第77話 宇宙海賊『ホーネス』
「てめぇら!ドンドン突っ込ませろ!
カーチィ、俺たちの船に戻って、出港準備しとけ!」
「ラグマン、逃がす気か?!」
「そんな訳、あるか!万が一を考えねぇといけねぇんだよ!頭ってのはよ!」
「……了解、頭!出港準備をしておいてやるよ!」
俺の幼馴染のカーチィは、俺と一緒に宇宙海賊団を立ち上げた古参のメンバーの一人だ。今じゃ、そのカーチィとマルグの三人しか残っちゃあいねぇが、頼りになる。
今回の依頼は最初、簡単なものだと思ってた。
ミャリーって女を脅し、そいつが持っている宝石を、デビット・リンドに渡せばたんまりと報酬がもらえるはずだった。
デビットの依頼は、宇宙海賊やっている連中からすれば、おいしい依頼が多い。
だから、今回もデビットの依頼の争奪戦だった。
カーチィが、今回の依頼を持ってきたときはみんなで祝ったもんだ。
簡単な仕事で、たんまり金が手に入る。
しかも、依頼の品以外は俺たちの好きにしていいんだからよ。
しかし、………しかしよぉ!
今回の依頼は、なんだ!これは!!
「突っ込め、お前達!」
「ダメだ、頭。あの女、的確に飛び出そうとするところにビームを撃ってきて、飛び出すに飛びだせねぇ」
クソッ!
あと少しだってのに、追い詰められねぇ……。
発着ロビーの窓から、連絡通路を通っている女たちが見える。
俺は腰に下げていた通信機を取り出し、俺たちの船にいるマルグに連絡をとる。
「……マルグか?おう、今第七にいるんだけどよぉ、ここに泊まってる船を調べてくれるか?」
さすがマルグだ、すぐに調べて連絡すると言ってきた。
そして、言ったとおり一分と経たずに連絡がきた。
「おう、俺だ。どうだ?
……何?運搬屋の船?てことは、あの女どもが雇ったってことなのか?」
クソッ!ターゲットのミャリーって女が雇った運搬屋と分かった。
これは、このまま逃げられる可能性が出てきやがった!
「てめぇら!全員で一気に突っ込むぞ!俺に続け!」
「「へ、へい!」」
クソ、返事をしたのが二人しかいねぇ。
最近、カーチィの奴が頭ならという陰口をよく聞く。その影響か……。
とにかく、俺はロビーを飛び出し、連絡通路を一気に走る。
宇宙船の中からもう一人の女が、こちらに向けてビームガンを撃ってくるが構わねぇ。俺は無視して、女二人に近づくが、すんでのところで宇宙船の扉が閉まりやがった。
俺は、扉に近づき、殴る。
……クソッ、硬い!
どこかにこの扉を開けるものはと扉の周りを探すが、何も無かった。
そこへ、部下たちが到着する。
全員息を切らせているが、こいつら鍛えてないのか?
憎々しげに、扉を睨んでいると、警報が鳴る。
この繋がっている連絡通路が、離れるための警報だ!
ここにいつまでもいたんじゃ、宇宙に投げ出されてしまう!
俺は部下たちに、走れ!と命令してロビーまで走りだした。
走っている間も、警報はなり続け俺がロビーに到着し、部下の何人かがさらに息を切らせてロビーに入ってきたところで、ロビーの扉が閉まった。
「お、おい!まだ通路には人がいるんだぞ!」
そんな俺の声は伝わらず、ロビーの扉の外で必死に扉を叩いている部下を無視して、連絡通路が離れた。
その瞬間、通路にいた部下たちは俺の目の前で第七宇宙港内へ飛ばされ、その勢いのまま宇宙へと投げ出されていった……。
「……クソッ」
俺はそう呟くと、生き残った部下を連れて、俺たちの宇宙船が止めてある宇宙港へ向かった……。
▽ ▽
エヴァに指示して、出発のための準備をしていると連絡通路を収納すると、第七宇宙港の宇宙船の出入り口へ向けて人が何人か飛ばされていった。
「……カレン、今のって」
『はい、ミャリー様とクラリス様を追いかけていた男たちのようです』
ということは、悪人ということになるのか?
……人が死ぬところは見たくないけど、改めて宇宙って過酷な環境なんだって認識する。今、飛ばされていった人たちはもう助からないだろう。
俺は、気合を入れるため、両頬を叩きエヴァに指示を出す。
「固定アームを切り離して!
宇宙船『アーサー』、第七宇宙港をゆっくり発進!」
『了解!宇宙船『アーサー』、第七宇宙港をゆっくり出ます!
固定アーム解除!微速後退!』
今、宇宙船『アーサー』は、頭から第七宇宙港に突っ込んでいる形だからね。
ここを出るには、お尻からでなければならない。
微速後退で、正解だ。
「カレン、ヘレンにミャリーさんたちを任せておいたけど、ケガはどれくらいで治るかな?」
『ビームガンでの負傷とはいえ、命に別状はありません。
一時間もあれば、完治すると思われます』
「それじゃあ、完治したらブリッジに上がるように連絡をよろしく」
『了解しました、マスター』
これで、次の目的地の場所が分かる。
事前にミャリーさんに聞いておけばよかったんだけど、襲撃されるとは予想してなかったよ。
『シールドレベル、五へ上げます!
それと、衝撃シールドも展開!』
ゆっくり後ろへ進んでいた時、いきなりエヴァが声をあげた。
宣言からして、どうやら敵の宇宙船が待ち構えていたようだ。
「エヴァ、よく気が付いた!
オリビア、宇宙港へ連絡!流れ弾に注意せよ!
カレン!外で待ち構えている宇宙船を調べて!」
『了解しましたわ』
『分かりました、少しお待ちください、マスター』
ゆっくりと第七宇宙港から出ていく宇宙船『アーサー』に向けて、外で待ち構えていた宇宙船、いや、宇宙戦艦が攻撃を仕掛けてきた。
何発も撃ってくる宇宙戦艦。
しかし、何発か命中しているものの、シールドレベル五に阻まれこちらに被害は無い。さらに、衝撃吸収シールドも展開しているため、敵の攻撃の衝撃による船体へのダメージすら皆無だった。
『マスター、宇宙港から了解との連絡ですわ。
それと、致命的な被害が出る前に、ここから離れてくれ、とのお願いもされましたわ』
「まあ、しょうがないよな……」
俺たちが直接の原因ではないと思いたいが、連中はこの宇宙船『アーサー』を狙っているのだ。
ここは、お願いの通り、早くここから離れることだ。
『マスター、相手の宇宙船の正体が分かりました。
『ホーネス』という宇宙海賊団だそうです。
全部で千六百人ほどの、宇宙海賊で惑星間にある衛星基地を主に狙っている宇宙海賊です』
惑星間の衛星基地狙いって、小さい連中だな……。
太陽系でいえば、地球と火星の間に衛星基地を置き、地球から火星に宇宙船を飛ばす場合の小休止基地として使われている場所を主に狙うって……。
『マスター、小物だね!』
『小物ですわね』
『……どうされますか?マスター』
エヴァに笑顔で、小物と言われ、オリビアに、汚物でも見るような目で小物と蔑まれ、無表情で、俺の指示を仰ぐカレン。
……不憫な宇宙海賊だ。
今も、こちらを全力で攻撃しているが、シールドに守られた宇宙船『アーサー』に致命傷は無い。
だからこそ、俺たちはこんなにも冷静なのだが……。
さて、とりあえず、宇宙港からは離れようか……。




