第76話 逃走劇
衛星都市『ダンカー』とのエレベーター通路内の非常用階段。
ここでは、今、銃撃戦の真最中だ。
宇宙港と衛星都市との間にある、エレベーターは七基あり、通常の人を運ぶものが五基。荷物などを運ぶ大型のものが二基ある。
もちろん、点検などで止める場合もあるが、すべてを停止させることはない。
だが、今、すべてのエレベーターが停止して、宇宙港全体に警報が流れていた。
非常階段を駆け上がっていくクラリスとミャリー。
時々踊り場で立ち止まり、下に向かって持っているビームガンを撃ちまくる。
「あいつら、信じられない!
宇宙港に繋がるすべてのエレベーターを強制停止させるなんて!」
「文句言わないで、クラリス!
エレベーターの中から脱出できただけでもよかったじゃない!」
クラリスとミャリーが下に向けて撃つと、今度は下からビームがとんでくる。
そう、あの連中が、追いかけてきているのだ。
しかも、どうやら、衛星都市に待機させていた仲間と共に。
―――バシュッ!
「くっ!危ないわね!もう少しで当たるところじゃない!!」
「ミャリー、素が出てるわよ!」
「今は、そんな場合じゃないでしょ!」
下に向けて撃ち、少ししたら上へと駆け上がる。
これを繰り返し、ようやく出口が見えた。
「ミャリー、宇宙港の出発ロビーが見えて来たわ!」
「なら、これでもくらいなさい!」
そう言って、ミャリーが階段下へ投げたのは、フラッシュ爆弾だ。
強い閃光と大きな音が特徴で、敵を足止めさせるにももってこいのものだ。
そして、二階ほど下で強い閃光と爆発音がする。
それと同時に、男たちの驚きと苦しむ声も聞こえてきた。
「目が!目が!!」
「くそっ!耳がやられた!」
「負傷したものは下がらせろ!おまえたちは上へ行け!」
そんな声を背中で聞きながら、クラリスとミャリーは、ロビーに出てきた。
そこには、避難のために停止しているエレベーターのドア前に人が何人か集まっており、非常階段から入ってきたクラリスとミャリーに注目している。
「クラリス!ロビーに敵は?!」
クラリスはキョロキョロと、辺りを見渡すがこちらを見ている人たちばかりで、狙っている人はいなかった。
「いないみたい!ミャリー、案内をお願い!」
「分かったわ、こっちよ!」
そう言って、クラリスを宇宙船『アーサー』の停泊する場所へ誘導する。
ロビーをかけていくクラリスとミャリーだったが、非常階段から騒がしい連中がちょうど上がってきた。
「どこに行った!」
「おい!早く探し出せ!」
「わかっている!」
そんな声が聞こえてくれば、エレベータードアの前にいた人たちが、騒ぎ始めロビーの端へ逃げ出す。
そして、後ろからの声で、敵が追ってきたことに気付いたクラリスとミャリーも、ロビーにある大きな柱の陰に隠れた。
「もう追いついてきた……」
「しつこいわね、あいつら」
柱の影から、非常階段の入り口を見ると、非常階段からどんどん男たちが雪崩れ込んできた。
しかもそれぞれ、ビームガンを持ち、ロビー全体を見渡している。
「……これじゃあ、見つかるのも時間の問題ね」
「閃光爆弾があるから、それで目をくらませてから、あそこに見える通路へ走って」
クラリスは、ミャリーの指示した通路を確認し、頷く。
腰から閃光爆弾を取り出し、ピンを抜く。
そして、非常階段から出てくる男たちの方へ、閃光爆弾を転がした……。
―――シュバッ!
「何だっ!」
「くっ、眩しいぃ!」
「せ、閃光弾か!」
「くそ、目が!目が!」
光を見ないように柱の陰に隠れてやり過ごしたクラリスとミャリーは、すぐに走り出す!宇宙船『アーサー』の停泊している場所へ続く通路へ。
「ミャリー、行くよ!」
「ええ、走って!!」
▽ ▽
「く~、やられたわ……」
「左手でも撃てるでしょ?
とにかく、今は撃ち続けるのよ!ミャリー!!」
宇宙船『アーサー』はもう目と鼻の先、だけど、ここでこの連絡通路が長いことを計算に入れていなかった。
何とか、宇宙船『アーサー』までもうすぐという連絡通路の中ほどで、私は右腕を撃たれてしまった。
傷は深くない。
だけど、腕がしびれたままで、使い物にならなかった。
クラリスが、私をかばって側でずっと撃ち続けているけどいつまでもつか分からない。
私も、何とか立ち上がろうとするが、うまく立てない。
どうやら、手のしびれが足にまで来ているようだ。
それでも、何とか足や体を動かし、宇宙船『アーサー』へ近づく。
「ミャリー!もう少し!もう少しだから、がんばって!!」
「くっ、ビ、ビームガンに、麻痺、効果が、ある、なん、てっ!」
右手を連絡通路の手すりにかけ、もつれる足で何とか踏ん張り、一歩一歩必死に歩く。
そして、ようやく宇宙船『アーサー』の外扉の中へ逃げ込んだ。
それでも敵は、こちらを撃ってくる。
すでに、連絡通路と宇宙港側の連結部分の所で、銃撃戦となっている。
「く、まだ撃ってくる……」
そう言いつつも、クラリスはビームガンを撃ち続ける。
すると、宇宙船の外扉が急に閉まった。
宇宙船内から外へ向けて閉まる扉だ。
いきなりビームガンで撃っている横から、扉が閉まれば驚きもする。
「あっと、危ない!
もう少しで、扉を撃つところだったわ……」
扉の窓から見える外では、連絡通路をこちらに走ってくる男たちが見える。
その顔は、どこか必死に私とクラリスを捕まえようと躍起になっているようだ。
そして、外扉の前まで来て、外扉を思いっきり叩いている。
しかも、何か罵声をあびせているようだが、私たちには何を言っているのか聞こえない。そのため、クラリスは安心したのか、構えていたビームガンを腰に納めると、私に近づき、立ち上がるために手を貸してくれた。
「ほら、ミャリー、手を貸そう」
「あ、ありがとう、クラリス……」
そうやって友情を確かめていると、内扉が開き、ヘレンが立っていた。
確か、加藤さんのところで働いているアンドロイドだったはず。
カレンたちと違い、主が違うらしい。
「ヘレン?」
『お迎えに上がりました、ミャリー様、クラリス様』
「へ?」
クラリスのマヌケな返事が聞こえた。
それはそうだろう、私を軽々とお姫様抱っこすると、歩き出したのだから……。
「あ、あの、彼女をどこへ……」
『ご安心ください、クラリス様。
マスターより、医務室で治療するように言われております』
「ち、治療をしてくれるのか?いくらかかる?」
『お金はかかりません。マスターの御厚意だと受け取ってくだされば』
そう言うと、再び運ばれていく。
そして、宇宙船内のエレベーターに乗り、医務室へと運ばれ治療された。




