第78話 白の宇宙戦艦
衛星都市『ダンカー』のある衛星『キグマ』から一定の距離離れることができた宇宙船『アーサー』は、今もなお宇宙海賊『ホーネス』の宇宙戦艦から攻撃を受けていた。
さらに、仲間と思われる宇宙戦艦六隻も加わり攻撃は苛烈を極めた。
が、そのどれもが致命傷にもならず、すべてシールドによって防がれている。
ここまでくれば、いい加減諦めても良さそうなのだが、どうやら宇宙海賊側が意地になってしまっているようだ。
「仲間を加えた宇宙戦艦で囲み、ずっと攻撃してくるとは……」
『エネルギーとかミサイルの補充とか、どうしているのかな~』
エヴァの疑問ももっともだ。
俺も、よく攻撃が続くと感心していた。
そこへ、ブリッジにミャリーさんとクラリスさん、それに二人を任せていたヘレンが入ってきた。
「な、何これ……」
「ちょ、ちょっと、加藤さん!
攻撃されているなら、逃げるなり迎撃するなりしないと!」
ミャリーさんとクラリスさんは、外の様子を見て驚き、モニターに映る宇宙海賊の戦艦が攻撃している様子を見て慌てだした。
二人を連れてきたヘレンは、ブリッジに入ってくると、俺に一礼して自分の席に戻っていった。
「まあまあ、落ち着いてください二人とも。
この宇宙船には『シールドシステム』がありますから安全です」
「シールドシステム……そういえば運搬屋の宇宙船だったわね」
シールドシステムの存在を知り、ミャリーさんとクラリスさんは少し落ち着きを取り戻したようだ。
何もしない宇宙船『アーサー』に、ずっと攻撃を繰り返している宇宙海賊たち。
その光景を見ていたクラリスが、通信機を取り出しどこかに連絡をしている。
「加藤さん、迎撃はしないんですか?」
「この宇宙船には、攻撃できる兵器を積んでいません。
ですから、こうしてシールドで防御するしかないんですよ」
この事実を知って、ミャリーさんは呆れてしまった。
この宇宙で、運搬を仕事として活動するならば、自分の身は自分で守らなければならない。ならば、このように攻撃を受けた場合は、迎撃または逃げるために兵器の一つや二つは装備しておく必要があるのではないか、と……。
▽ ▽
「撃てっ!撃てっ!撃てっ!」
「や、やめろ!もうやめろ、ラグマン!
いい加減に、正気になれっ!」
「俺は正気だ!目の前の船は何が何でも落とさなきゃならねぇんだよっ!
とにかく、撃って撃って撃ちまくれ!!」
宇宙戦艦のブリッジで、目をギラギラさせて興奮して叫ぶ宇宙海賊『ホーネス』の頭に、他の乗組員は引いていた。
そのため、とにかく頭の言うように行動するのだった。
それを見ていられなかったのが、頭のラグマンと宇宙海賊団を立ち上げた当初からの仲間だったカーチィだ。
何かにとりつかれたように、攻撃命令を出すラグマンを見ていられなかった。
「もうやめろ、運搬屋のシールドは絶対防御の代名詞だ。
あれは、連邦の色の艦隊の攻撃でも防いじまうとんでもない代物だぞ!」
「だから何だ!このまま攻撃を加えていきゃあ、いつか落とすことができるはずだ!どんなものでも、絶対はねぇんだからよぉ!」
「……いい加減にしろっ!」
カーチィは、目をギラギラさせて、とにかく攻撃することしか言わないラグマンを、自分の所属する宇宙海賊団の頭を殴り飛ばした。
殴られたラグマンは、ブリッジの艦長席からオペレーターのいる場所へ落されたほど飛ばされてしまう。
「……く、くぅぅ……い、いてぇなぁ………」
表情を歪めながら、突っ込んだオペレーター席から立ち上がり、ゆっくりと艦長席に上がってくる。
その眼は、カーチィを睨みつけたままだ。
「何しやがる、カーチィ。
この宇宙海賊の頭でもある俺に手を上げるとは、いい度胸だな……」
「……こうでもしねぇと、止まらなかっただろうが……」
ブリッジで、睨みあうラグマンとカーチィ。
だが、そんな二人の睨み合いも、ブリッジから見えた一筋の強い光によって終わる。
ラグマンとカーチィが、互いの顔から正面の宇宙に目を向けると、そこに移ったのは、仲間の宇宙戦艦が爆散する光景だった。
「!何が起こった!!」
「頭っ!攻撃だ!それもワープアウトして、すぐに撃たれた!!」
「何だとっ!」
ラグマンは、攻撃してきた敵を探す。
ブリッジから見える宇宙空間に目を向け、それらしい宇宙船を探した。
「ラグマン、モニターだ!」
今さっきまで、睨み合いをしていたカーチィが、ラグマンの側に映し出されていたモニターを見て叫んだ。
ラグマンも、その叫びを聞いて、モニターに視線を移す。
そのモニターには、一隻の真っ白な宇宙戦艦が映し出されていた。
大きさは、自分たちの宇宙戦艦とそう変わらないが、明らかに最新鋭と分かる美しさ。さらに、白のボディに翼をイメージして書かれたマークがあった。
「まずい!白の戦艦だ!」
「頭!逃げましょう!色の艦隊となんて、無理ですぜ!」
「く、くくく……」
モニターに映る白の戦艦を睨みつけ、唸るラグマン。
それを見て、カーチィはラグマンの代わりに指揮を執ろうと前に出る。
「ラグマン!……いいな?」
「………」
ラグマンは、カーチィを睨み、小さく頷く。
これで、指揮権はラグマンからカーチィに移った。
「よし!全艦撤退!急げ!」
「了解!全艦撤退行動をとります!」
宇宙船『アーサー』への攻撃が終わり、宇宙海賊『ホーネス』の宇宙戦艦は、撤退行動をとり始める。
しかし、時すでに遅く、突如として現れた白の戦艦に、一隻ずつ、確実に沈められていく。
「白の戦艦の攻撃、止みません!」
「『コーフス』爆散!『ニジハス』攻撃を受け、メインブースター停止!
『ニジハス』艦内に避難警報が発……、『ニジハス』爆散しました!」
一隻、一隻、確実に沈められていく。
今、カーチィ―がいるブリッジには、恐怖しかなかった。
戦って、活路を見出すか?
いや、相手は『白の艦隊』の宇宙戦艦だ、勝ち目なんてない。
搭載している兵器からして、雲泥の差があるんだ。
ここは、仲間を犠牲にしてでもこの宙域から逃げなければ……。
「すぐにワープに入るぞ!用意を急げ!」
「副船長!攻撃にエネルギーを使いすぎて、ワープが使えねぇ!どうする!」
「なら、ショートワープだ!」
「だ、だめです!ショートワープも使えません!」
「ならば、すべての推進力を使ってこの宙域から脱出だ!」
あせるカーチィを、ラグマンは艦長席に座ったまま見つめている。
そして、宇宙海賊を始めた頃を思い出していた……。
「『ニブル』爆散しました!残るは、我が艦だけです!」
「急げ、急げ、急げ!何としてもこの宙域を脱出するんだ!」
すでに、ブリッジには焦りしかなかった。
何とか助かるために、ラグマンを除いて、全員がこの気持ちだった。
「おい、カーチィ……」
ラグマンに呼ばれたカーチィが、振り返った瞬間。
ブリッジにいる全員が、光に包まれたのだった……。




