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あすかが放った銃弾

 全てをカメラにおさめていたセルジオはいぶかしげな顔をしていた。

 最初のセレンの蹴撃。あれで無事だったあすか。

 なぜ無事だったのか、分からない。だが、あれで無事だったのなら、今の拳撃でも無事なのではないだろうか?

 セルジオは疑いの目を向けていた。

 突然あすかが吹き飛んできたため、逃げ惑う人々。

 その中にあすかの姿を確認した。


 「いた!」


 セルジオが気付いた時にはセレンもあすかの姿に気づいていた。

 セレンが再び追撃に移る。

 倒れている人々を踏みつけながら、セレンが走る。

 あすかは通りの横にある地下へ下りる細い階段に飛び込んだ。

 その階段の先にあるのはバーのようだったが、ドアは閉じられていた。

 あすかは地上から階段を一気に飛び降り、ドアをけ破る。

 あすかは店の中に着地すると、すかさず体を反転させ、地上に向けピストルを発射した。

 狭い通路の中を通って、空を切り裂いてくる銃弾。

 セレンと言えど、その銃弾を前もって検知することはできない。

 あすかを追って、姿を現したセレン。

 銃弾を検知したが回避はできない。

 銃弾がセレンの腹部に命中し、セレンの動作が停止する瞬間に、あすかはバーの奥に姿を消した。

 再び動き始めたセレンがあすかを追って、店の中に入る。


 店の中は地下のため、窓が無く、蹴破ったドアからわずかに光が差し込んでいるだけだった。

 それも入口が北向きだったため、入ってくる光はわずかだったので、店の奥はほぼ闇に近い状態だ。

 セレンの撮像素子が赤外光用撮像素子に切り替わる。

 暗闇の中でも、セレンはあすかの姿をとらえることができる。

 セレンが部屋の中を見渡す。

 店の造りは奥に広がっており、そのスペースにテーブルや椅子が整然と置かれて、カウンターは左手の壁側に配置されている。

 しかし、あすかの姿は見えない。

 遮蔽物のどこかにあすかが隠れたものと考え、セレンが奥に進んで行く。

 この店の入り口の階段の右手に小さなスペースがあった。

 少し出っ張ったコンクリートの柱の陰で、あすかは手に持っていたピストルをそのまま構えていた。

 あすかはセレンの背後に潜み、その銃口はセレンの頭部を確実にトレースし、トリガーを引くチャンスを待っていた。

 セレンが店の中ほどで、周りを確認しだした。

 あすかの位置からは、ほとんど後頭部しか見えなかったセレンが横顔を見せた。

 あすかはセレンの右目に照準を合わせ、トリガーを引く。

 暗闇で使える赤外撮像素子では銃弾をかわすことはできない。

 銃弾をかわせるのは通常の照度環境下のみだった。

 あすかの放った銃弾が、セレンの右目を襲う。

 ヒューマノイドの光学的構造を持った眼も、銃弾で破壊できる部位だった。

 そこに銃弾を受けたため、セレンの片目はその機能を失った。

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