第93話 新しい仲間
惑星『ネスビーナス』が目の前に見えている。
青い綺麗な星ではあるが、その衛星軌道上を月のような大きさの衛星が存在していた。
違和感がすごいな……。
まるで、惑星にコブが出来ているかのようだ。
「カレン、あれが惑星『ネスビーナス』で間違いない?」
『はい、間違いありません。
あの衛星軌道上の星は、月型宇宙ステーションです、マスター』
「月型宇宙ステーション?」
『はい、別名惑星要塞です。
本来、あの惑星要塞が存在するのは、惑星間の中継地点のはずなのですが、あのような使い方は初めて見ました』
惑星要塞とは、すごいものが存在しているんだな。
……いや、確か『赤の艦隊』の中継基地があんな惑星要塞だったな。
大きさが、全く違うけど……。
「赤の艦隊の中継基地の方が大きいか……」
『確か、『赤の艦隊』の中継基地も惑星要塞でしたね。
本来は、あの使い方が正しい使い方ですよ』
惑星『ネスビーナス』の感想を、カレンと言い合っていると、俺たちの宇宙船『イグレイン』に近づいてくる宇宙戦艦があった。
『マスター、目の前の宇宙戦艦より、通信が入っていますわ』
「分かった、オリビア。
メインモニターに回してくれ」
『分かりましたわ』
メインモニターに映し出されたのは、一人の女性だ。
金色の髪をポニーテールにした、凛々しい美人が敬礼している。
『初めまして、惑星『ネスビーナス』の警護、案内役をしていますオービスと申します。ここへ来た目的をお願いします』
「初めまして、宇宙運搬会社『ショルフダール』の加藤と申します。
ナンシー班長より、アンドロイドの受け渡しのためにここへ来ました」
俺の挨拶と説明を聞いて、モニターに映るオービスさんが、タブレットを取り出し何かを確認している様子。
そして、すぐに目的のものを見つけたようだ。
『確認しました。
あの目の前に見える軌道要塞『ビーナス』へ入港してください。
場所は、そちらでも確認できると思いますが、第三十四番宇宙港です』
そう言うと、モニターに惑星要塞の3D映像が出て、ある一点が光った。
おそらく、そこが第三十四番宇宙港なのだろう。
「この宇宙港で、アンドロイドの受け渡しがあるのですか?」
『おそらくそうなると思います。
私には分かりませんが、担当の者がいますので詳しくはその人に聞いてください』
「分かりました。案内、ありがとうございました」
『いえ、お気になさらずに。
あなたに、良きパートナーとの出会いがあるように、祈っています……』
そう言うと、通信は切れ、宇宙戦艦が離れていった。
本当に、案内役だったんだな……。
▽ ▽
案内をしてくれたオービスさんの言う通りに、第三十四番宇宙港に入港した。
そして、宇宙港の発着ロビーに俺とカレンが降り立つと、一人の人物が応対してくれる。
「初めまして、この要塞『ビーナス』で受け渡し担当をしているブルガンといいます。これから、よろしくお願いします」
「こちらこそ初めまして、宇宙運搬会社『ショルフダール』の加藤といいます。
今回はナンシー班長に、ここへ来るようにといわれたのですが……」
目の前の人物、ブルガンさんは中年の口ひげを生やした人だ。
少し太っているが、物腰は柔らかく接客向きな感じだ。
「はい、伺っております。
え~と、そちらの会社のナンシー様より、アンドロイドを一体ご注文いただきました。用途は戦艦の砲撃手として活動させたいとのことでしたね」
「間違いはないですが、それだけでは少し困るというか……」
ブルガンさんは、手に持つタブレットを見ながら確認している。
でも、砲撃だけを任せるわけじゃないんだが……。
「ご心配には及びません。
その辺りも注文時に、ナンシー様より聞いております。
出来るだけ、人の感情に近づけてほしいとも」
「そんな細かく注文していたんですか……」
「はい、連邦政府から許可をもらっているアンドロイド製作の会社は、すべてのお客様の要望に応える義務があるのです。
もちろん、出来ることとできないことがあるのは仕方がない事ですが、出来る限りご要望にはお答えしております。
では、加藤様にお渡しするアンドロイドを紹介しましょう」
そう言って、俺とカレンを案内した。
宇宙港のロビーから移動すること十分。
そこは待合室のような場所だ。
椅子が並んでいて、そこに一人の女性が座って待っている。
「こちらへどうぞ、加藤様。
お待たせ、こちらが君の新しいマスターになる方だ。ご挨拶をして?」
『はい』
そいうと、立ち上がり俺とカレンに一礼する。
髪と目は、薄い青色。ショートの髪形で耳に赤い宝石の入ったイヤリングをしている。
背は俺より少し低く、カレンと同サイズの胸。
服装は、ブルガンさんと同じような制服を着ていた。
「おっと、その前に加藤様、彼女の名前を決めてもらえますか?」
「名前は最初から決まっていないのですか?」
「ええ、我社では、お客様に付けてもらうようになっています。
ですが、どうしてもつけられないのであれば、私どもの方でつけますが……」
「ああ、いや、私が付けます。
え~と………、『マリア』でどうかな?」
『マリア……はい、いい名前だと思います』
「どうやら、いい名前をもらったようですね。
では、改めて挨拶を」
『はい、初めましてマスター。
この度、マスターと同じ宇宙船に乗せてもらうことになりました『マリア』です。
末永くよろしくお願いします』
そう言うと一礼した。
笑顔が素敵な、アンドロイドだ。
「では、加藤様、こちらにサインをお願いできますか?」
そう言って、ブルガンさんは、タブレットを俺に渡してきた。
そこには、いろいろと規約、みたいなものが載っていたのですべて読むことに。
すると、アンドロイドの値段とかが記されてあるのだが、単位が地球と違い分からないな……。
とりあえず、すべて読んで俺はサインをする。
そして、タブレットをブルガンさんに返すと、驚いていた。
「いや~、そこに記載されているものをすべて読まれた方は初めてです。
なかなか慎重な方なのですね。
私としては、好感が持てますよ」
何やら、気に入られたようだ。
▽ ▽
カレンとマリアと一緒に、自分の宇宙船『イグレイン』に戻ってきた俺は、さっそく他のみんなにマリアを紹介することに。
マリアの素は、エヴァに近い普通の女の子といった感じだ。
挨拶を済ませ、自身のブリッジでの席を案内し、居住区のマリアの部屋を案内する。
そして、ブリッジに戻り、惑星要塞『ビーナス』を離れる準備に入る。
『メインエンジン始動!
固定アームの解除を確認!
宇宙船『イグレイン』、微速前進!』
こうして、マリアを受けとり、俺たちは次の目的地へ出発した。




