119.得たものの相談
さてその翌日、転移2ヵ月1日目。
「緋朱が脱皮した?」
どうやら「訳が分からんが何故か体が勝手に踊り出す」と顔を引きつらせていた工一さんが「旨蜜珠」を食べた後のダンスの混乱から落ち着いてから、改めて相談である。
どうやら緋朱のドラゴンダンスを撮影しようとスマホを構えていた人が何人かいたらしく、緋朱が脱皮してからドラゴンダンスする映像がちゃんと残っていた。それを見せると、お、おう、みたいな顔になる工一さん。
ただ王子様から、探索班全員の武器が主に火力的な意味で強化できる事と、キウリさんに頼めばまた便利道具が手に入る事を説明されると、真面目な顔になってくれた。そう、だから相談の時間なんだ。
「なるほどな。武器が良くなるのは素直にありがてぇ。出来る事がぐっと増えるし安全さが上がる」
「[まぁ多少は時間がかかるがな]」
「その間は、それこそあの剣を集めたり、私なら周りの建物の修理をしたりすればいいですしね」
「そうだな。道路の大穴も、機能してないとはいえ管を繋ぎ直して、もうちょっとまともに塞いでおきたいとこだ」
「[その間の襲撃はどうとでもなるだろう。問題は、どういうものが必要か、だが]」
「何が交換できるのか、結局分かってませんからねぇ……」
「まずその交換できる品の一覧から貰っておくか」
「[そうだな。それは必要だろう]」
という事になった。そうだな。一覧は必要というか、あると助かるよな。定期的に更新しないといけないが。自動更新されるタブレット的な端末だと最高だな。というのは個人的な懸念及び意見として出しておく。
それは無事工一さんと王子様に同意して貰えたので、何度も一覧を交換したり、欲しいものが無くなっているって事も無くなるだろう。特に特殊な住人は、ゲームだと期間限定を過ぎても残念でしたで済むが、現実になった今はなぁ……。
なお高師さん夫妻にも意見を聞いた所、人の手で作る事が難しいものであるなら、牧草ロールを作る為のフィルムか、それを作る機械があれば、という希望が出てきた。そういえば最初から言ってたな。
「[……今あるものを高精度でコピーする道具の方がありそうだが]」
「ボロボロの剣を増やしてる可能性があるあれですか?」
「あー……いや、有り得るな。少なくとも俺らの世界の技術じゃないし、リットに心当たりがないなら、宇宙人の技術の可能性は高い」
なお、正解である。その名もそのまま「物質コピー機」という設備というか機械だ。ただしお値段は、その、まぁ……だし、運用に必要な電力と資源がバカなんだが。
コピーするものによってコストは変わるので、フィルムぐらいなら何とかなる……か? 基本の基本である廃材系とかと同レベルなら、今の状況というか牧場関係者だけでも調達は可能……? 流石にゲームには牧草ロール用のフィルムなんて無かったから、推測しか出来ない。
とはいえ、それこそあのボロボロの剣程のコストはかからないだろう。という事で一旦話はまとまり、3人揃って元の拠点に戻る。で、キウリさんに説明とお願いだ。
「イマコウカンデキルモノ、イチラン? トキトバアイニヨッテカワル、タシカニ。コウカンデキルモノ、ハアクスル。トテモダイジ。ニンゲンカシコイ」
と、キウリさんは快諾してくれたので、結果は明日まで待つとして。
「ところで工一さん。ちょっと疑問だったんですけど、修理対象の建物にお店が入ってたのって何でですか?」
「あー、あれな……。リットが、早めに貨幣を使った社会構造を復活させておくべきだ、とか言ってな……」
「[実際必要な事だろう。まさかこのまま延々と物々交換で過ごし続けるつもりか?]」
「それを取りまとめて管理する人がいないじゃないですか」
「そもそも貨幣の絶対量が足りねぇだろとは言ったんだが……」
昨日の割と早い段階で気が付いた疑問を工一さんにぶつけてみたら、どうやら王子様がゴリ押したらしい。あのさぁ。そういうとこだぞ。なし崩し的に王子業をしようとするな。
確かに今のまま共同生活を続けるのは無理だとしても、まだ貨幣を扱う所までは到底届いてない。貨幣の絶対量が足りないのは当然として、人数もギリギリ村と呼べるかな? ってぐらいだからな? ほぼ限界集落レベルだぞ。
「必要なのは理解しますが、流石にまだ早いと思います」
「同じく。そもそも貨幣に対する信用がねぇだろ」
「[ぐ……]」
「……それとも白鋼とやらで通貨を作ってその辺を握ろうとしました?」
「お前ほんとそういうとこだぞ。止めとけ。すごい勢いで反発食らってあっという間に瓦解するのは目に見えてんだから」
「[ぐっ……]」
だからそういうとこだぞ。丸くはなったが反省はしてないな、この王子様。




