↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
89/131

第78話 はじめての魔法

「フィー。——ちょっと、いいかな」


 ある日。ルキさまが——わたしを、呼んだ。


 その表情は——いつもより、少し——真剣だった。


「フィーは——魔法に、興味、ないか?」


「魔法……ですか?」


 思いがけない言葉に、わたしは——きょとん、とした。


*


「うん」


 ルキさまは——優しく、微笑んだ。


「フィーには——もしかしたら、魔法の才能が、あるかもしれない。そんな気が、するんだ。——よかったら、一度——試してみないか?」


「わたしに……魔法の、才能?」


 わたしは——戸惑った。


 魔法なんて——一部の選ばれた人だけのもの。奴隷だったわたしに——そんなものがあるなんて、とても思えない。


「むり、ですよ。——わたしなんかに、そんな、すごいこと」


「やってみないと——わからないよ」


 ルキさまは——いたずらっぽく、笑った。


「もし才能があったら——フィーの新しい力に、なるかもしれない。——前に言ってたろ? 『みんなの役に立ちたい』って。——その一つの道に、なるかもしれないよ」


(——っ)


 その言葉に——わたしの胸が——とくん、と鳴った。


 みんなの役に立てる。——もし、本当に——そうなれるなら。


「……やって、みます!」


*


 次の日から、わたしは——魔法の練習を、始めた。


 基礎を教えてくれたのは——ルキさまと、商会に出入りする——魔法に詳しい人。


「いいかい。——魔法は、体の中の魔力を——感じ取って。それを——外に——引き出すんだ」


「魔力を……感じ取る」


 わたしは——目を閉じて、自分の体の奥に——意識を、向けた。


 最初は——何も、わからなかった。魔力なんて——どこに、あるのか。


 でも——何度も繰り返すうちに。


(——あれ?)


 体の奥のほうに——ほんのり、と。あたたかい何かが、あるのを——感じた。


*


「……何か、感じます。あったかいものが——お腹の、あたりに」


「それだ! ——それが魔力だよ。——その感覚を、大事にして」


 わたしは——そのあたたかいものを、そっと——手のひらに、集めてみた。


 すると。


 ——ぽう、っ。


 わたしの手のひらに——淡い光が、灯った。


「……っ! ——ひ、光った!」


「すごいじゃないか、フィー!」


 ルキさまが——目を、輝かせた。


「初めてで、ここまでできるなんて。——やっぱり、フィーには——才能が、ある」


(——わたしに、才能が)


 信じられない思いだった。——でも。手のひらの上の——小さな光は。確かに——わたしが、生み出したものだった。


*


 それから、わたしは——夢中で、練習に励んだ。


 いろんな魔法を、試してみた。火を灯したり、水を出したり、風を起こしたり。


 でも——その中で、一つ。わたしが——特別に得意なものが、あった。


 結界の魔法だ。


「結界……?」


「ああ。——何かを守る魔法だ。魔力で——見えない壁を作って、危険から身を守る」


 わたしが、その魔法を試すと。


 ——ふわり。


 わたしの周りに、淡く光る——透明なドームが、広がった。


「……これは」


 教えてくれた人が——驚いたように、言った。


「すごい。——こんなに安定した結界を、こんなに早く。フィーさん——あなた。結界魔法に——並外れた才能が、ある」


*


(——わたしが、みんなを守れる)


 その結界を見て——わたしの胸は、熱くなった。


 誰かを守る、魔法。それは——なんだか、わたしにぴったりな気がした。


 強い攻撃魔法、とかじゃなくて。——みんなを、大切な人を——守る、力。


(——きっと、これだ)


 わたしは——そう、確信した。


 メイアさんが言ってくれた。「いつか、あなたにしかできない何かが、見つかる」と。


 それが——これ、なのかもしれない。


 魔法で、結界で——みんなを守る。ルキさまや、商会のみんなを、危険から——守る力に、なる。


*


 その夜。わたしは——一人、練習の続きをしていた。


 何度も、結界を張る。——消す。また、張る。少しずつ——大きく、安定していく。


 手のひらの中に、光が宿るたびに、わたしの胸は——喜びで、いっぱいになった。


(——わたしにも、できることが、あったんだ)


 ずっと、探していた。自分にできること。——みんなの役に立てること。


 それが——やっと、見つかった。


 不思議だった。——どうして、奴隷だったわたしに——こんな才能が、あるんだろう。


 わたしの忘れてしまった、昔のこと。——その答えが、どこかに、あるのかもしれない。でも今は、わからない。わからないけれど。


 大事なのは——この力で、大好きなみんなを、守れるようになること。


(——もっと、練習しよう)


 わたしは——新たな決意を胸に、結界の光を——見つめた。


 淡く、優しく輝くその光は。まるで——わたしのこれからを、照らしてくれているかのようだった。


(——待ってて、ルキさま。——わたし、きっと——あなたを守れるくらい、強くなるから)


 その夜の結界は——いつもより、少しだけ——あたたかく、光っていた気がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。