第90話 新しい依頼
地球から帰還するときは、いつも転送装置での帰還となる。
何故なら、地球はまだ宇宙人との取引がないからだ。
取り引きがあれば、連邦に加盟することもできるし、技術供与してもらうこともできる。
そのため、地球はまだ宇宙進出できている惑星とは、言えないだろう。
だから、他の星の宇宙船が行き来できる宇宙ステーションや宇宙港の建設も、いつになることやら……。
そのため、俺のようなすでに宇宙で仕事をしている地球人にとっては、この転送装置が欠かせないのだ。
「ただいま」
『お帰りなさいませ、マスター』
この転送室は、宇宙船『イグレイン』のブリッジのある階から、エレベーターで下に降りた階にある。
また、この階には医務室をはじめ、生体強化した身体を慣れさせる施設もあり、トレーニングジムも完備しているのだ。
あと、エレベーターの最上階は、展望部屋になっていた。
いざ、地球に降りようとして転送装置がある部屋はどこだ、となって探したのはいい思い出だ。
転送装置などが置かれた階層に、エレベーター以外で来れないから気が付かなかった。
「俺がいない間、変わったことは?」
『いえ、とくには何も。平和そのものでしたよ』
「そうか、それは何より。
それじゃあ、地球で購入したものを居住区に設置してしまおう」
『はい』
俺とカレンは、その足で居住区へ行き、地球で購入してきたソファなどを設置、住みやすい居住区に仕上げた。
▽ ▽
ブリッジに入ると、艦長席に座り、すぐにナンシー班長に連絡をとる。
「オリビア、ナンシー班長に連絡を入れてくれ」
『分かりましたわ、マスター』
すると、すぐに目の前のメインモニターにナンシー班長が映る。
椅子に座ったまま、足を組みファイルを持って待っていたようだ。
『加藤さん、新しい宇宙船はいかがですか?
色々と前のものとは使い勝手が違うかもしれませんが、使いこなしてくださいね?』
「はい、ナンシー班長。
それで、次の依頼をお願いしたいのですが……」
『ええ、ちゃんと用意しています。
加藤さんにお願いする次の依頼は、物資の運搬になります』
「物資の運搬とは、久しぶりの依頼だな……」
前はいつ物資の運搬をしたかな……。
最近は、人を運んだり、宇宙客船を運んだり、惑星に投下したりといろいろ経験させてもらったな……。
『コホン、よろしいですか?』
「は、はい、どうぞ」
いかんいかん、いつの間にか遠い目をしていたようだ。
ナンシー班長が、少し呆れているぞ。
『目的地は、惑星『メータム』です。
地球と同じような未進出惑星ですが、この度、この惑星から地球と同じように人を雇うことが決まりました』
「ということは、俺の後輩ができるのですか?」
『いいえ、惑星『メータム』は私の管轄ではありませんから、加藤さんに後輩ができるわけではありません。
それに、宇宙で仕事をしていると、直接の先輩でも後輩でも、滅多に会うことはありませんからね……』
……確かに、俺の直接の先輩であるロニー先輩とも、二度しか会っていないよな。
やっぱり、広すぎる宇宙が原因か?
『運ぶ物資は、惑星『ケゲル』で受け取ってください。
すでに、正式採用者は何人かいますから、アンドロイドを何体か運んでもらうことになると思います』
なるほど、俺にとってのカレンたちか。
サポートしてくれるアンドロイドには、助かっているよな……。
「あ、ナンシー班長。
実は、アンドロイドをもう一体増やしたいんですが、どこへお願いすればいいんですか?」
『加藤さんのチームに、アンドロイドを?』
「はい、この宇宙船『イグレイン』には兵器が積んでありますから」
『なるほど、攻撃手ですね?
それなら、こちらで手配しておきましょう。性別はどうしますか?』
今さら、男性アンドロイドもないだろう。
ここは女性型で決まりだな。
「女性型でお願いします」
『分かりました。
こちらで手配しておきますから、惑星『ケゲル』で物資を受け取った後、惑星『メータム』へ直接向かわずに、惑星『ネスビーナス』に向かって下さい。
そこで、受け取ることができるはずです』
惑星『ネスビーナス』か。
「分かりました、惑星『ネスビーナス』で受け取ってから、惑星『メータム』へ向かいます」
『後は、資料に詳しいことを記載してそちらに送っておきますね』
「ありがとうございます、ナンシー班長」
そう言うと、最後は笑顔で手を振って通信は切れた。
シャロンさんも美人だけど、ナンシー班長も美人だよな……。
「さて、それじゃあカレン」
『はい、惑星『ケゲル』の座標は調べておきました。
エヴァ、座標をそっちに送りますよ』
『了解、カレン!
……座標を受けっとったよ!今入力中……。
入力完了!マスターいつでもいいよ!』
「了解、それじゃあ、惑星『ケゲル』に向けて、発進!」
『了解、マスター!
惑星『ケゲル』に向かけて、亜空間長距離ワープ、開始!』
こうして、俺たちは宇宙へ旅立っていった……。
▽ ▽
亜空間航行、一日目。
「カレン、惑星『ケゲル』まで何日かかりそうなんだ?」
『地球からですから、約三日です。
惑星『ケゲル』から惑星『ネスビーナス』までが、約十日。
惑星『ネスビーナス』から惑星『メータム』までが、約十三日となります』
「ありがとう、カレン」
惑星『ケゲル』は結構、近い場所にあるんだな。
まあそれでも、百五十光年ほど離れているわけだけど……。
ん~、それにしても結婚か……。
日本でニートしていた時は、考えられなかったことだよな……。
しかし、俺はすでに四十を超えているし、お見合いっていってもな……。
「……なあカレン、夫婦でこの運搬屋している人っているのかな?」
『どうしたのですか?
マスターは、結婚されるご予定でもあるのですか?』
「いや、ないけど。
実家に帰った時、母親にお見合いしてみないかって言われてな?
結婚したらって、考えてしまったんだよ。
もちろん、今のところ、そういう相手もいないから結婚もしないけどな……」
『そうですか……。
マスターの御質問ですが、夫婦で運搬屋をしている方はいますよ。
もちろん、独身の方もいますし、奥様を母星に残して、という方もおられます』
そうなのか……。
「でも、母星に奥さんを残すって、浮気とか心配にならないのかな?」
『マスターの言われる浮気は、知識でありますが、あまり意味を成しません。
惑星ごとで、男女の形態が違いますからね。
地球のように一夫一妻制は、珍しいようですよ』
……てことは、惑星ごとに夫婦の在り方が違い、惑星ごとに一夫多妻もありうるということか……。
「でも、さすがに、他の惑星の人との結婚は……」
『できますよ。
アンドロイドとの結婚も認められていますからね。
言うなれば、宇宙では何でもありということです♪』
さ、さすが宇宙。
進み過ぎていて、俺の頭では追いついていけないな……。




