115.現実故の変化
王子様が模様を描く事だけに集中できるのであれば、それなりに数が作れる。円の中をくりぬくのも、綺麗にくりぬければいいらしいからな。そして模様というかやはり魔法陣だったそれの効果で、はめ込んだら勝手にくっつくらしい。
結果、午前中いっぱいを表皮の帯作りに使った所、32本の帯が出来た。王子様はここで帯を作り続けるらしいので、私は皮をカットしながら適宜「状態異常生晶(停止)」を持ってくる係になり、工一さんは出来上がった帯の一部をウィングバックパックで牧場へと届ける事になった。
そして探索組の人達がボロボロの剣の回収に出発した。触れるのならこっちのものだとなんか楽しそうだったが、まぁ、確かに、ちょっと心くすぐられるよな。明らかに特別な、けどボロボロの剣って。
「[まぁ真に困難なのは、修理する為の材料か触媒の調達なのだがな]」
ぼそっと王子様は呟いていたが、とりあえず今は数が回収できるならそれでいいかと思ったようだ。まぁそれはそう。正攻法で修理する場合、酷い量の資源が要求されたからな。
なお逆に、私が箱に入れてじわじわ直るのを待っている剣を資源に変換すると、すごい事になる。そう、資源の塊でもあるんだよ、あのボロボロの剣。だからこっそりかつ出来る限り回収してたんだが、箱を作る事を思いついた次の日にバレてしまったからな。
まぁこんな事を言ってはなんだが、襲撃イベントはここからコンスタントに発生する。そのたびにあのボロボロの剣は出現するのだから、焦らずに集めよう。集め方自体は確立してるんだし。
「そう言えばリットさん」
「[なんだ]」
「明日で丁度2ヵ月なんですよ」
「[…………、あぁ、だからクイチがわざわざ運搬係に名乗りを上げたのだな]」
ついでに王子様にも、具体的な言葉は使わずにお知らせしておく。他の人もいるからな。それで察して理解してくれたようなので、これで多分大丈夫だ。
一応私も聞いている。元々頭の良かった高師さん(奥さん)に、指揮官の適正があったって事を。だから戦略を考えて臨機応変に指示を出せる指揮官が、実質2人になったって事だ。
たぶん夕方にはジェレック君がこっちに戻ってきて、工一さんはそのまま牧場に残るんだろう。これで2つの拠点に、指揮官と、対ボスが出来るエースが1人ずつ揃う事になる。
「明日は群れの方は遠慮してくれませんかねぇ……」
「[俺様も「神の恵み」が欲しいから同意してやるが、無理だろう。それがモンスターというものだ]」
「うーん害悪。いやまぁ人を好んで襲うって時点で生存競争として殲滅しないとダメなんですけど」
「[その通りだな]」
しかしすごいな。王子様と雑談が成立しているぞ。戦力というか戦略寄りの、実利的な話に近いものではあるが。ゲームの時の事を考えると、もうほんと何と言うか、感無量に近いぞ。
こーの傲慢強欲王子様はさぁ! と何度叫んだ事か。もちろんあれはゲームであって、ある意味本物の王子様では無かったんだろうが。
……でも本物の王子様も「避難民」に混ざって来た時は酷かったからな。やっぱり現実になって、出来る事が増えたのは大きいって事だろう。実際に王子様がどういう心境になっていたのかは分からないが、丸くなってくれたのは間違いないし。
「……っていうか、大人のドラゴンって攻撃力もそうですけど防御力も必要ですよね? でも緋朱と同じ色だったって事は、物理で防ぐのは無理筋では?」
「[俺様の知っている魔法では、どれほど宝石があってもブレスを吐かれたら終わりだな。別の方法を考えた方が良いだろう]」
「キウリさんに、宇宙でも活動できる服とか探して貰いますかねぇ。確か宇宙って、火山の中ぐらいの灼熱と氷の中ぐらいの極寒があるらしいので」
「[ふむ。全く未知の技術だから、確認ぐらいはしておくか]」
まぁどちらにせよ、明日が大変なのは分かっているし、とりあえずそこを乗り切ってからだな。




