第97話 接触
俺たちが、宇宙船『ホールド』のブリッジへたどり着いた時、警報が鳴り響いた。
――――ビーッ、ビーッ、警告!警告!
「な、何、いきなり……」
「警報、のようですね……」
『……』
ブリッジの入り口付近で、辺りをキョロキョロ見渡している俺たちに、近くにいた乗組員の女性が声をかけてくれる。
「エミリーさん!現れました!
連絡のあった、宇宙海賊の宇宙戦艦です!」
「どこに現れたの?!」
「惑星『メータム』の衛星軌道上に、直接現れました!」
その報告に驚き、オペレーター席に急いで近づくエミリーさんとカレン。
モニターから、映像を確認するようだ。
しかし、俺には、あんまりよく分からなかったが、頭をフル回転させて考える。
おそらく一歩間違えば、長距離ワープから通常空間に、出てきた勢いのまま惑星に突っ込みかねない、危険なワープアウトだったということかな?
「でもなぜ、そんな場所にワープアウトを?」
「分かりません。
ですが、こちらを認識した可能性は低いと思われます」
「連中が現れてから、『シールド』を張ってさらにカモフラージュで姿を隠したわけね」
「そうです」
エミリーさんと女性乗組員との会話が続く。
それにしても、この大型宇宙船には、そんな機能まであるのか……。
とりあえず、今は宇宙海賊がどう行動するのか観察か……。
「加藤さん、とりあえず紹介しておくわね。
私の後ろにいるのが、この宇宙船の艦長ラリーよ。
ラリー艦長、こちらが物資を運んでくれた宇宙船の艦長で、私が研修を担当した加藤さんよ。
物資搬入の確認をしたら、運搬書類にサインしてあげて」
いつの間にか、エミリーさんの後ろに背の高い女性が屈みこんで一緒にモニターを見ていた。
銀髪の髪を後ろに流している美人が、こちらに視線だけを向けた。
顔はまだ、モニターに向けられている。
「初めまして、といいたいところだけど、サインは後でいい?
今は、モニターに映る宇宙海賊の方が気になるの」
「あ、はい、それは構いません……」
「悪いわね」
そう言うと、視線もモニターへ移った。
宇宙海賊が、どう行動をするのかで俺たちの対処の仕方が変わってくるということかな?
そして、しばらくモニターに映る宇宙海賊に注目していると、十分ほどで、別の宇宙戦艦が現れた。
それも、惑星『メータム』から上がってきたように見えた……。
「あがって、来た……?」
「まさか!」
エミリーの呟きに、ラリー艦長が反応した。
惑星『メータム』の、今の世界科学力を知っているのだろうか?
「惑星『メータム』は、そんなに進んだ星じゃない。
宇宙技術は、他の初期段階の惑星と同じだったぞ?」
『なら、宇宙海賊が、関係しているのかもしれません……』
そこに俺の後ろから、モニターを見ていたカレンが参加する。
でも、宇宙海賊が関係する?
「カレン、もしかしてすでに?」
『おそらく、惑星『メータム』のどこかの国、あるいは組織が繋がっているかと……』
「……そうなると、私たちは『メータム』から完全に引き上げなければならないわね」
そう、宇宙海賊が惑星『メータム』の一勢力と接触しているとなると、これはすでに銀河警察の管轄となる。
銀河警察が捜査し、最終的には関係者全員を捕まえなくてはならない。
でも、惑星『メータム』で、チャゼフ君がやらかした件で人々は今だ、宇宙人とかを本気で信じていないようだ。
「でも、まだ大丈夫でしょう。チャゼフ君の件があったんですから」
「……そうだ、チャゼフ君のやらかした件があった!」
エミリーさんは、気が付いたようだ。
まだ、惑星『メータム』で宇宙人が認知されてない事に……。
認知されてないなら、その一勢力と宇宙海賊だけをつぶせば、惑星『メータム』は元に戻る。
そのことを、もう少し丁寧に説明するエミリーさん。
「それで、私たちにできることってあるの?」
『たぶん、ありません』
「ないの?」
『はい、ありません。
ここから先は、銀河警察に任せるべきです。
私たちには、何かできる知識がありませんから……』
ラリー艦長の質問に、カレンが答える。
ラリー艦長とのやり取りで、カレンも何もできないことが悔しそうなのが分かった。
「とりあえず、今は監視を続けましょう。
後から、銀河警察が来るはずだよね?」
『はい、マスター。ナンシー様が呼んでいるはずです』
そのカレンの答えに、俺とエミリーさんとラリー艦長は、お互いを見て頷く。
そして、再びモニターに視線を映した。
▽ ▽
惑星『メータム』の衛星軌道上で、宇宙海賊の宇宙戦艦と、惑星『メータム』から上がってきた宇宙船が接触して五時間が経とうとしている。
『……動きませんね』
「そうか……。
接触しただけで、その後何にも動きがないなんてな……」
監視開始から十分で、ラリー艦長が飽きてしまい、俺の物資運搬完了書にサインをしてくれた。
それからは、自分の席に戻りお昼寝中。
オペレーターの女性も、アンドロイドに変わり休憩に入って二時間が経つ。
今も戻ってきていない……。
エミリーさんは、真面目なのか、一時間ごとに十分の休憩を入れて、今も監視を続けている。
俺とカレンは、運搬完了のサインをもらうと、自分の宇宙船から監視をすると言って、ブリッジを出て言っていた。
だから、今俺は自分の宇宙船『イグレイン』のブリッジにいる。
「もしかして、何かあったのか?」
『といいますと?』
「例えば、さらなる技術提供で、揉めたとか?」
『宇宙海賊の技術提供には、何か目的があるはずです。
ある程度は、技術提供するでしょうが、自分たちを脅かすような提供はしないはず。
ならば、どちらの立場が上か分かっていれば……』
「相手も無理な要求はしないか……」
『はい。それに、もし宇宙海賊たちの機嫌をそこなえば……』
「……殺されるか」
となると、こんなに時間がかかることが分からないな。
それに、もうすぐ銀河警察の団体さんが到着する予定だ……。
「カレン、銀河警察がいつ頃到着するか分かるか?」
『一時間ほど前に、ナンシー様からメッセージで銀河警察の到着時刻を知らせてくれていました』
「って、それなら、早く教えてくれよ……」
『すみません、宇宙海賊たちがいつ動くか分からなかったもので……』
「それで、銀河警察はいつ到着するって?」
『今から、五分後です』
「……ワープアウトする場所は?」
『私たちが、ワープアウトした場所になる予定です』
となると、すぐに見つかるということはないわけか。
エミリーさんにも、知らせておこう……。




