撮られたレーザー銃
片目になっても、セレンは銃弾の飛来方向よりあすかの場所を特定し、あすかに向かって来た。
セレンが自分の近くにあったテーブルをあすか目がけて蹴り飛ばす。
猛スピードで空を切りながらテーブルが舞い、あすかの近くの壁に激突した。
あすかが逆に自分もセレンに近づいて行く。
セレンがあすかに向かっていく。そして、あすかに蹴りを入れる。
空気を切り裂く音が、闇も切り裂く。
セレンの蹴りがあすかの頬近くをかすめた。
そんなセレンにあすかが蹴り返す。
セレンはそれを腕で受けとめ、あすかを部屋の奥にほうり投げた。
あすかが店の奥にあったテーブルをなぎ倒し、大きな音を立てながら、闇の中に倒れこむ。
セレンがそのあすかを再び襲うため、店の奥に進んで行く。
立ち上がろうとしているあすかに、セレンが右手を繰り出したが、これも虚しく空を切った。
片目を失ったことでセレンはすでに空間認識能力を失っており、距離を識別する能力に大きな誤差が生じていた。
あすかがセレンの横を通り抜け、入り口側に回ろうとしている。
セレンがあすかを捕まえようと出した右手も、虚しく空をつかんだだけだった。
あすかがすぐさまセレンのその手を掴むと、体を反転させてセレンの手を背中から肩に乗せる。
あすかは腰を落としながら、セレンの勢いそのまま背負い投げた。
投げ飛ばされたセレンが店の奥にあったテーブルや椅子を大きな音と共に破壊していく。
あすかはセレンを投げ飛ばした瞬間、階段を駆け上がり通りを目指した。
通りでは怖いもの見たさの野次馬たちが、階段を取り囲んでいたが、階段を上って来るあすかを見て、恐怖に顔をひきつらせ一目散に逃げ出して行く。
階段の上に上がると、あすかがスカートの中に手を入れ、右足に取り付けたあったレーザー銃を抜き、階段に向かって構えた。
部屋の奥に投げ飛ばされたセレンが、あすかを追って階段に向かってきた時、その階段の先に何かを構えているあすかがいる事を確認した。
セレンがあすかを確認した時には、すでにあすかはレーザーの引鉄を引いていた。
階段に舞う小さな埃が焼け落ちながら、レーザーの航跡を浮かび上がらせる。
まず狙ったのはセレンの残っていた左側の目だった。
光学的な撮像素子は一瞬の内に、レーザーで破壊された。
両目を失ったセレンは行動を停止した。
あすかが静かに階段を降り、少し離れた場所からセレンの腹部にレーザーを照射する。
着ていた服に焼け焦げた穴が一瞬の内に開く。
レーザーがセレンの腹部から、内部を破壊していく。
セレンの膝が曲がり、崩れ落ちた。
通りでは再び人が集まっていた。そんな中、セルジオも鞄に隠したカメラであすかを撮り続けていた。
公衆の面前で繰り広げられた二人の戦い。
その一部始終はセルジオだけでなく、一般人たちの中にも記録した者がいた。
その映像は新聞、テレビと言ったマスメディアに流れて行った。




