表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/24

第21話:帝都の落日、女王の祝宴

――紙の焼ける、鼻を突く匂い。

 

 ガリウス帝国の首都、その広場では、民衆が「ガリウス金貨」を焚き火に投げ込んでいた。

 パン一斤を買うのに、馬車一台分の金貨が必要になった国。

 

 昨日までの「富」は、今日、ただの「ゴミ」へと変わった。

 

 私は、ゼオン陛下と共に、黄金の装飾が剥げ落ちた帝都のメインストリートを歩いていた。

 

 【鑑定対象:帝都ガリウス。資産価値:マイナス成長。……救いようのない、死にデッド・ストックね】

 

 かつて私を「小娘」と侮辱した帝国兵たちは、今や武器を捨て、虚ろな瞳で私を見送る。

 私が一歩歩くたびに、ヴァロワ新金貨の輝きが、彼らの絶望を白日の下に晒していく。

 

 ――「静」。

 

 皇帝の謁見の間。

 そこには、震える手で王冠を抑え、椅子に縋り付く一人の老人がいた。

 ガリウス帝国皇帝、オズワルド。

 

「……アイリス・フォン・アステリア! 貴様、何をした! 我が帝国の銀行が、なぜ一晩で機能を停止したのだ!」

 

 ――「動」。

 

 皇帝が叫ぶ。唾を飛ばし、顔を真っ赤にして。

 

「……何をした、ですって? 私はただ、『誠実な商売』をしただけですわ。陛下」

 

 私は、リンが差し出した一通の『最終通告書』を、大理石の床に滑らせた。

 

「あなたが軍備拡張のために乱発した債券。……そのすべてを、私が市場から買い集めました。……そして今、この瞬間をもって、全額の『即時一括返済』を要求いたしますわ」

 

「……な、……一括……!? 払えるわけがないだろう! そんな金、どこにも……!」

 

「ええ。分かっております。……ですから、『差し押さえ』に参りましたの」

 

 私は、皇帝の頭上にある王冠を指差した。

 

「その王冠。その宮殿。この国のすべての土。そして……あなたの、その命」

 

「……っ! ふざけるな! 帝国は、力で、魔法で……!」

 

「魔法? ……ああ、あの燃料切れのヴァルガス様のことかしら?」

 

 私の背後で、テトラが冷淡に付け加える。

 

「……帝国軍の食糧在庫、残り2時間分。……兵士の9割が、すでにヴァロワ銀行から『前借り』をして離反済み。……皇帝の価値、算出。……銀貨1枚(パン一つ分)にも満たず。……ゴミです」

 

「ゴミ……だと……!?」

 

 皇帝が、膝から崩れ落ちた。

 

「……おじ様。勘違いしないで。私は、帝国を滅ぼしに来たのではありません」

 

 私は、彼の目の前で優雅に身を屈め、耳元で冷たく囁いた。

 

「――買い取って、私の『所有物』にして差し上げに来たのですわ」

 

 私は懐から、一枚のヴァロワ新金貨を取り出し、彼の足元に転がした。

 

「これが、あなたの国の『買収価格』ですわ。……お受け取りになって?」

 

 皇帝が、震える手でその金貨を掴もうとする。

 その姿は、かつて私を泥の中に放り出した者たちよりも、遥かに惨めで、滑稽だった。

 

「……アイリス。……怖い女だな、貴様は」

 

 ゼオン陛下が、私の腰を強く引き寄せ、満足げに笑った。

 

「怖い? いいえ、陛下。……私はただ、世界を『適正価格』に書き換えているだけですわ」

 

 帝国の落日。

 

 大陸の半分が、今、私の手帳の「資産」の欄に書き加えられた。

 

 ――さあ。

 

 大きな整理が終わりましたわ。

 次は、あの地下室でまだ夢を見ている「管理人」と「資産」に、最後のトドメを刺しに行きましょうか。

帝国、買収完了。

かつての権威も、アイリスが発行したたった一枚の金貨によって、無残に買い叩かれました。

「静」の女王アイリスと、崩れ落ちる皇帝の対比……これこそが至高の「ざまぁ」です。


「皇帝の没落、最高にスカッとする!」「アイリス様の『おじ様』呼び、冷たくて痺れる!」

そんな感想をお持ちの方は、ぜひ評価【☆☆☆☆☆】とブックマークで応援をお願いいたします。


皆様のブックマークが、アイリスの『世界統一』の印章となります。


次回、第22話「最後の一円まで(グランド・ゼツボウ)」。

ついに、ジュリアンとマリスの「最終査定」。

自分たちが捨てた女が、もはや「世界の所有者」になったことを知った時、二人の心は――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ