114.回収に必要なもの
ちょっとモンスターの方に話が逸れたが、王子様としては、このボロボロの剣を回収したいらしい。ただし、王子様しか安全に回収できないという問題は変わらない。私? 盛大に電気ショックを浴びて痛い思いをしたが?
「[修理の難易度は高いがそれはともかく。ヤヌシ。ダギアンの魔眼の内、動きを止めるものはどれだけある?]」
「結晶化済みの奴ならたくさんありますよ。目玉のままだとちょっと厳しいですけど」
「[加工するのは結晶化済みの物の方がやりやすいからそれで問題は無い。では、加工用の高温炉の作業スペースの近くに、リリーローズ・アルラウネの蔦と動きを止める魔眼の結晶を取り出せ。話の続きは移動してからだ]」
あの辺、何かいつの間にか王子様が自分用のスペースにしてたんだよな。いつの間にかっていうか、キウリさんにお願いした炉の設置を開始して、使えるようになる辺りまでで。いや確かに作業スペースは必要だろうけどさ。
畑も壁の間に移したし、まぁいいけど……と黙認していた訳だが、それはともかく。その近くにアルラウネの蔦木材とダギアンの動きを止める魔眼の結晶を取り出せとな。という事は、あればあるだけ良い感じか。
といってもスペース自体はそう大きい訳ではないし、近くには他の設備もある。だから何十本&何百個も取り出す事は出来ず、とりあえず3m幅に切られたのを1個と、魔眼の結晶こと「状態異常生晶(停止)」を50個ぐらい置いておいた。
「[あの剣だが、資格あるものだけが触れられるのではなく、触れられるのは資格があるものだけというのが正しい。一応は重要機密だから詳細は言わんが、まぁ錠があって鍵を必要とするようなものだ]」
それで十分だったのか、作業スペースに移動してきた王子様はそう説明しながら、まずアルラウネの蔦木材の表皮を剥いだ。そして長さ1mの6㎝幅にカットして、作業スペースに設置してある棚からたぶん特殊なインクとペンを取り出した。
そしてカットした表皮の内側にさらさらと魔法陣っぽいものを描いていく。真ん中に小さい円がある形の模様を描くと、次にナイフを取り出して、円の中の皮をくりぬいた。
「[鍵で錠を開けるのが正規の手順ではあるが、そういうものだと知っていれば、鍵無しでも錠を開ける手段は作れる。だから詳細は秘されている訳だが]」
で、それってつまりピッキング……となる説明を続けながら、今度は「状態異常生晶(停止)」を1つ手に取って、さくさくとカッティングを施し始めた。あ、もしかしてあれって宝石として扱えるのか? 確かに透き通ってない水晶みたいだなとは思ったけど。
蛇の目玉とはいえ、大の大人の拳ぐらいはあるからな、蛇の頭が。その目玉なので、直径1㎝ぐらいはあるだろうか。それを、四角い面がたくさん出来るように加工していく。何だっけあのカット。ころころして可愛いが。
そのカットを施された「状態異常生晶(停止)」を、表皮にくりぬいた部分に押し込む形ではめ込む。と、何故か接着剤でも使ったみたいにぴったりとくっついた。たぶんもう動かない。
「[まぁだが今は非常時だし、秘されながらも継承されてきたのはこういう時の為だ。という事で、これを柄の部分に、こういう風に巻けば回収できる]」
で、その帯みたいになった表皮を、「状態異常生晶(停止)」の部分が鏡の所に来るように斜めにかけて、鍔の所に巻いて、柄に巻いて、その先で結び合わせる王子様。へー、そうやればいいのか。
「とりあえず皮を切る作業は手伝いますよ」
「手の細かいやつなら石のカッティングも出来そうだな」
「[…………随分と乗り気だな]」
「え? だって元は宝剣って言われるぐらい性能が良いんですよね? 良い武器はいくらあっても足りないじゃないですか」
「あの2つの群れを倒しながら探索するのに時間がかかってんのは、こっちの攻撃力不足だって分かってんだろ」
「[まぁそれはそうだが]」
「うちの国は専守防衛を掲げてますけど、守る為には力が要るって流石に知ってますからね」
「それにお前は聞いてないかも知れないが、ツミキさんは緋朱の親っぽいやつがいるのを見てんだよ」
「[親というか大人のレッドドラゴンが近くに居るのか!? なるほど、たしかに精度の高い模倣とはいえ、宝剣ぐらいは必要だな……]」
さくっと手伝いを申し出ると、ちょっと首を傾げて訝しむ様子を見せた王子様。だが、残念ながらこっちは知ってるんだよ。その武器が必要になる相手がいるって事を。
そしてそれは工一さんも同じであり、水道と電気がまだ使えていた時の話を覚えてくれていたらしい。そしてその理由は、王子様も納得せざるを得なかったようだ。
大人ドラゴン=ラスボスはなー。その、本当に、ラスボスで納得って言うか……って感じだからなー。……ゲームの時は仲間がやられても拠点で復活してたが、現実になった今、そうはいかないんだし。




