第98話 銀河警察の介入
『どうだ?』
『……大丈夫みたいです、我々が乗っていた船と操縦系統は変わらないようですね』
『そうか、よかったぜ。
こいつらが、抵抗してくるから焦ったが、たいしたことなかったな、なぁ!』
そこへ、誰かが歩く音とともに、男が返事をする。
『ああ……』
そして、何かをスライドした音とともに、おそらく薬きょうが落ちた音が聞こえた。
それから、誰かが自動ドアを開けて入ってくる。
しかも、その足音と話声から、複数ということが分かった。
『トベス、他の連中はどうしたんだ?』
『ロクボットを集めて、持って帰る準備をしている』
『ロクボットは、使えるのか?』
『バラして、研究させれば人手不足解消になるだろ?』
『だが、出来ねぇんだろ?』
『ロクボットと、やろうとするなよ、気持ち悪い……』
そこに慌てた様子で、入ってくる男。
そして、中の人達に叫ぶ。
『おい!下で抵抗してるやつらが手強いぞ!
応援に来いってよ!』
『チッ、仕方ねぇな……』
そこ場にいたであろう人たちが、愚痴をこぼしながらいなくなる。
そして、何かを弄る音だけがずっとしていた……。
▽ ▽
『これが、傍受できた音、ですか?』
「はい、そうです。
これを聞くかぎり、どうやら宇宙海賊は……」
『現地人に、宇宙戦艦を乗っ取られた、と見るできでしょうね』
今、俺はモニター越しに銀河警察の派遣されてきた人たちの代表と通信中だ。
実は、銀河警察がワープアウトしてくる前に、どうしても宇宙海賊のことが気になっていたので何が起こっているのか分からないか?とオリビアに相談したところ、宇宙海賊の宇宙船艦内で飛び交っている音を拾えるかもしれないと言ってきた。
そこで、オリビアに頼んで音声を傍受することに成功。
それが、今まで聞いていた内容だ。
『しかし、ロクボットとは何だろうか?』
「おそらく、アンドロイドの事ではないでしょうか?
バラす、とか、人手不足解消、とかありましたから……」
『となると、アンドロイドたちを連れ去られる前にこちらで動きます』
「よろしくお願いします」
そして、銀河警察との通信が切れ、ブリッジから宇宙船二隻が移動していくのが確認できた。
あれが、銀河警察の宇宙船だろう。
「それにしても、宇宙海賊が、現地の人に返り討ちとはね……」
俺は、艦長席に座りながら呟く。
すると、それを聞いたカレンが、不可能ではないと答えてくれた。
『マスター、宇宙海賊は戦闘に対しては素人とさほど変わりません。
ただ、場数が多いだけなのです』
「……それって、戦闘慣れしているってこと?」
『そうです。
ですが、戦闘技術はマスターとそう変わりません。
だから、科学文明の劣る現地人でも、戦闘技術が宇宙海賊たちよりも上なら勝つことは不可能ではないのです』
「カレン、その言い方だと戦闘技術が勝っていても、負ける可能性があるって言っているように聞こえるけど?」
『その通りですよ、マスター。
たとえ戦闘技術が負けていても、科学文明が勝ったそれ相応の武器があれば……』
「宇宙海賊側が、勝っていたかもしれないと……」
『はい』
てことは、今回宇宙海賊が現地人に倒されたのは、現地人が戦闘技術のある軍人、あるいはプロということか……。
いや、もしかしたら特殊戦闘員ということも……。
……まあ、誰でもいいか。
とにかく、宇宙海賊は壊滅。それに伴い、宇宙海賊が持っていた科学技術が持ち去られようとしていたところへ銀河警察の登場。
今度の相手は戦闘においても、科学文明においても相手を上回っていると思われるため、捕まって事情聴取。
その後、惑星『メータム』にある所属組織の人達も捕まって終わり、かな。
うまくいけばの話だけど。
「オリビア、宇宙海賊の船内の傍受はまだ出来る?」
『ええ、出来ますわよ、マスター』
「銀河警察が向かったみたいなんだけど、どんな様子?」
『………騒いでいますわね、銃が効かないとか、訓練された連中だとか……。
後は、たくさんの人が走り回っている音が聞こえるだけですわ……』
「そうか、ありがとうオリビア」
『いえ、それで、いつまで傍受をしますの?』
「ああ、もうしなくていいよ。
どうやら、銀河警察が動いてくれたようだから……」
「そう、分かりましたわ」
「あ、銀河警察が動いたこととかエミリーさんに知らせてくれる?
多分、気になっていると思うから」
『分かりましたわ。今までのやり取りを添えて連絡しておきますわ』
さて、これで幕切れだけど、なんだか呆気ない終わりだったな。
最後は、銀河警察に任せる形になるけど、これはしょうがないよな。
俺は運搬屋で、正義の味方でも銀河警察でもないんだし……。
『マスター、夕食の時間になりました』
「え、もうそんな時間?」
俺は腕時計を確認すると、午後七時。
宇宙船『イグレイン』では、完全に夕食の時間だ。
一連の宇宙海賊騒動で、かなりの時間が経過していたようだ。
「今日の料理当番は?」
『ヘレンです、マスター。
『カルボナーラ』に挑戦してみると言っていましたから、夕食はそれでしょう』
カルボナーラか、俺の大好物の一つだ。
カレンとヘレンは、特に日本の料理を学んでいるよな……。
「それじゃあ、食べに行くか」
『はい、マスター』
俺とカレンは立ち上がり、ブリッジを出て居住区へ歩いて行く。
その時、オリビアとエヴァ、それにマリアもブリッジから出てきた。
今日は、食べて寝て、明日エミリーさんに今後のことを相談するか。
運搬屋としての仕事は終わっているし、次の仕事へ行くことになるだろうけど……。
▽ ▽
銀河警察が動き出してから二日後、惑星『メータム』にある国の一角にある施設で、集団失踪事件が発生する。
その建物にいた、約四千人の職員たちが一夜にして消えたのだ。
オカルトじみたこの話題は、世界中の話題をさらい、連日失踪に関するニュースが流され続けたが、消えた人たちは見つからなかった。
そして、いつしかこの失踪事件は、他のニュースの中に埋もれていく……。
「って、感じだろうね」
『まさか、その失踪者四千人が宇宙にいるとは考えませんよ』
「銀河警察も、思いっきった行動に出たよね……」
『ええ、まさか関係者全員を宇宙にあげるとは……』
そう、銀河警察は宇宙海賊の船にいた連中を締め上げると、連中の乗ってきた宇宙船を没収して、組織のことをはかせた。
そして、その組織に関係する人たちを、全員宇宙へ転送後、事情聴取。
この宇宙海賊関連の事件の捜査を始めたらしい。
らしいというのは、俺は別の仕事のためこの宙域を離脱し別の宙域へ出たためだ。
事件の捜査状況などは、分かり次第エミリーさんが知らせてくれるらしい。
あと、惑星『メータム』でのチャゼフ君の件は、失踪事件で鎮静化したみたいだ。
今だ、映像は残っているが、前ほど騒がれなくなったそうで、あと二、三年すれば、チャゼフ君のこと、忘れられているかも……。
まあ、それはそれで悲しいみたいだけどね……。




