111.王子様の反応
という事で、工一さんと王子様を含む探索組……の半分が戻って来た。ジェレック君は牧場に残ったのか。まぁ他に指示を出せる人がいれば大丈夫ではあるが。
という事で、転移1ヵ月28日目。エリア依存である襲撃はやっぱり発生し、今日はこっちがダギアンで、私は今日はこっそり外に出ることなく黙々と地下倉庫で箱を開けつつ防衛戦をした訳だが。
「おいこれどういう状況だ」
「私に聞かないで下さいよ。リットさんの様子見てたの工一さんでしょう」
こそこそと限界まで声を小さくしてやり取りする視線の先には、晩ご飯を食べ終わってもその場で腕を組んで座ったまま動かない王子様がいる。もっともその周りからすっかり人がいなくなっている上に私と工一さんが呼ばれたって時点で分かる通り、その、こう、たぶん魔力由来の圧がすごい。
たぶん本人的にはそれどころじゃない動揺があってうっかり制御を忘れているだけなんだろうが、だけで済まないのが王子様なんだよな。
なお当たり前だが、事前情報なしであのボロボロの剣を持って帰れた人はいなかった。それはそう。そもそも、その前に陣取っている大きな個体を何とかしないといけないし。
「心当たりは……いやまぁあれしかねぇだろうがよ」
「牧場の方でも見つかったって話でしたもんねぇ……」
まぁ持って帰れた人はいなくても、確認は全ての場所、こっち4ヵ所、牧場4ヵ所で出来ている。つまりあの国宝の剣がボロボロ状態で、8本ある、っていうのは、王子様も把握している情報だ。
……もっとも、頑張って観察を続けた人の報告で、夕方になってボロボロの剣が折れて消えたら、追加が来なくなったっていうのもあるから、それで余計にその、動揺あるいは混乱しているんだろう。それはそう。
うちの国で言う所の「草薙剣」だと思えば分かりやすいだろうか。だって国宝の剣ってそういう事だ。それとそっくりの剣が8本もあって、害獣に利用されているっぽくて、しかも折れて消えてしまったってなると……まぁ、動揺ぐらいはするだろう。それは本当にそう。
「あれ何か余程特別なもんだったのかねぇ……?」
「まぁ、減った気がしない群れの出現理由と、たぶん転移理由があれでしょうから、ばっちり特別ではあるでしょうけど」
「そらそうだな。問題はリットのあれが、分かっているからか、分からなかったからかだが」
「[聞こえているぞお前ら]」
……工一さんともども、ちょっと飛び上がってしまったのは仕方ないと思いたい。
まぁでもここまでのあれこれで好感度もしくは信用度が一定に達していたとかそんな感じなのか、深々とため息を吐いた王子様は私と工一さんを連れて、自分の部屋に移動した。なるほど他の人には聞かせられない話か。
で、実際そこで、あの剣は王子様の国の国宝である可能性が高い、という話自体は聞く事が出来たんだが。
「[念を押しておくと、俺様の国の宝剣は、1振りだけだ]」
「あ、はい」
「つまり偽物か?」
「[そう断じる事が出来ればここまで悩んではいない。資格ある者以外は手に出来ず、転移の能力を扱えるようになる剣など、他にあってたまるか。だが、実際に8振りの剣が確認されているし、今回壊れたという事は、前回以前の襲撃の際にも8振り存在し、消えている可能性が高い]」
「うん、訳が分かりません」
「せめて回収できりゃなぁ……その資格っていうのが血筋なら、リットなら行けそうなもんだが」
「[……、分からんな。俺様は国を追放されている。普通に考えれば追放者に資格は無い筈だが]」
「でも本物かどうか怪しいんですよね? といっても、話聞いた限り、鞘とかは無さそうですけど」
「[真実宝剣なら、資格ある者が手にすれば、どこからともなく鞘が現れる筈だ]」
そうだったのか。知らなかった。
だってゲームの時の表示は抜身のままだったし、ゲームキャラはそのままの武器を持ってあちこち移動していたし。現実だったら危なすぎるんだが、ゲームだしな。




