118.襲撃終了
3軒目の途中で夕方になり、モンスターとゾンビの混合の群れは引いていった。まだ作業自体は終わっていなかったが、暗い中で作業をしても良い事は無い。という事で撤退だ。
一応帰る途中で確認した所、倉庫に入っている「旨蜜珠」は11個になっていた。今回は7個手に入ったらしい。前より1個多いな。良い事だ。……それはそれとして、王子様には何個だと報告しようか。
でも王子様も今回はちゃんと(?)「旨蜜珠」があると認識した上で防衛戦をしていた筈なので、あんまり誤魔化すのも良くないな。
「[ヤヌシか。「神の恵み」はいくつだった?]」
「純粋に数が多かったのかこっちの慣れか、倉庫には7個入ってますね」
「[ほう。確かに随分と多いな]」
まぁ王子様も、言い方はあれだがだいぶまともになったからな。「枯れ森の大鹿」とか探索班の人員大幅増加とかがある。自分とジェレック君で独占しよう、なんてことは言いださない筈だ。そもそも倉庫に入ってる時点で、実質私にしか取り出せないし。
もちろん現実である以上、地下倉庫には鍵さえ外せば誰でも入れる。ただしその手前にはモンスター素材が山積みになっているし、そもそもあの奥に地下倉庫があるっていう事実があんまり周知されていない。
知っている人も「やんちゃ時代の王子様が落ちて死にかけた」っていう記憶の仕方をしているらしく、家の持ち主として調査に行ってる私以外は危ないから近づかないでおこうね……になってるらしいんだよな。副作用で私への尊敬の視線も増えている。誰だよそういう風に話を持って行ったの。
「今回はどうします?」
「[結界樹と緋朱は前回と同じく与えるべきだろう。可能なら牧場に置いてある「枯れ森の大鹿」にも与えておきたいところだな。あれは魔道具の1種だが、植物依存だから一応効果が出る筈だ]」
「なるほど。あと4つですね」
「[………………クイチとジェレックは強い方が良いからあの2人には与えるとして。2つは保存しておく]」
「なるほど。じゃあとりあえずこっちで3つ、牧場で2つですね。結界樹と緋朱にはこれからあげてきます」
「[あぁ]」
だいぶ長考したな王子様。しかもその結果が自分を除いて配分した上で保存か。丸くなったなぁ。
それはそれとして、私は結界樹と緋朱に「旨蜜珠」をあげに行くんだが。結界樹は前回同様わさわさっと幹が伸びて枝が増えたが、緋朱はというと。
「ん? 緋朱? ……ん!?」
前回のドラゴンダンスを見ている人達が、見ていない人達を誘って前庭の周囲に集まって来る中で緋朱を呼んで「旨蜜珠」を与えたんだが、ドラゴンダンスじゃなくてその場にうずくまったんだよな。
あれ? とその場にいる全員が首を傾げたんだが、そう掛からない内に、緋朱の背中からバキッと固いものが割れる音が聞こえてだな。すぐにこう、バキバキバリバリ、固くて薄い物を割るような音と共に、その、緋朱が脱皮した。
なお脱皮してからちゃんとドラゴンダンスはあったのでそれは良かった(?)んだが、問題はこの脱皮して残った皮だよ。ドラゴン素材だが? というか「旨蜜珠」2個じゃ到底経験値が足りない筈だ。
……まさか4エリア目に入ってからの襲撃を割と積極的に撃退していたから、思った以上に経験値が稼げていたのか?
「[…………、緋朱の抜け殻か?]」
「ぬけがら。まぁ、目の前で脱皮してましたけど」
「[いくら何でも成長が早過ぎる。「神の恵み」は確かに貴重なものだが、だからといって半年もたたずに最初の脱皮が行われるなど有り得ない筈だが……、まさか連日大量のモンスターを倒していたからか?]」
「そういえば、襲撃を撃退したら特別なおやつって覚えてましたね」
そして呼ばれてきたらしい王子様が同じ結論に至っていた。まぁそうなるよな。むしろそれ以外にあってたまるかである。確かに「旨蜜珠」の効果は使った相手のレベルが低い程顕著になるが、だからといってドラゴンの脱皮=一定レベル突破のボーナスはそう簡単に起こる事じゃないんだよ。
流石に王子様も呆気に取られていたが、それはそれ、と切り替えたらしい。そして目の前にある、緋朱の脱皮した皮、というにはこう、鮮やかな赤色のガラスの塊みたいになっているが、を改めて確認し始めた。
「[まぁ良い。ドラゴンの鱗と脱皮した皮は極上の宝石の1つだ。これだけあれば俺様の杖だけでなく、全員の武器を更新して余りある]」
「緋朱の全身分ですからね。保管しててもいいですけど、宝石ならキウリさんに何か便利なものに交換してもらう事も出来るでしょうか」
「[なるほど、それもあったな。それなら俺様達があちらに赴いて相談する方が良さそうだ。明日移動するぞ]」
「分かりました」
そういう事になった。
なおちゃんと熊と大型の機械の両方が出現して仕留められているのは、倉庫にその素材があると確認しているので確実だ。牧場にもきっちり出ていたらしく、2体分ずつな。




