110.変化への反応
『[何? 指揮を執るような行動を取る、一回り大きな個体だと?]』
「えぇ。そちらも代表の高師さんに聞いた限り、蛇の数が多いダギアンが出たとの事ですが。倒せば周囲の個体が混乱したとも」
『……なるほど、それは確かに、指揮してた、ってのが一番しっくりくるな』
夜の情報共有の時にそういう話を出すと、どうやら私の予想通り、王子様と工一さんが率いるトップ戦力もとい初代探索組は、今日まさに一回り大きいダギアンとマルティヤを、2手に分かれて仕留めて来たんだそうだ。
なお仕留める事自体は午前中に終わり、午後は群れが混乱しているのに乗じて、結構広い範囲を調べて来たとの事。まぁそりゃ現実になったのならそれが一番効率良いのはそうだが。
現実となった今の状態で、ゲームの法則通りに出現する2種類のモンスター。たぶん王子様的にはかなり違和感があるんだろう。それはそうだな。何で戦った奴と同じ大きさの奴が、縄張り争いをしている場所では精々数体なのに、襲撃してくる側には無数にいて、しかも戦った日から混ざって来るのか、って話だし。
『[……。探索班全体に指示を出す。明日は探索ではなく防衛だ]』
『何? いやいいがよ』
『[ぞんびだったか? あれの襲撃の時も特異な個体が発生していただろう。その手の異常が起こっている可能性がある。調べたところで防げないものである可能性はあるが、確認だけはしておいた方が良い]』
『なるほどそらそうだな。新しい人が来たってんなら、顔合わせもしといた方がいいだろうし』
そして出てきた結論が、そういうものだった。マジか。
「となると、リットさんと工一さんはこっちに戻って来るんですか?」
『そうなるなぁ。全体の様子を見て人の入れ替えもした方がいいだろうし、行き来できるってのは見せておいた方がいいだろう』
「それはそうですね」
まぁ表向きは特に反対する理由が無いから受け入れるしかないんだが、そうくるかぁ……大丈夫かなぁ、王子様。あのボロボロの剣を見て暴走しない? 主に何が何でも国に帰る方向で。
だってあのボロボロの剣、王子様の国の国宝だからな。一応。オリジナルは。ちょっと尋常じゃない数があるというかほぼ無限湧きだけど。そしてその中にオリジナルが入っている可能性はとても低いんだけど。
王子様の方法、魔法っていう技術を使った鍛冶で修理する為には、ちょっと必要な素材が足りないしな。種類的な意味でも量的な意味でも。その素材を探す為に地下倉庫に突入する、って可能性までありそうなのがなぁ……。
『[では、俺様たちは今から移動だ。急ぐぞ]』
『おう』
「2人の部屋は確保してありますし、掃除もしてるので安心して下さい」
という事で情報共有兼報告会は終わった。なお、掃除をしているのは本当である。だからいつ帰って来ても大丈夫だし、新しく来た人が勝手に使ってるって事も無い。ちゃんと扉に鍵はかけてあるからな。
……それはそれとして、地下倉庫の扉を閉めておくべきだろうか。とはだいぶ思った。倉庫の入口がどこにあるかは既に分かっているんだから、王子様ならレバーぐらいすぐ見つけるだろうし、なんならジェレック君に仕掛け扉を壊させる可能性まであるから、流石にやらないが。
あぁ、でも、地下倉庫に山積みにしてある、ボロボロの剣が入った箱は私の部屋に移動させておこう。ちょっと部屋が狭くなるが、仕方ないな。
「(いや、箱の材料も動かしておいた方がいいな。……箱を作ったって分かる木材の残りと蔦木材の表皮もか)」
自分がいる部屋には不思議な力で物を動かせないのが不便だが、仕方ない。グルスニールかフライングボードで移動すればそんなにかからないのは分かってるんだ。急いで移動させておかないと、王子様の反応が分からない以上は怖い。
……暴走しないといいんだけどなぁ、王子様。たぶん、流石にジェレック君は直接見ればその正体が分かるだろうし。その報告を受けたら、王子様も正体に気付くだろうし……。
……同時に4本出現するんだから、その時点で、何かおかしいな? になって、止まってくれると助かるんだけどなぁ。止まった所で言いくるめられる材料は無いから、王子様の自己完結内容次第なんだが。




