ざわめくマフィア
ガンビーナのボスがカテリーナの顎のあたりを手でつかみ、カテリーナの顔をぐいっとよじり、カテリーナの視線を自分に合わせようとする。
その顔つきは厳しい表情に変わっていた。
その怖さに、一瞬怯えたものの、カテリーナは口をつぐんだまま、再び目をそらした。
「てめえ、ボスがたずねているんだ。さっさと答えろ!」
取り囲んでいるソルジャーの一人が、恫喝した。
襲い掛かりそうな勢いの男を、ガンビーナのボスが手で止めた。
「お母さん。私が聞いている事に答えてほしいなあ。
答えてくれたら、このまま引き揚げるよ」
このまま引き揚げる。
大事な娘が助かる。
それはカテリーナには悪魔の囁きだった。
娘を助けてくれた恩人を売ってしまう事に、気が引けない事はなかったが、口が動いてしまった。
「ロレンツォ教会。
そこの神父さんに頼みました」
カテリーナが奪われまいと、ルチアーナをきつく抱きしめながら答えた。
「ロレンツォ教会だと?」
ガンビーナのソルジャーたちの間から、ざわめきが起きた。
ベルッチの屋敷と道路を隔てた位置に建つロレンツォ教会。
怨霊がさまよい、立ち寄る者をあの世に引きずりこむと言う噂のため、廃墟となっている教会。
しかし、その世界の者たちは薄々気づいていた。
それが作られた噂であることを。そして、あの教会がベルッチの屋敷と地下でつながっているであろう事を。
「あの女はベルッチファミリーの仲間とは思えんのだが。
それがどうして、ロレンツォ教会に」
ガンビーナはつぶやいた。
「行くぞ!今すぐ!」
ガンビーナは身体を翻し、外に向かった。
ソルジャーたちも、そのままガンビーナに続いて出て行った。
カテリーナとルチアーナの二人は出て行く男たちを眺めながら、恐怖から解放された脱力感に襲われていた。




