109.襲撃の変化
さて、工一さんが見回りをしていないからか私が遭遇した「避難民」を無事保護した翌日、転移1ヵ月27日目。
「おっと……」
今日の襲撃はマルティヤだったし、とりあえず朝の迎撃当番で確認した感じ、これといって変化は無かった訳だが。地下倉庫に行く様子を見せてから「パーフェクト・ステルスマント」と「フライングボード」の合わせ技で、ボロボロの剣を回収しにいったんだ。
そうしたら、ボロボロの剣を守っているマルティヤが、明らかに一回り大きくなってたんだよな。たぶん中ボスの1段階上の奴。まぁ私にとっては何にも変わらないんだが。完璧なステルスからの不意打ち致命傷だからな。生物であり、生物としての構造は変わらないし。
ただこいつがここにいるって事は、恐らく王子様と工一さん達は、無事中ボスを倒したか、少なくとも遭遇はしたのだろう。でも昨日時点で討伐したって報告は無かったから、たぶん今日戦闘に入ったんだな。
「王子様の事だから、両方の群れを同時に減らさないと、バランスが崩れるとか、そういう事を言ったかな……?」
たぶんそういう事だと思う。そして、それが出来れば一番良いのは確かだ。ゲームでは主人公しか戦えなかったから不可能だったが、今は現実で、私はそもそもエリアに踏み込んですらいないし。
ボロボロの剣の回収には影響しないんだが、襲撃の方には影響する。何故なら、昨日までここにいてボロボロの剣を守っていた大きさの奴が、普通に襲撃に混ざるって事だからだ。
となると、と5分で1周して一旦地下倉庫で待機しておく。何しろ私が事実上ではなく、戦略・戦力的トップだからな。何か違う事が起こったら、私が探されるだろうと思って。
「はいもしもし」
『ツミキさん! 何か一回り大きいやつが来ました! それでその、周りの奴が避けるようになって、壁を登り始めて!』
「なるほど壁を。では真上から攻撃して下さい。頭に当たれば大丈夫です。外しても大丈夫なように、1体につき3人ぐらいでかかると良いでしょう。今から様子も見に行きます」
『わ、分かりました! お願いします!』
で、実際電話がかかって来たので、さっさと地上に戻って防壁に登る。当番じゃないが仕方ない。今スケジュール組み直してる所だろうし。
外側の壁の上から迎撃していたんだが、腰が引けてるな。そして確かに避けるようになっているが、たぶん指示を出しているんだろう。で、緋朱が居るのに倒せてないって事は、恐らく木が残っている場所にいるだろうから。
「たぶんあれだ」
「えっ、わっ!?」
ざっと周囲を見て、一回り大きいやつに狙いをつけて素早くバズーカを発射する。使ったのは電気手榴弾に近いタイプのやつなので、少々外しても問題無いし、見つけるのとほぼ同時に撃ったから、避ける暇も無かった筈だ。
突然の攻撃行動に、私の隣にいた人が驚いているが、さらに驚く事になっただろう。何しろさっきまで攻撃を避けて壁に取り付いていたマルティヤの群れが、混乱したようにその場で固まったり周りを見回したりし始めたんだから。
「指揮官となる一回り大きい個体がいたようですね。それを仕留めれば混乱して動きも元に戻るようです。探索が出来る人達に、動きが変わったら一回り大きいやつを探すように伝えてください」
「は、はい! あの、ツミキさんは?」
「とりあえずぐるっと一周して来ます。他の場所にもいるでしょうし」
「分かりました!」
そして実際指揮官となる中ボスサイズの奴がいたので、4方向の全てで仕留めておく。とりあえずこれで良し。
まぁあれも、ある程度インターバルがあるとはいえ無限に出てくる類だから、警戒は必要なんだけどな。……新しく探索組になった人達だけで警戒を回せないだろうか。無理かな。
そうだ一応牧場にも伝えておかないとダメか。ダメだな。あっちにも似たようなやつが出現してる可能性はあるし、今日のあっちはダギアンなんだから、魔眼の集中砲火とかをしてくるようになるし、一般人的な危険度は高いんだ。




