第75話 運搬屋にできること
衛星都市『ダンカー』へ降りるエレベーターに乗って逃げた、クラリスさんとミャリーさんに俺たちは、どうしていいか分からず、とりあえず宇宙船『アーサー』に戻った。
ブリッジに戻った俺とカレンは、みんなにミャリーさんたちのことを相談し、これからどうするかを話し合うことにした。
『……ところで、マスター。
こういう時は、襲われた人たちの関係者も巻き込まれることがあると思います』
ヘレンの言う通り、こういう時は決まって関係者が人質に取られたりするよな。
……てことは、この宇宙船が危ないのか?
「そうだね、エヴァ、連絡通路を出したまま、扉って閉められる?」
『閉めるのは待機室の外扉の方?マスター』
「ああ、鍵もかけてな。
内扉も鍵をかけて閉めていいだろう、誰も訪ねてくる予定無いし……」
『それなら大丈夫だよ!すぐに閉める?』
「ああ、用心のために頼む」
『了解!マスター』
すぐにエヴァは、操縦席に座り操縦パネルを操作し、連絡通路をそのままにして、宇宙船の外扉を閉めた。
操作を確認したエヴァが、報告して一応安心して、再び話し合いだ。
「それで、ミャリーさんとクラリスさんをどうするかなんだけど、カレン、転送装置は使えないかな?」
『マスター、転送装置は、DNA登録をしていないと使えません。
今、転送装置に登録してあるのは、マスターのみです。
私たちは、アンドロイドなので登録できませんから』
そうなのか?
にしても、転送装置ってDNA登録が必要って初めて知ったよ。
転送装置に関しては、SF映画などの知識しかないんだよな……。
今の地球じゃあ、必要ない知識だし。
「それじゃあ、ミャリーさんとクラリスさんを転送することは無理か……」
『やっぱり、二人にはここまで来てもらうしかありませんわね』
オリビアが結論を言う。
確かに、ここまで来てもらうしかないか……。
俺たちで、クラリスさんやミャリーさんを狙っていた男たちを倒すってことは無理だしな……。
「それなら、ミャリーさんに連絡ってできるかな?オリビア」
『でも、ミャリー様、はこちらからの連絡用のツールを持っていましたかしら?』
「クラリスさんなどの仲間と連絡をとっているみたいだから、そういうツールは持っているとは思うけど……」
オリビアは、オペレーター席に座ると、操作パネルを操作し始める。
オリビアの前に三つのモニターが現れ、どこかの地図が表示されていた。
おそらくあれは、衛星都市『ダンカー』の地図だろう。
約五分ほど、操作パネルを操作し、目的の人を見つけることに成功したようだ。
『見つけましたわ、マスター。
ミャリー様とクラリス様の端末ツールを。
……どうやら、今、ミャリー様がどこかに連絡を入れようとしているようです』
すると、モニターの一つの端に赤い警告表示が出る。
オリビアが、少し驚きながら操作パネルを操作すると、その警告表示が出たモニターにミャリーさんが映し出された。
『よかった、これで合っていたみたいね』
通信が繋がり、ホッとするミャリーさんが映し出されている。
オリビアは、俺に振り向き許可を求めてきた。
『マスター、メインモニターへの表示を許可してください』
「分かった、メインに移してくれ」
『分かりましたわ、メインモニターへ映し出します』
オリビアが、操作パネルを操作し、ミャリーさんとの通信映像は、メインモニターへと移った。
「ミャリーさん、ご無事でしたか?」
『加藤さん、ごめんなさい。
待ち合わせをしていたクラリスと合流はできたんだけど、襲撃されてね。
今は衛星都市の『ダンカー』に降りているのよ』
やっぱり、エレベーターに乗って逃げたのか。
「それにしても、よくこちらの連絡先を知っていましたね」
『これでも、チェックしているところはチェックしているのよ?
いざという時のために、知っておいた方がいいものは調べてあるわよ』
確かに、しっかりしているよ、ミャリーさんは。
「それで、どうしますか?
俺としては、この宇宙船まで来てくれるとありがたいんですけど……」
『それは大丈夫、これから向かうから受け入れの準備をお願い。
クラリスも一緒に連れて行くから、お願いね!』
「分かりました。
ところで、襲っていた男たちもあの後エレベーターを降りて行ったみたいなんですが……」
『ええ!今まさに、襲われているわよ!』
ミャリーさんの後ろに、ビームの光がいくつか飛んでいる。
それに、破砕音や誰か男の怒号や、クラリスさんと思われる怒号も飛んでいた。
『ミャリー!連絡できたなら、すぐに、移動するよ!』
『分かったわ!
それじゃあ、加藤さん、また後で!』
そう言うと、通信が切れたのかモニターが真っ黒になった。
『通信が切れましたわ、マスター』
「ありがとう、オリビア。
どうやらミャリーさんたち、戦闘中だったみたいだね」
戦闘中の通信とは思えないほど、クリアーな音声が届いていた。
地球なら、音割れとかありそうなんだけど、鮮明に聞こえていたよ。
もちろん、映像もだけど。
『マスター、すぐに準備をしましょう。
ミャリー様たちは、戦闘状態のままこの『アーサー』に到着する恐れがあります』
「それなら、エヴァ、シールドシステムは使える?」
『使えるよ、マスター!
レベルは最低の一だけど、ビームガンとかなら防げるよ!』
「連絡通路は使用可能のままで、シールドを張ってくれ」
『了解、マスター!
連絡通路の部分と固定アームを除外して、シールドレベル一、展開!』
操縦席に座って、操作パネルでシールドを展開させる。
最低のレベル一になったのは、停泊中だからだろう。
それと、固定アームのことを忘れていたけど、エヴァが気付いて除外してくれた。
もし、気づかずシールドを展開していたら、固定アームが強制的に外れてしまうところだった……。
この後は、宇宙港の管理局に連絡を入れて、出発のための手続きを行っておく。
宇宙港では、宇宙船の緊急発進はめずらしくなく、スムーズに発進手続きが終わった。
後は、ミャリーさんとクラリスさんを待つだけ……。
「エヴァ、連絡通路の外扉は開けておいて、内扉は閉めたままでいいから」
『了解、マスター!』
そうそう、扉を開けておかないと、ミャリーさんとクラリスさんが入ってこられないよね。忘れるところだった……。
そして、待つこと一時間後、宇宙港全体に警報が鳴り響く。
オリビアに、宇宙港の発着ロビーの中をモニターに映してもらうと、非常階段付近で、ビームガンによる銃撃戦が始まっていた。
非常階段は、エレベーターホールとは反対の場所にあり、俺が飲み物を買いに行った店の近くだ。
幸い、発着ロビーに人はまばらだったらしく、すぐに避難が出来ていた。
「……あ、ミャリーさんとクラリスさんだ!
本当に戦闘中だよ……」
『マスター、私たちもお二人の援護に出ますか?』
カレンが、すごいことを言ってきた。
俺はビームガンはおろか、銃も撃ったことないのに援護なんて無理だ。
「いや、二人が来るのを待った方がいい。
それに、この宇宙船に武器なんて、積んでなかっただろ?」
『……そういえば、そうでしたね。
すみません、マスター。どうにか助けようと考えていたら、援護しかないと思い……』
カレンでも、気持ちが先走ってしまうことがあるんだな……。
とにかく、今は、二人の無事を祈るしかない……。




