第83話 終結
無事、惑星『セネリーオル』に降下した宇宙艇に乗る、ミャリーとクラリスは、操縦席のモニターに映る地上の様子に言葉を失っていた。
「………」
「………これが…」
大気圏突入後、地上から高度五十メートル付近にまで降下し、反重力浮遊装置によって空中を移動していたが、モニターに映る町などの地上の様子は、悲惨なものだった。
町や村の上空を通過するたびに見えるのは、苦しみ倒れている人々の姿。
病院は各町や村にあるものの、そこに入りきれなかった人々。
家から出たところで倒れたままの親子。
ペットであろう犬などの動物も、例外ではなかった。
幸い、火災などは起きてる様子は無かったが、人々が倒れているのは間違いなかった。
だが、その中でも、動いている人々はいた。
この惑星以外の人で、ここに住んでいる人たちだろう。
何とか助けようと、病院へ運ぼうと頑張っている人や、道に倒れている人に声をかけているような人。
そんな光景を見ながら、ミャリーとクラリスは操縦している。
二人の目からは、涙がとめどなく流れていた。
「グスッ、……もうすぐ、もうずぐだがらね……」
「なぐなミャビー、グシュッ……前を見ろ!」
鼻をすすり、もうすぐ、もうすぐと呟くミャリー。
ミャリーを注意し、鼻をかむクラリス。
二人の目の前には、目的の場所が見えてきていた……。
▽ ▽
森の中にあった高層マンションのような塔が建っている。
その塔には、窓もなくただ壁のようになった外側だ。
そして、その塔の足元に、目的地の神殿があった。
宇宙艇を着陸させ、外に出てくるミャリーとクラリス。
そして、高い塔を下から上へと眺めた。
「……これが、魔力発生装置……」
「そうよクラリス。
これこそ、人類の前にこの宇宙を支配していた文明が残したオーパーツ。
この惑星『セネリーオル』の人々を助けるために設置された、言わば『命の塔』」
『命の塔』。
そう言われて、どこか納得のいくクラリス。
この塔から、この星の人々が生きていくうえで必要不可欠な『魔力』を、最低限確保できる量を発生させている。
「……中に入るよ」
「ええ……」
二人は、神殿の中へと足を踏みだした。
神殿の大きさは、小学校の体育館ほどの高さと広さがあり、両端に並ぶ柱はおそらく直径二メートルはあるだろう。
高さも天井に届いていることから、十メートルぐらいか?
床は、石でできているみたいで、つなぎ目からは草がいくつか生えていた。
そこをどんどん奥へ奥へと入っていく。
入り口から百メートルぐらい入った場所に、透明なガラスのような柱が一本、真ん中に立っていた。
「ねぇミャリー、これは……?」
「これが、この塔の心臓部。
こんな分かりやすい所にある理由は、分からないけど、ここに『超新星の涙』を入れれば惑星中に魔力が満たされるはず……」
そう説明し、ミャリーは亜空間倉庫から『超新星の涙』を取り出し、ガラスの柱に近づける。
すると、ガラスの柱を割ることも開けることもせずに、『超新星の涙』を吸い込み、中心に浮かんで収まってしまった。
「つ、突き抜けた?」
「どうなっているの……?」
収まった『超新星の涙』は、ぼんやりと光始め徐々に回転していく。
さらに高速で回転し始めると、今度は強烈な輝きを放った。
「ま、眩しっ!!」
「ヒャッ!」
そして、次に起こったのが地震だ。
激しい揺れがミャリーとクラリスを襲い、二人は立っていられなくなり、その場にしゃがんでしまう。
一分ほど、激しい揺れに襲われたが、徐々に揺れが収まると、ガラスの柱の中の『超新星の涙』もゆっくりな回転に戻っていった。
また、『超新星の涙』が放っていた光も収まったようだ。
十分ほどで揺れが収まると、何ごともなかったかのように辺りには静けさが戻っていた。
「……もう、大丈夫かな?」
「揺れは、収まったようね。
『超新星の涙』も、安定しているみたい……」
一本のガラスの柱の中で、うっすらと光り、ゆっくりと回る『超新星の涙』。
ああ、これで助かったんだと、ミャリーとクラリスの心に安堵の光が灯る。
そして、お互い顔を見て笑顔になった……。
▽ ▽
惑星『セネリーオル』の衛星である月付近に待機している宇宙船『アーサー』のブリッジには、ミャリーさんたちの通信を待つ俺たちがいる。
「……」
艦長席に座り、何も言うことなく本を読む俺。
ヘレンは、清掃のため席を外し、カレンはコーヒーを準備している。
エヴァは、操縦席で寝ているし、オリビアは、モニターで何か見ているようだ。
『……マスター、衛星軌道上の戦闘に銀河警察が介入しましたわよ』
「銀河警察が介入?」
俺は艦長席のモニターを出すと、そこには、デビット・リンドの乗る宇宙戦艦に銀河警察の宇宙船が何隻も取りつく映像が映し出される。
「これって、強制捜査かな?」
『ありました、マスター。
亜空間ネットで、ニュースになっています。デビット・リンドの今回の惑星『セネリーオル』関連の計画が流れています』
カレンは、コーヒーの準備を途中でやめて、亜空間ネットを調べてくれたみたいだ。
そして、そこにデビット・リンドのニュースが流れていたと……。
『マスター、戦闘が治まったようですわ。
それと、ミャリー様から通信が入っていますわよ』
「分かった。オリビア、メインに回してくれ」
『了解ですわ』
そして、ブリッジのメインモニターに操縦席に座るミャリーさんが映し出される。
その隣の席にいるはずの、クラリスさんはいなかった。
『設置が完了したわ。
これで、この星は助かるはずよ』
「ご苦労様でした、ミャリーさん。
ところで、クラリスさんは?」
『クラリスなら、外にいるわよ』
「何か、あったんですか?」
『ここの施設がね?入った時と出て来た時とで形が変わっていたの。
それに驚いちゃってね……』
ミャリーさんの苦笑いが、すべてを物語っている気がする。
……まあ、二人が無事でよかった。
「それじゃあ、これですべてが終わったってことですか?」
『そんなことないわよ。
これからが忙しいの、確かに魔力は戻ったけど、いまだ倒れたままの人は多いわ。
私たちは、これからこの星の人達の救助に向かうつもりよ。
それに、ほら……』
そう言って、宇宙艇から見える外の様子を映し出してくれた。
そこには、空に流れるいくつもの流れ星が見える。
『あの流れ星は、大気圏突入してくる私たちの仲間、今まで戦っていた仲間たちよ。戦いは終わったけど、この星に住む人たちを助ける戦いはこれからなのよ……』
「……確か、この星は封鎖されてましたよね?
こんなに突入しているってことは、封鎖が解除されたってことですか?」
『ええ、連邦政府が発表したわ。
この星の感染病の正体や、治療の仕方。それで封鎖が解除されてね』
俺にカレンがタブレットを渡し見せてくれる。
亜空間ネットに映し出されるニュースを……。
こうして、惑星『セネリーオル』をめぐる一連の戦いは終結した。




