108.襲撃の中の
と、方針を決めて眠って、起きた翌日。転移1ヵ月26日目。
「あれ? その剣ケースってそのまま修復用の魔道具になるんじゃない?」
っていう事に気が付いた。そうだな? だってアルラウネの蔦木材を使った保管の為のものではあるんだから。きっちり入るように、厳密に大きさを合わせて、曲線を含む形を厚みを気にしながら削り出して、ぴったり合うように調節する、っていう必要は、無いな?
そして中敷きとして使うだけなら、恐らく中ボス素材でも大丈夫だ。メインになるのはアルラウネの蔦木材だからな。だってケースのメインは蔦木材なんだから。
そうだな、いけるな? そして箱なら事前に作っておく事が出来るな? 重ねられるようにすればいいんだから、地下倉庫に保管しておく事も出来るし、ついでに言えば箱ぐらいの単純なものなら設備で作れるな?
「そうだな? 修復の魔道具にする作業は必要だけど、それだけなら1振りもしくは1箱半時間もかからずに出来るし」
いや、この1箱半時間弱っていうのはゲーム補正が入る前のあれだから、もうちょっと早いか? でもまぁ半時間なら、たぶん回収できる数は増やせるな?
そもそもそういう箱に入れておくなら「木刀用武器袋」に入れたままでもいいんだし、「木刀用武器袋」はかなりの数があるし、何なら武器の形が変わって使えなくなってしまっても別に良い。他の使い道が無いやつだから。
これいけるわ。と思ったので、さっそくアルラウネの蔦木材をそこそこまとまった量木材にする。お、ちゃんと表皮が別で出てきたな。助かる。これも良い素材なんだ。
「さてこの木材を使っていい感じの箱を……そうか柄の分があるから刀身より長くしないといけないんだな。板自体の長さは、まぁ元の蔦が大体3mぐらいで切られてるから3mで……」
ここで改めてここまで鞘を作る為に測ったボロボロの剣の数字を確認。……刀身だけで大体40~60㎝か。なら1mあればたぶん大丈夫だな。柄だけで40㎝は無かった筈だ。
地下倉庫で幅と長さを合わせて板を切っていく。板はものによって幅が違うので、端数が出ないように数字には気を使った。まぁ、剣は入るから大丈夫だろう。
中ボスの毛皮をなめしたやつは流石に端切れが出てしまったが、仕方ないな。端切れはまぁ、それこそ地道に縫い合わせて何かの袋にでもするか。という事で、その日は防衛戦への参加以外は箱作りで終わった。結構数が出来たな。
「……そうか一週間か」
なんでそんな事を呟いたかって言ったら、夕方になって群れが撤退した後で、グルスニール特急でメロ高牧場に物資を届けに行った帰り道。同じくグルスニールを飛ばしていたのに、聞こえたんだよ。「助けて」って声が。
私だってちゃんと武装はしている。だから恐らくイベント仕様だろうダギアン3体に襲われていた人の集団を助けるのは、間に合った。まぁもっとも、22人いたらしいその集団は、かなり限界だったようだが。
ちょっとこれは私1人では無理だ、と判断してスマホで連絡を入れると、新しく探索組になった人達が色々準備した状態で来てくれたので、無事に連れて帰る事が出来た。
「あの、あの、て、手が、石に……」
「大丈夫です。対応する薬はありますから」
「ぞん、ゾンビみたいなのにかま、噛まれたんだが……お、おれ、俺は、死ぬ、のか……?」
「適切に対処すれば死にません。大丈夫です」
なおゾンビに噛まれた場合の対処法とは、噛まれた部分を確認し、場合によっては皮膚を切って、そこにある最初の根っこを抜き取る事だ。植物だからな、一応。糸みたいに細いが蛍光グリーンだし、ブラックライトを当てるとほんのり光るので、対処自体は容易である。知っていれば。
まぁ噛まれてから完全にゾンビ化するまでは、おおよそ5日から1週間かかる。根っこがある程度育つまで潜伏するんだ。もっともそれを過ぎてしまった場合、人間を丸ごと食べ尽くす事が出来る状態になったって事なので、その部分を切り落とさないと助からないが。
今回の人は昨日の夜に噛まれたらしいので、まだ十分に間に合う状態だった。なのでうちにいる人達は慣れた様子でテキパキ対処している。
「……、天国?」
「現実ですよ。訳の分からないまま何とか生存する努力を続けた結果、人が集まって集団になってるだけです」
私が発見者だったから、そのまま対処に参加するのはいいんだが、やっぱ大変だなこれ。
まぁ特に変わった人=特徴のあるキャラクターはいなかったようだから、平和な「避難民」ではあるんだが。




