第79話 メッセージ
『宇宙海賊の宇宙戦艦、全艦爆散を確認しましたわ』
俺たちの目の前のモニターで、宇宙海賊の戦艦が撃ちとられる光景を見ていた。
突如現れた、白い宇宙戦艦による攻撃は、確実に一撃ずつ宇宙海賊の戦艦に命中していた。
しかも、急所であろう場所を……。
そのため、すぐに爆発せずに、戦艦のあちこちから爆発が始まり誘爆しているのが確認できた。
そして、最後は戦艦の中心で大きな爆発があり、爆散して終わる。
これが、たった一撃で引き起こされるのだ。
この宇宙では、宇宙海賊の数がかなり多い。
それは、少ない人数で大型の宇宙戦艦を操ることができたのが原因の一つだろうと、研修の時、教えてもらった。
宇宙海賊になる人たちは、いろいろな原因があるのだろうが、宇宙海賊を利用する者たちがいるのも、原因の一つだ。
今回の襲ってきた宇宙海賊は、そんな連中らしい。
クラリスさんの話では、デビット・リンドという人物が私的に宇宙海賊と繋がっているそうで、その宇宙海賊の討伐に『白の艦隊』に話を持っていったそうだ。
「で、あの白い宇宙戦艦が、その『白の艦隊』のものだと……」
「ええ、私が呼んだのよ。
この宇宙船に兵器が積んでいれば、呼ぶこともなかったんだけど?」
……まあ、助かったわけだし、お礼は言っておこう。
「ありがとうございます、クラリスさん。助かりました」
「どういたしまして♪」
上機嫌で、答えるクラリスさん。
ミャリーさんは、複雑な顔をしている。
そんな話をしている時に、通信が入ってきた。
多分、目の前の白い宇宙戦艦からのものだろう。
『マスター、白の宇宙戦艦から通信が来ましたわ』
「メインに回してくれ、オリビア」
『分かりましたわ』
操作パネルを操作すると、俺たちの前の大きなメインモニターに1人の女性が映し出された。
水色の長い髪をなびかせ、白一色の制服を着て敬礼する。
美人がそんなことをすると、凛々しく感じてしまうよね。
『初めまして、『ショルフダール』の宇宙貨物船に乗る乗組員の方々。
私は、『白の艦隊』所属、ニシェル・マスホート直属のエリアと申します。
この宇宙戦艦『ラゲッツ』の艦長を務めさせてもらってます。
以後、お見知りおきください!』
丁寧なあいさつだな。
それなら、こちらも丁寧にあいさつをしておこう。
「これは、ご丁寧なあいさつをありがとうございます。
私は、宇宙運搬会社『ショルフダール』の加藤康介と申します。
この、宇宙貨物船『アーサー』の艦長を務めています。
こちらこそ、よろしくお願いします」
……こんなものかな?
……間違ったこと、言ってないよね?
俺は少し不安になってので、後ろのカレンを見ると、笑顔で頷いてくれた。
大丈夫のようだ。
「……ブフッ!」
俺が安心した時、クラリスさんが何が可笑しかったのかふきだした。
俺のセリフかと思ったが、どうやら違うようだ。
何故なら、モニターの向こうのエリアさんが、顔を赤くして肩を震わせていたからだ。
「な、何、あのセリフ……。
エ、エリア、私を、わ、笑わせて、何が、面白いのよ……」
『ク、クラリス!
今は『白の艦隊』所属の艦長としてあいさつしたのよ!
しょうがないでしょ!私だって、似合わないと思っているわよ!』
顔を真っ赤にしたエリアさんが、モニター越しに抗議している。
クラリスさんは、ブリッジにある手すりにつかまり、まだ笑いをこらえているようだ。
俺は、二人の関係が分からずに、ミャリーさんを見る。
すると、面倒くさそうに説明してくれた。
「クラリスとエリアは、幼馴染なのよ。
しかも、同じ惑星出身のね。
……実をいえば、クラリスって今は退役していたけど、色の艦隊所属だったのよ」
「色の艦隊の?何色か分かります?」
「確か、『赤の艦隊』だったはずよ。
そこで、副艦長を務めていたそうよ。
……当時の艦長の嫌がらせに耐えきれず、勢いで辞めたらしいわ。
それまでの艦長の嫌がらせを、赤の艦隊の上に報告して辞めたから、今はその艦長もいないでしょうね……」
『あの艦長なら、今もいますよ』
思わぬところから、報告がきた。
モニターの向こうで、クラリスさんにからかわれていたエリアさんだ。
それにしても、今、重大な報告を聞いたような?
「えっと、やめてない?」
『ええ、加藤さん、その通り辞めていませんよ。
クラリスが退役したことは本人から聞いていましたからね、原因も含めて。
だから、その艦長がどうなったか調べました。
そうしたら、辞めてなくて、今も艦長として活躍しているそうです』
俺は、その報告に、ゆっくりクラリスさんを見ると、ショックを受ける様子もなくただ頷いていた。
納得しているのか?
「まあ、そうでしょうね。
私の報告だけで、色の艦隊の艦長が首になるほど、軽い地位じゃないってことでしょ。色の艦隊の艦長は、実力主義でなるものらしいし」
実力主義なのか。
と、言うことは、エリアさんもその実力があって艦長をしているってことなのか?
俺は、少し信じられないという視線を、モニターの向こうのエリアさんに向ける。
「信じられないでしょ?
でも、エリアが『白の艦隊』の艦長だっていうなら、実力があるってことなのよ。
見た目でなれる地位じゃないからね……」
色の艦隊の艦長、改めてすごいんだな……。
「でも、助かったわエリア。
宇宙海賊に襲われて、対抗手段が何もなかったから……」
『……いくら運搬業だからって、対抗手段は積んでおくものですよ?
私も立場上、他の『ショルフダール』の宇宙貨物船を知っていますけど、敵に対する対抗手段が無い宇宙貨物船は初めて見ました。
加藤さん、今回のお仕事が終わったら、検討を考えてください。いいですか?』
敵に対する、対抗手段か……。
シールドシステムがあるから、大丈夫だと思っていたけど、確かに何もせずに諦めるのを待つ、というのもな……。
「……分かりました。
今回のミャリーさんの依頼が終わり次第、上司に相談します」
『はい、そうしてください。
いくら運搬業種に与えられている『シールドシステム』が優秀でも、心配になります。
それと、ミャリーさんに『メッセージ』を預かっています。
ロディ・ハーシーという方から……』
ロディ・ハーシーの名を聞いて、ミャリーさんとクラリスさんの表情が変わった。
今までの緩い雰囲気が一変し、どこかピリついた感じだ。
「『メッセージ』を受け取ったわ。
エリア、ありがとう。
後はこちらで動くから、上司のウィリアム殿によろしくね」
モニター越しに、幼馴染の雰囲気を察したのだろう。
エリアさんは、一回頷くと、通信を切ってしまう。
そして、すぐに白い宇宙戦艦は、ワープで飛んで行ってしまった。
ブリッジには、じっと真剣に携帯端末で『メッセージ』を読むクラリスさんとミャリーさん。
その様子を見ている、俺たち。
約五分ほど経過した時、ミャリーさんとクラリスさんが携帯端末から目を外し、お互いを見て頷きあう。
「加藤さん、惑星『セネリーオル』へ向かって下さい。
いよいよ、時間が無くなってきました」
「分かりました。
カレン、惑星『セネリーオル』の座標を調べて。
エヴァは、その座標へ、亜空間長距離ワープを!」
動き出すブリッジ。
いよいよ、この依頼も最終段階かな?




