第84話 修理するなら新型へ
ミャリーさんと別れを済ませて通信を切ると、俺はオリビアにナンシー班長へ連絡を入れるように指示する。
「オリビア、ナンシー班長に連絡を頼む」
『分かりましたわ、マスター』
通信パネルを操作し、ナンシー班長に通信をするとつながった。
ナンシー班長本人らしく、ようやく上司から任されていた仕事が終わって戻って来たらしい。
『つながりましたわ、メインに回しますわね』
「ああ、お願い」
そう言うと、オリビアはメインモニターにナンシー班長との通信を開いてくれる。
久しぶりにあったナンシー班長は、以前と少しも変わらない。
いや、少し疲れているかな?
「お久しぶりです、ナンシー班長。
……少しお疲れのようですが、大丈夫ですか?」
『ええ、私は大丈夫よ。お気遣いありがとう。
それにしても、本当にお久しぶりですね。この仕事には、もう慣れたでしょう?』
「はい。まあ、いろいろ経験させてもらいましたから……」
『フフフ、加藤さん、今回の依頼もお疲れさまでした。
人の運搬は初めてだったでしょうけど、どうでしたか?』
「はい、大変だということは分かりました。
荷物の運搬と違って、何に巻き込まれるか分からないところがありますからね……」
『デビット・リンドの件ですね?
こちらでも確認しました。
私も、まさかこんな大物と繋がっているとは、思いませんでしたよ』
そういえば、ナンシー班長の資料にも、ミャリーさん関連はあったけど、惑星『セネリーオル』に繋がっているとかは無かったな。
「ところで、ナンシー班長に相談があるんですが、いいですか?」
『ええ、構わないわよ』
「実は、今回の依頼の最後で宇宙船が損傷を受けたんですよ。
それで、修理をお願いしたいんですけど……」
『それぐらいは、大丈夫よ。
こちらで手配しておくから、直してもらいなさい』
「あ、もう一つ相談が」
『何?』
修理のことを相談し、笑顔で受けてくれて助かった、と思ったところにカレンが俺の側に着て服の裾を少し引っぱり、小声で兵器の装備、と。
「実は、これも今回の依頼で攻撃手段をそろそろ取り付けてもいいのかな、と。
それで、どんな武器がいいのかと相談を……」
『武器……』
ナンシー班長に、兵器搭載について相談すると、かなり考えている様子。
新人には、まだ早かったかな?と不安に思っていると、想定外の答えが返ってきた。
『加藤さん、それなら新型に乗り換えてみませんか?』
「……へ?し、新型、ですか?」
『そう新型。……と言っても、今、試験的に採用を検討している宇宙船なんだけど、使い心地のモニターを探していたの。
そこで、加藤さんたちが、使い心地を体験して報告してくれればいいわ。
『ショルフダール』本社が、それを精査して答えを出しますから』
試験採用の宇宙船か……。
確か、『ショルフダール』には、運搬業に向いている宇宙船、ないし宇宙戦艦を選んでいる。それは、この宇宙では、いろんな所でいろんな型の宇宙船が開発されているからだ。
それは、『色の艦隊』のような連邦政府直轄の軍隊から、民間企業の下請け会社が造る宇宙船もある。
その中から、運搬業務に向いている宇宙船を探している。
もちろん、そこには会社に売り込みに来るところもあるし、評判を聞いて会社から採用を検討する場合もある。
おそらく、今回のナンシー班長の言っていた宇宙船もそんな中の一つだろう。
しかも試験的に採用を検討となれば、すでに会社側は採用を考えているということなのかな?
俺は、少し考えてから、ナンシー班長の提案を受け入れた。
受け入れた俺を見て、ナンシー班長はホッとしているみたいだ。
『ありがとう、加藤さん。
では、これから地球へ向かって下さい。
前と同じで、新しい宇宙船を届けておきますから。
それと、次の依頼は、新しい宇宙船に変わった後で知らせます』
そう言うと、通信が切れる。
ナンシー班長、急いでいるようだな。
俺は、ブリッジにいるみんなを見ると、指示を出した。
「それじゃあ、新しい宇宙船を取りに行くぞ。
エヴァ、亜空間長距離ワープを!目的地は地球だ」
『了解、マスター!地球までの座標を』
『調べておきました、エヴァ、転送します』
『……座標確認!入力……完了!
宇宙船『アーサー』の方向修正!亜空間長距離ワープ、開始!』
こうして、俺たちは新しい宇宙船に乗り換えるため、地球へ旅立った。
▽ ▽
亜空間航行一日目。
亜空間航行に入って夕食を済ませた後、俺はブリッジでナンシー班長から送られた新しい宇宙船についての資料を読んでいた。
やはりナンシー班長、ちゃんと言わなくても資料を送ってくれていた。
その資料によれば、今回の宇宙船は惑星『ガンジャス』で、まだ若い設計士の設計を元に建造した宇宙船らしい。
全長、2キロと550メートル。高さ、約300メートルとなっている。
宇宙船『アーサー』が全長3キロメートルだから、新しい宇宙船は少し小さくなるのか。
また、貨物部が後方部から前方部へと変わり、積載量は宇宙船『アーサー』と変わらないらしい。
……積載量が変わらないなら、少し大きくなるのか?
なら、この高さが高くなっていることで、積載量が同じになるのか……。
そして、俺がこの資料でもっとも驚いたのは、この宇宙貨物船は、二つに分かれることができるのだ。
まずは、貨物部分の宇宙船。
ここは、二等辺三角形に長方形の箱が二つ合体した形をしていて、その長方形の箱の間に、宇宙戦艦タイプの宇宙船がドッキングするようになっている。
次に、そのドッキングする宇宙戦艦のような宇宙船だが、全長は約500メートル。
高さが約200メートルあり、下方の30メートルの部分がドッキング部分だ。
ブリッジや居住区は、この宇宙戦艦にあり、ドッキングすることで貨物部分に出入りする出入口がつながる仕様だ。
また、メインブースターは三基が宇宙戦艦に、二十基が貨物部分の宇宙船についている。
そして、兵器を積んでいるのが宇宙戦艦部分で、八つのビーム兵器を搭載しているようだ。
しかも、このビーム兵器、『ロックオンシステム』を導入していて、敵をロックすると、どこに向かってビームを撃とうが、ロックした敵に向かって行くという代物。
……これは、砲撃を専門に行う人が必要かもしれないな。
また、運搬業には欠かせない『シールドシステム』も宇宙戦艦に搭載してある。
ここで疑問だが、貨物部分はドッキングしないと『シールド』ができないかと言うとそうではなく、ドッキングしている時に『シールド』を張ると、ドッキング解除しても『シールド』状態が維持されるらしい。
そして、今回初めて知ったのだが、『シールド』を張っている宇宙船同士は干渉しあわないそうだ。
つまり、この貨物部分と宇宙戦艦部分が、お互い『シールド』を張っていても、ドッキングは可能、ということみたいだ。
……ご都合みたいな感じだけど、そうなっている。
でも、違う『シールド』を張った宇宙船同士はどうなんだろう。
もしかすると、人の指紋とかと同じように、『シールドシステム』にも個別の何かがあるのかもしれないな……。
それにしても、ドッキングができるとは……。
何か、ワクワクする俺がいる。




