↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
90/130

第79話 守りたいその気持ち

 フィーが、魔法の修行を始めてから、商会の片隅に。一つの光景が——日課のように、加わった。


 中庭で、フィーが、結界魔法の練習に——励む姿だ。


 ワタシは、手の空いた時には——その練習に、付き合うようにしていた。


*


「ルキさま。——見て、ください!」


 フィーが——両手を、かざす。


 すると、彼女の周りに、淡く光る——半球状の結界が。ふわり、と——広がった。


「おお。——すごいじゃないか。——前より、ずっと大きくなってる」


「えへへ。——毎日、練習してるんです」


 フィーは、照れたように、笑った。その笑顔は——出会った頃の、怯えた表情とは——まるで別人のようだった。


 今では、自分の力で、何かを成し遂げる喜びを、知っている。その瞳は——きらきらと、輝いていた。


*


 フィーの成長は——目覚ましかった。


 最初は、小さな結界しか張れなかった。それが今では——数人を、すっぽり包めるほどに。


「フィーさんの上達は——本当に、驚異的ですよ」


 魔法を教えている人も——舌を、巻いていた。


「結界魔法は、本来——とても繊細で、難しいものです。それを、こんなに短期間で、ここまで。やはり彼女には——並外れた素質が、ある」


(——やはり)


 ワタシは——内心、複雑な思いだった。


 その素質。それは、おそらく、フィーの——血筋に、由来するもの。彼女が——まだ知らない——出自に。


 でも、今は、それを——言うわけには、いかない。ワタシはただ——フィーの頑張りを、見守ることしか。


*


「ルキさま」


 ある日。練習の合間に、フィーが——ふと、言った。


「わたし——もっと、強くなりたいんです」


「強く?」


「はい」


 フィーは——真剣な目で、頷いた。


「ルキさまは、いつも、みんなのために——大変な思いをして、戦っていて。だから、わたしも——その力に、なりたくて」


 その言葉に——ワタシの胸が、温かくなった。


「この結界が、もっと強くなれば——いつか、ルキさまや、商会のみんなを、守れるかもしれない。——危険なことが、あった時に」


 フィーは——両手を、ぎゅっと握った。


「だから、わたし——頑張ります。みんなを、ルキさまを、守れるくらい、強くなるって。——決めたんです」


*


(——ああ)


 ワタシは——胸を、打たれた。


 かつて、守られるだけだった、あの子が。今は——「誰かを守りたい」と、願っている。


 救われた者が、今度は、救う側に——なろうとしている。


 その健気さ。その優しさ。ワタシは、眩しいものを見るように、フィーを——見つめた。


「……ありがとう、フィー」


 ワタシは——そっと、言った。


「その気持ちだけで——すごく、嬉しいよ」


「! ——ほ、本当ですか」


「ああ。——でも、無理はしないでね。フィーが、怪我でもしたら——ワタシが、悲しいから」


 その言葉に、フィーの頬が、ぽっと——赤く、染まった。


*


「……ルキさま、は」


 フィーは——うつむきながら、小さな声で言った。


「ずるい、です」


「え?」


「そんなふうに、優しく言われたら。——わたし——もっと、頑張りたくなっちゃう、じゃ、ないですか」


 その横顔は、夕日に照らされて、ほんのり、と——赤かった。


 ワタシは——どきり、とした。


 フィーの、その表情。その声。ワタシを想ってくれている気持ちが——まっすぐ、伝わってきた。


(——フィーは)


 ワタシは、気づいていた。フィーが、ワタシに——淡い想いを、寄せてくれていることに。


 そして、ワタシ自身も。——このまっすぐで、健気な女の子のことを——大切に、思っていることに。


*


 その想いが、どういう形のものなのか。——ワタシには、まだ——はっきりとは、わからない。


 守るべき仲間としての情、なのか。それとも、もっと——別の、何かなのか。


 でも——一つだけ、確かなことが、あった。


 フィーの笑顔を。その未来を。——ワタシは、守りたい。心から——そう、思う。


「……さあ。——練習の続きを、しようか」


 ワタシが言うと、フィーは——元気よく、頷いた。


「はい!」


 彼女の周りに、また、淡い光の結界が——ふわりと、広がる。


 夕日に照らされたその光は——とても優しく、温かかった。


 まるで——フィーの心、そのもののように。


 ワタシは——その光を見つめながら、思った。


(——この子と、これからも、一緒に——歩いていけたら)


 その願いが、どんな名前の感情なのか。——今は、まだ、わからない。


 でも、その温かさだけは、確かに。ワタシの胸に——灯っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。