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追放聖女はもふもふ達と恋をする?  作者: 街のぶーらんじぇりー


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すっきり

 それから三日後。私たちは再び前線に戻っていた。


 なんだかんだあったけれど、サーベルタイガーの里に行って、よかった。何だか胸につかえていたものが、すっきりと取れた感じがする。


「ふむ、いい旅をしてきたようだな、聖女よ」


 私の表情が変わったのを見てとられてしまったのか、テオドール様にも、優しく微笑まれてしまった。人間男性の感覚から言えば、前の男の実家を訪ねる女とか、うざいと思われそうだけど、そうじゃないのかしら。


「うん? 俺は、そう言うところも含めて、聖女を好きなのだがな」


 あまりにストレートな好意の表現に、思わず胸を射抜かれてしまう。つくづく私は、直球勝負の男性に弱いらしい。カミルが早く帰ってこないと、陥落してしまいそうだよ。


「いや、あ、あの……私がいない間、テオドール様も、ずいぶん活躍したみたいで……」


 聖女を守るために来ているのだから、危ないことはしないって言ってたくせに、私がこっそりサーベルタイガーの里に行っている間、彼は自ら率いる僅か五十騎とともに、ずいぶん暴れ回ったらしい。帰ってくるなりバイエルン兵たちがみんな彼を激賞しているのを聞いて、思わずあきれた。


「おっ、俺のカッコいいところを見せたかったが、ちゃんと耳に入ったか! いくらでも褒めていいぞ、何しろ俺は、聖女に惚れてもらいたいがために、勇戦しているのだからな!」


 はあ。ここまで行くと一途さを通り越して、バカっぽく見えてしまう。そんな失礼な感想を抱きつつ、素直に褒めてあげることにする。


「ええ、強い男性は、素敵に思いますよ。でも、お生命を大事にすることが、一番ですからね?」


 そう言ってテオドール様の茶色した髪に触るふりをして、不意打ちで軽くハグしてあげる。彼がびくっとするのが面白くて、一回ぎゅうっとたくましいお腹に腕を回して、あとはパッと離れる。だって、油断しているとがしっと捕まえられて、離してもらえなくなりそうだったのだもの。


「くっ、聖女のくせに、まるで小さな悪魔だな……」


 タッチの差で私を捕まえ損ねた両腕を所在無げにわきわきさせて悔しがっている彼は、何だか年上なのに可愛い。


「うふっ。それにしても……ずいぶん新しい味方が増えた気がしますね」


 身の危険を避けるために、わざと話をそらしたのだけど、周囲の軍勢がここ数日で変質しているのが、帰ってからずっと気になっていたのだ。それまではバイエルン軍とベルフォール辺境伯軍、そして王党派の、どっちかというとお堅い貴族たちの義勇軍がそれぞれ、三万、二万、一万くらいだった。


 それが今ではロワールの貴族軍が三万を超えているという。そして私の見るところ、その中には決してアルフォンス様への忠誠が篤いとは思われぬ貴族……もっと言えば西教会の中枢と親しい者たちも、かなり含まれている。


「そう、本当に味方であれば、良いのだがな」


 色ボケをかましてくれていたテオドール様も、新顔の貴族たちには疑いを抱いていたのだろう、ここは真顔だ。


「もはや、アルフォンス連合軍の勝利は時間の問題だろう、ここ数日押しかけてきた連中は、風を望んで集まってきたのだと思いたいが……さすがにこれだけ多いと、中に不逞な企みを抱いた奴がいないかどうかまで、見分けられぬ。ここ数日聖女が前線を離れていたことは、むしろ安心だったのだ」


「やはり、テオドール様も懸念を抱いておられましたか……貴女たちはどう思う?」


 振り向いた先には、隠密部隊のアルマさんがひざまずいている。正直なところ私は人の悪意に鈍感なほうだ、専門家にお任せするしかない。


「明らかに西教会に通じている貴族が、トロア子爵とビエルゾン男爵の二名。すでにベルフォール軍に伝え、監視をつけております。後の貴族はまだ尻尾をつかめておりませんが……必ず悪意ある者がいるはずです。できればロッテ様には、新顔の前に出て頂きたくないのが本音です」


 さすがだ、もうネズミを二匹も見つけ出してるじゃないか。そんなに優秀な我が隠密たちでも、この短期間で怪しい貴族を全部あぶりだすのは難しかったということかな。


 アルマさんの言う通り、新顔貴族と会わないってのが一番安全だけど、残念ながらそういう新参の人たちはいい人も悪い人も必ず「名高き聖女にお目通り致したい」って言うんだよね。こればっかりは「看板」としてリクルートされた私としては、避けて通れないお仕事なんだよ。


「そっか。まだ、怪しい人がいっぱいなのね。だけど、その人たちと会うのも、私の務めなの」


「ロッテ様……」


 切なげに目尻を下げるアルマさん。だけど、頼れる味方が、私にもいるんだよ。


「大丈夫だ、俺がついていてやる。必ず聖女のことを守るぞ。カミルに誓ったからな」

「私も、生命にかけてロッテお姉さんを守ります、クララお姉さんと約束しましたから」


 テオドール様の綺麗なテノールと、鈴を転がすようなビアンカの言葉が重なる。私の手を包み込んだビアンカの両掌は、とっても熱かった。



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