戦いの終わり
その頃にはマフィア同士の戦いにもほぼ決着がつきかけていた。
モニカの圧倒的な戦闘力で、緒戦は劣勢だったガンビーナ側だったが、モニカがあすかに誘われるように通路に姿を消してからは、形勢逆転に成功していた。
ガンビーナ側は一部のソルジャーを裏口から出して、店の表に回した。
店の内部の敵に神経を集中していたサンドロのソルジャーたちの背後から、表に回ったガンビーナのソルジャーたちの銃弾の雨が襲う。
店の中に轟きわたる銃撃音。
血しぶきをあげ、死の踊りに興じるソルジャーたち。
挟み撃ちになったサンドロのソルジャーたちが、死を覚悟して手にしているマシンガンを乱射する。
ガンビーナのソルジャーと共に、建物のいたる所が砕け散っていく。
しかし、己が身も血しぶきと肉片を飛び散らして、無へと帰っていった。
辛勝。
勝ったとは言え、ガンビーナ側も多くの犠牲を出した。
店のあちこちも銃撃の傷が生々しく刻みつき、空間は真っ赤に色塗られてしまった。
ソルジャーたちが疲れた表情で、マシンガンを構えたまま、あたりを見渡す。
ソルジャーたちの気がかりは、モニカである。
恐ろしいほどの戦闘力で、仲間を瞬殺していった女。
あの女は今、どこにいるのか?
今、何をしているのか?
ソルジャーたちがモニカが消えた通路の前で、銃を構え、中の様子をうかがっている。
ヒタ、ヒタ、ヒタ。
通路の中から足音がする。男たちが恐怖に耐えながら、その先の暗闇に目を凝らす。
服を真っ赤な血で染めた少女が一人、自分たちの方に向かってやって来る。
あすかである。
男たちはその姿に違和感を覚えたし、見知らぬアジア系の女ではあったが、モニカではなかったことで、安堵感を覚え、男たちは構えていた銃を下した。
この通路の先にあるいくつもの部屋には多くの女たちがいた。
そんな女の一人なのだろうと思っていた。
「おい。その中はどうなっている?」
男がモニカの事を知りたくて、そう言った。
あすかが何も答えないまま、進んでくる。
「おい。聞こえないのか?」
男の語気が強まった。
その頃、あすかは通路を抜けてきていた。
あすかがゆっくりと辺りを見渡す。
「四人か」
あすかはそう言ったかと思うと、後ろに回していた右手を前に突き出した。
その手にはピストルが握られていた。




