第92話 救助のその後
惑星『ボルク』にいた人たちは、どうやら、この宙域を通った宇宙客船の乗客だったようだ。
脱出カプセルに乗っていたのは、全部で七人。
全員が、十六歳から十七歳の学生だそうで、宇宙客船での旅行中、誤って脱出カプセルを使って宇宙客船から脱出してしまったらしい。
銀河警察の救出部隊に救助される際、全員が泣きながら詳細を語ったそうだ。
銀河警察が、彼らの捜索要請がないか調べたところ、惑星『ケゲル』から銀河警察と『ケゲル』の政府警察に捜索要請が出ていたようだ。
惑星『ケゲル』に用のあった俺たちと、救助した少年たちを引き渡すために銀河警察の救出部隊は一緒に、今、惑星『ケゲル』の宇宙ステーションにきていた。
「偶然とはいえ、見つかってよかったですよ」
「本当に。加藤さんたちが、救難信号をキャッチしてくれなかったらと思うとね……」
「そういえば、さっき私を担当した職員に聞きましたが、惑星『ボルク』からの救難信号って、発見しにくいんですか?」
「みたいですよ、どうも、あの分厚い雲が原因だとか……」
「少年たちも、三日目で諦めていたらしいですね」
「惑星『ボルク』の水の底には、いくつもの沈没宇宙船があるとか言われてますね……」
惑星『ケゲル』の宇宙ステーションにある宇宙港のロビーで、俺とコーヒーを飲みながら談笑しているのは、銀河警察救出部隊の新城達也君だ。
どうやら、彼は俺と同じ地球の日本出身で、俺は宇宙運搬会社に入ったが、彼は銀河警察に入ったそうだ。
最初にネットで応募があった時は、何かのイベントかそれとも、ラノベやアニメのネタだろうと冗談で応募して、本当に銀河警察予備学校から迎えがきたときは、マジで声が出ないほど驚いたそうだ。
その後、生体強化をしたのが、十九歳の時。
銀河警察予備学校を卒業したのが二十五歳だったそうだ。
それから、いろいろな部署を回り、現在二十九歳で救出部隊に配属されているのだとか。
……俺より、この宇宙での経験が豊富だな。
「でも、なぜ『ボルク』にそんな大量の宇宙船が?
あそこは、偵察カメラで見ましたが、白い分厚い雲の下は一面の海でしたよ?」
「お宝ですよ、加藤さん。
地球でいうところの、船と一緒に沈んだ金銀財宝ってやつです。
もちろん、そのお宝の価値は『ケゲル』の人しか分かりませんがね」
うむ、そこに住む人にしか価値がないものというわけか。
外の人からは何故、そんなモノを?というものがあるからな……。
「そういえば、この宇宙でも地球で価値ある宝石が、見向きもされないことありますからね」
「ダイヤモンドでしょ?
星丸ごとダイヤモンドっていうところがありますから、価値はないんでしょうね」
色々と話をしていると、そこに俺を担当してくれているここの職員さんが声をかけてきた。どうやら、運搬する荷を積み込み終わったようだ。
ということで、ここでの談笑もこれまでとなった。
「荷を積み込み終わったようなので、私はこれで」
「加藤さん、同じ地球出身の人に会えてうれしかったですよ。
また、いつか、宇宙のどこかでお会いしましょう」
「ええ、また宇宙のどこかで……。
というより、銀河警察にいるなら連絡つくでしょうに」
「そういえば、そうでしたね」
そう言って俺たちは笑いながら握手をすると、そのまま別れることに。
こんな銀河のどこかで、同じ地球のそれも日本人に会えるなんてね。
新城君は、ロビーから俺が見えなくなるまで手を振っていてくれた。
よほど、うれしかったんだろう。
▽ ▽
俺は宇宙港の職員の人から、荷を積み終えたという報告を聞き、自分の宇宙船『イグレイン』のブリッジに戻ってきた。
「ただいま」
『お帰りなさいませ、マスター』
『お帰りなさいですわ、マスター』
『おかえり!マスター』
『お帰りなさい、マスター』
カレン、オリビア、エヴァ、ヘレンが迎えてくれる。
これから向かう次の惑星で、もう一体アンドロイドが増える予定だ。
「積み荷は、大丈夫だよね?カレン」
『はい、リスト通り積み込み完了しました。
いつでも出発できます』
「よし、では宇宙船『イグレイン』を宇宙港から出発。
次の目的地、惑星『ネスビーナス』へ出発だ!」
『了解!マスター。
メインエンジン始動!固定アーム解除……解除確認!
宇宙船『イグレイン』、微速前進!』
エヴァの掛け声で、宇宙船『イグレイン』が動き出す。
本当は、こんな掛け声はいらないんだけど、気分の問題だよね。
ブリッジの窓から宇宙港の様子が見える。
そこに、新城君が、こちらを見ているのに気付いた。
まだロビーにいたのか……。
と、そこへ同じ銀河警察の女性二人が走って新城君に近寄っていく。
そして、何か言葉を交わし、三人一緒にロビーの奥へ走って行った。
俺はそれを見送りながら、またどこかで会おうと思った……。
『微速前進から、速度を上げて前進へ!』
エヴァが、宇宙船『イグレイン』の速度を上げて宇宙港を離れていく。
そして、向きを変え、亜空間長距離ワープに入った。
一気に、周りの宇宙が光の線になり、その後光のトンネルへと変化する。
亜空間航行に入った証拠だ。
これで、惑星『ネスビーナス』到着までの十日間は、光のトンネルのままだ。
『亜空間航行、安定に入りました!』
「よし、お疲れさま。
それぞれ、時間割ごとに過ごすことね」
『『『『は~い』』』』
みんなで、いい返事をすると、さっそくヘレンがブリッジを出る。
その後を追うのが、オリビアだ。
それから、何分かしてエヴァがブリッジを出る。
いつもの光景である……。
▽ ▽
亜空間航行、一日目。
『マスター、コーヒーを入れますね』
「ああ、ありがとう、カレン」
みんながブリッジを離れた後、俺とカレンはここに残りナンシー班長に任せていた、新しいアンドロイドの詳細を見ている。
今度迎えるアンドロイドは、攻撃手だ。
兵器を使っての攻撃を主におこなうアンドロイド、ではあるが、それだけということはないだろう。
それは、カレンたちを見ていればよくわかる。
カレンたちは、それぞれで感情があり、性格があり、個性があるのだ。
次に来るアンドロイドも、どんな個性の持ち主か楽しみにしている。




