所が悪い者は口から、血も吐き出している。

 後方にいるソルジャーたちは銃を構えていなかった分、反応が遅れた。

 瞬く間に、目の前に現れたクラウディアに成す術もなく、殴り飛ばされていく。

 ここでも、後方のソルジャーたちを巻き添えにしながら、倒れこんでいく。

 数十人はいたはずのソルジャーたちが、瞬く間に全滅した。

 クラウディアは血の海に沈めたソルジャーたちには目もくれず、先に進んで行く。

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