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就職先は宇宙船の艦長さん  作者: 光晴さん
惑星『キュテル』~惑星『ハーベン』へ

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第66話 後始末




惑星『ハーベン』の衛星『モルー』にある専用宇宙船ドックに、惑星『キュテル』から運んできた宇宙客船を運び入れると、俺たち宇宙運搬会社の仕事は終了だ。


後は、パトリシアさんが目を覚ませば、と思っていると、ブリッジにパトリシアさんとリチャード皇子が入ってきた。

もちろん、ヘレンとパトリシアさんの護衛であるメイルさんたちを連れて。


「パトリシアさん、目を覚ましたんですね?」

「はい、リチャード様のおかげでこうして目を覚ますことができました。

ご迷惑をおかけして、申し訳ございません」


パトリシアさんは、頭を下げて謝罪する。

そこへリチャードさんが声をかけてきた。


「君が宇宙運搬会社『ショルフダール』の社員だな?」

「はい、モニター越しにご挨拶させてもらいました加藤です。

リチャードさんは、パトリシアさんをお迎えに来たのでしょう?」


俺が、モニター越しに対応した人物だと知って、驚くリチャードさん。

どうやら、彼の頭の中にはパトリシアさんの事しかなかったみたいだな……。


「それは失礼しました。

戦闘に巻き込まれたと連絡があり、すぐに迎えに行こうとしたのですが準備が間に合わず駆けつけた時にはすでに戦闘は終わっていたので、もしかしてパトリシアの身に何か、と思い……」


恥ずかしそうに、告白するリチャード皇子。

どうやら、本気でパトリシアさんのことを思っているようだ。

でも、前々から知っていたのかな?パトリシアさんのこと。


「……ところで、自分の船に移動されるのですか?」

「ん?あ、はい、私はパトリシアを迎えに来たので、このまま連れて行きます。

加藤殿、改めて今回の運搬、惑星『キュテル』と『ハーベン』を代表して、お礼を述べたい。

本当に、ありがとう」


そう言うと、リチャード皇子は、頭を下げる。

周りのパトリシアさんの護衛たちは驚いていたが、パトリシアさんも同じように頭を下げたことで、みんなで俺に頭を下げてお礼を言った。


「こちらこそ、『ショルフダール』をご利用いただき、ありがとうございました」


と言って笑顔で一礼し、お礼を言っておいた。

パトリシアさんたちは、このままリチャード皇子の乗ってきたシャトルで、惑星『ハーベン』の宇宙船へ乗り込むそうだ。


無論、そこにはノービスさんとブレトさんの二人も同行する。

そうしないと、惑星『ハーベン』に帰れないからね。


これで、ようやくこの依頼も終わりだ。

宇宙客船も届けたし、パトリシアさんたちも届けたからね。




▽    ▽




シャトルの窓から見えるパトリシアさんたちが、こちらに手を振っている。

まあ、見えないかもしれないけど、俺たちもブリッジから手を振って別れた。


これから惑星『キュテル』と『ハーベン』がどうなるかは、分からない。

でも、終戦へ向けて動くことは確かだろう。


二つの惑星の行く末を案じながら、俺たちはブリッジからシャトルを見送る。




「さて、オリビア、亜空間通信でナンシー班長を呼びだせるかな?」

『ちょっと待ってくださいませね……。

……繋がりましたわ、メインモニターに回しますわね』


オリビアが通信パネルを操作すると、ブリッジのメインモニターに女性が映った。

ナンシー班長だ。

なんだか、久しぶりに会ったような懐かしい感じがするな。


「お久しぶりです、ナンシー班長」

『………』

「ん?ナンシー班長?どうしたんですか?」

『………』


返事が返ってこない、それにこっちを向いたまま、微動だにしていない。

何かがおかしいな……。


そう思ってじっと見ていると、ナンシー班長の映像が乱れていき、消えた。

通信が切れたわけじゃない、モニターからナンシー班長だけが消えたのだ。


すると、モニターの外から女性が入ってきた。

それは、ナンシー班長の上司のシャロンさんだ。


そのまま歩いてモニターの中央まで来ると、ナンシー班長が座っていた椅子に座る。

シャロンさんは、笑顔でこちらを見ている……。


「あの、何がどうなって?」

『ああ、済まない加藤さん。

今のは、立体映像のナンシー君だ。私の任せていた仕事が忙しくてね?

今回も間に合いそうにないので、今の映像を用意してみたのだが……使えなかったね』


まだまだだな、と感想をつぶやきながら足を組みなおす。


『さて、今回の依頼、お疲れさま。

どうやら無事届けることができたようだね。評価査定は後でするとして、次の依頼だ。

いいかな?』


俺は少し気になることを、聞いてみる。


「あの、一つ質問があるのですが、よろしいですか?」

『勿論、部下からの質問には真摯に答えるよ?何でも、言ってくれ』

「では、ナンシー班長に任せた仕事というのは……」


シャロンさんは、足を組みなおし少し考えるそぶりを見せて、俺を見る。

そして、ニコリと笑顔になる。


『……そうだね、今回の依頼を無事終わらせたしいいだろう。

ナンシー班長のやっている仕事は、加藤さんが受けた今回の依頼の後始末だ』

「後始末、ですか?」


『そう、今回の依頼は惑星『キュテル』と『ハーベン』の終戦のために、『キュテル』のお姫様を『ハーベン』に届けること。

そのついでに、宇宙客船二隻も届けること、だ。

だが、その途中で『ニバシア』の襲撃を受けた。

『カハル』の援護に助けられ撃退できた、だったよね?』


「……はい」


一体どこまで知っているんだ?

ついさっきまでの出来事が、筒抜けじゃないか?


『フフフ、情報源は内緒よ?

……さて、今回の後始末は惑星『ニバシア』の始末になるのよ』


『ニバシア』の始末?

俺が少し考えていると、シャロンさんが正解を言ってくる。


『考えるまでもないでしょ?

『ニバシア』は、『シールド』を持った宇宙船に攻撃を仕掛けてきたのよ?

しかも、大統領の息子であるレンブレスを殺害してね。

さらに、暗殺部隊なる艦隊を送り込んでいることも発覚したわ。

だから、連邦政府と銀河警察に連絡しておいたの』


「それじゃあ、ナンシー班長の仕事とは……」

『あら、ここまででわかるようなら、運搬会社の社員として合格ね』


なるほど、ナンシー班長の仕事って、惑星『ニバシア』の運搬記録。

それも、全宇宙運搬会社の、か?


「でも、運搬記録なんて他の会社は見せてくれるんでしょうか?」

『そこは大丈夫よ、横流しやネコババを防ぐために連邦政府の運搬記録課という部署で、記録されているのよ。

もちろん閲覧は特別な許可がいるけど、惑星『ニバシア』の実体が分かったからね。

協力的だったわ。

ただ、膨大なデータがあったから、調べるのが大変だったようだけど……』


そこからは、ナンシー班長が無茶な上司の依頼を苦労してこなした想像が浮かんだ。

……今度、何か癒されるデザートでも送ります。

お疲れさまでした、ナンシー班長……。


『でも、ナンシーの苦労も無駄じゃないわよ?

何せ、惑星『ニバシア』の連邦法違反な取引が数多く出てきたんだからね。

今ごろ、連邦の『赤の部隊』が動いたそうだし、銀河警察も、捜査に乗り出したようだから、『ニバシア』の大統領たちもお終いでしょうね……』


……結局、『キュテル』と『ハーベン』の戦争で、一番悪だったのは、『ニバシア』ってことになるのか。

『カハル』は純粋な商人、と言っていいか分からんが終戦には賛成していたしな。



……さて、次の依頼も頑張りますか。








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