第80話 計画の全容
いよいよ、ミャリーさんとクラリスさんは、最終目的地である惑星『セネリーオル』へ向かうことになった。
亜空間長距離ワープを使って、三日の距離になる。
この三日の間に、惑星『セネリーオル』に到着した後のことを話し合わないといけない。
何故なら、『超新星の涙』を必要としている場所は、惑星『セネリーオル』の地上なのだ。
今乗っている宇宙船『アーサー』には、大気圏突入能力や大気圏離脱能力は無いのだ。
つまり、惑星に突入したら、地上まで落ちるだけなのだ。
墜落して動けなくなるだけである……。
そのことを、ミャリーさんとクラリスさんに話すと、すぐに解決策を考えてくれた。
「私たちで、大気圏航行能力を持った宇宙船を用意するわ。
あと、その宇宙船をワープアウトしてすぐに受け取れるように報告しておきましょう」
そうミャリーさんが言うと、クラリスさんがオリビアに通信をお願いしていた。
クラリスさんの持つ通信機では、亜空間航行の最中に通信することができないそうだ。
「それじゃあ、私から加藤さんに報告しておくわ」
クラリスさんが、オリビアに通信をお願いしている時、ミャリーさんが神妙な面持ちで俺に話しかけてくる。
どうやら、真面目に聞かないといけない話のようだ。
「……なんでしょうか?」
「昨日、エリアから『メッセージ』を受け取ったでしょ?
その中身に関することなんだけど……」
『白の艦隊』に所属している、クラリスさんの幼馴染のエリアさんか。
確かに、エリアさんが『メッセージ』を預かっていたといって、クラリスさんの端末に転送していた。
そして、その『メッセージ』を、ミャリーさんとクラリスさんは読んで顔つきが変わったんだったな。
「はい」
「……まず、今回の一連の計画には、リーダーがいるの。
それが、私たちに『メッセージ』を送ってきた、ロディ・ハーシーという人物。
彼が中心となって、私たちは動いているのよ……」
ミャリーさんの説明は、衝撃だった。
まず、ロディ・ハーシーが今回の計画を立てた理由は、奥さんが惑星『セネリーオル』の人間で、今から五年前、惑星『セネリーオル』で暮らしていたロディさんの奥さんに病気が発覚したからだ。
この計画は、奥さんの病気を治すために行動した結果なのだ。
惑星『セネリーオル』は、魔法が使える惑星ではあるが、惑星外との取引があり、人の行き来もある。
そのため、惑星『セネリーオル』の人々は、魔法を使わなくなって科学技術に目覚めたのだが、そのことが、今回の奥さんの病気に関係があった。
もし、まだ魔法が使える人が惑星にいたのなら、今回の事件に気付いただろう。
奥さんの病気の原因は、『魔力欠乏』による身体機能不全。
そう、彼女たち惑星『セネリーオル』に生まれたものは、魔力が無くなれば身体機能を維持できなくなるのだ。
だが、魔力を生み出す惑星の特殊な植物は、何千年も前から絶滅していたし、それを補うための魔力を生み出す『超新星の涙』は、惑星から何百年も前に持ち出されたまま。
何故、今ごろになって『魔力欠乏』がおきるのか。
ロディさんは、調べ上げてようやく分かった。
それは、惑星に生まれた人々が魔法を使わなかったため、こんなにも発症が遅れたのだ。
しかし、魔法を使わなくても魔力は生きている限り消費する。
そして、魔力を生み出すものは無い状態で、じわじわと魔力を消費し、ついに限界がきたのだ。
限界が来れば、次々と人々は『魔力欠乏』による身体機能不全が蔓延する。
それが、あたかも疫病が蔓延するかのごとく、広がったのだ。
そして、惑星生まれの人々の惑星からの退去、そして惑星封鎖へとつながった。
この時はまだ、ロディさんも連邦の医師たちも『魔力欠乏』による機能不全とは分からず、未知の伝染病と診断してしまっていた。
日に日に弱っていく、ロディさんの奥さんや惑星の人々。
何度も神に祈る日々が続いたある日、光明が意外な所からさしてきた。
それこそが、『赤の艦隊所属の研究所の論文』だ。
『魔法が使用できる惑星の人々の生態』というものだった。
そして、その中に、今回の症状とよく似たものが記されていた。
それが『魔力欠乏症』。
その論文のおかげで、その名前と原因に治療方法を知ったロディさんは、早速行動を起こす。
まずは、惑星内の人々を、他の魔法が使える惑星への移送を連邦政府に提案した。
だが、これは却下される。
理由は、莫大な費用が掛かるということに加え、請け負う輸送船がない事。
さらに、惑星『セネリーオル』の所有権が、デビット・リンドに条件付きで移っていたことだ。
今の所有者は、連邦政府となっている。
だが、このまま手をこまねいているわけではないが、もし、惑星の人々が絶滅した場合、連邦政府が所有することはできなくなる。
何故なら、連邦政府所有の条件が、その惑星に生まれた人がいることなのだ。
このままいけば、全員謎の伝染病で絶滅。
絶滅後は、連邦の庇護下から外れる。そして、鉱石商のデビットのもとに……。
そんな事はさせないために、ロディさんは惑星『セネリーオル』のことを調べに調べて、ようやく『超新星の涙』のことにたどり着いた。
そして、この計画が作られ、ミャリーさんなどの仲間が集ったのだ。
ミャリーさんははじめ、連邦政府からの派遣として参加していたが、実情を知り本気で計画に参加することを決意。
そして、このことを友達のクラリスさんなどに教え、さらに仲間を増やしていった。
ロディさんの奥さんの容態も芳しくない。
そのため、ある程度仲間が集まったところで、計画を実行に移したのだ……。
「で、『超新星の涙』をデビットたちが手に入れる前に、私が手に入れたの。
それからは、一連の行動につながるのよ」
「そうね、それぞれ役割を分担し、私は協力してくれる『色の艦隊』に話を持っていったし……」
「私は、『超新星の涙』の運搬を担当したわね」
色々と妨害はあったようでしたけど……。
「デビットの狙いは、惑星『セネリーオル』に眠る魔法金属よ。
実は、魔法金属って魔力のある惑星にしかないから希少なのよ。
しかも、使い道が研究されていて、最新の研究結果では、未知の力を生み出すことが分かっているらしいわ」
未知の力を発揮か……。
さらに研究を続ければ、『シールドシステム』とかの技術解明につながるかもしれないか……。
今のままでも、価値はかなりのもの。
惑星一つ丸々掘り起こして、魔法金属を取り出せば……。
デビット・リンドは、そう考えて惑星『セネリーオル』を手に入れるために利用したのかもね……。
まさか、この事態を引き起こしたとは、いくらなんでも考えにくいだろうし……。




