112.剣の真贋
でもまぁ、とりあえずやれることはやってみようって事で、明日は王子様と、ついでに工一さんもボロボロの剣回収チャレンジに参加する事になった。何故か私も。どうして。……代表者だし不思議な力の源だから? ぐうの音も出ない。
という事で、あの電気ショックみたいなのを食らわなきゃいけないのかぁ、と思いながら就寝し、翌日。転移1ヵ月29日目。
「そういえばそろそろ2ヵ月ですね」
「何!? ……いやそうか、そういわれりゃそうだ。そんでここまでの事を考えると、牧場に戦力戻した方がいいか」
「壁を作れる道具がもっと見つかれば良かったんですけど、とりあえずそうするしかないと思います。1ヵ月の時と同じ事が、両方で同時に起こるなら、ですけど」
「起こると思っておいた方がいいだろうよ。それでなくても襲撃が来るのは確定してんだし」
一応朝のうちに、工一さんに明日は2ヵ月目だよ、と伝えておく。察しの良い工一さんはそこからやってほしかった想定を全部やってくれたので、とりあえずこれで大丈夫だろう。
なお、ゲーム時代は「襲撃イベント」が重なる事は普通にあった。何なら「避難民」イベントを含む住人系イベントも重なって、てんやわんやになる事もあった。なので明日は、エリア依存の襲撃と、1ヵ月の節目の襲撃があるのは、まぁほぼ確実だ。
熊が2体出現する事になるんだろうか? とも思ったが、それは明日の自分達が確認するだろうからさておいて。日が昇ると同時に襲撃が発生し、私は護衛されながらボロボロの剣の所へ移動したんだが。
「いっだぁ!?」
「ツミキさんでもダメか」
「工一さんもダメだったらしいぞ」
「とりあえず一旦撤収だ」
ま、そりゃそうなるというか。いつもの手袋で、あの謎の電気ショックを防げる訳がないんだよ。何のために「分厚い絶縁手袋」をしっかり着けてたと思うんだ。あれでもある程度の衝撃は感じるっていうのに。
なんてことは言えないので、ミラー加工のフルフェイスヘルメットの下でちょっと涙目になりながら撤退。なお、一回り大きなマルティヤは見事な不意打ちと連係プレーで意外とさくっと仕留められていた。すごいな最前線にいる人達は。
で、戻ってみたら工一さんは既に戻っていた。ちゃんと一回り大きいやつも仕留めて持って帰って来たらしい。すごいな。そしてもう解体に入っているらしい。すごいな。まぁ私が持って帰ってきた分も追加するんだが。
「……リットさんはまだなんですね?」
「上手くいったか、何かまだ粘ってるのかだな。ヤバそうなら気絶させてでも連れて帰る筈だが」
うーん流石一緒に行動してるだけあって、こう、扱いが雑というか、思い切りが良いというか……。
みたいな事を思っていたところに、王子様が戻って来た。こちらも同じく後ろについてきている人達が一回り大きなマルティヤをひきずっていて、王子様は片手に杖を持っていた訳だが。
「あれっリットさんは行けたんですか」
「……の割に鞘はねぇな」
「[微妙なところだな。どうやら少なくとも、本物では無さそうだ]」
逆の手に、ボロボロの剣を持っていたんだよな。引き抜けたのか。すごいな。そして王子様が持っているからか、あの謎の威圧的なものも出ていない。まぁ私はあれを知らない事になっているから、指摘はしないが。
そのまま王子様は一旦私と工一さんを連れて部屋に移動し、ボロボロの剣を机の上に置く。王子様が手を放しても威圧的なものは出ていない。私が「木刀用武器袋」から出したらめっちゃ圧かけてきたのに。これが正当な血筋の力ってやつか。
「[結論から言うと、これは何らかの手段で宝剣を模倣したものだ]」
「模倣したもの。コピーしたと」
「何らかの手段って事は、リットには分からない方法か」
「[そうだな。少なくとも魔法ではない事と、恐ろしく精度が高いという事しか分からん。もっとも完全でもないらしく、俺様の知っている本物とは極僅かに差異があったが]」
差異があった……と言われても、オリジナルを実物で知らない私達に、どこがどれだけ違うのかは分からない。まぁ今重要なのは、王子様が「これは偽物」と判断したって事なんだが。良かった、暴走しなくて。




