第67話 次の運搬は不安だらけ
『さて、それじゃあ次の依頼の話ね。
次は惑星『オーハス』へ向かってほしいの。
そして、そこにある宇宙ステーションで『ミャリー』という女性が待っているから、その人に会うこと。その『ミャリー』って人が今回の依頼者よ。
詳しい依頼内容は、ナンシーの資料に載っているから後で確認してちょうだい』
ミャリーという女性が依頼者ってことは、個人依頼かな?
「あの、今回は個人からの依頼ってことですか?」
『そうよ。
……そういえば、加藤さんは個人依頼をまだしたことなかったわね。
ということは、今回の依頼はナンシーが加藤さんに経験させるための依頼ってことか。
加藤さん、ナンシーの期待に応えて頑張ってね?』
「は、はい、がんばります」
『それじゃあ、詳しい資料は後で送ります。
この依頼が終われば、ナンシーも戻ってくるから頑張って』
そう言うと、シャロンさんは通信を切った。
何というか、すごい人だよなシャロンさんて。
少し呆気にとられていると、後ろからカレンが声をかけてくる。
『マスター、資料が送られてきました。
惑星『オーハス』の座標もしっかりと載っています』
「了解、ありがとうカレン」
そう言って、カレンから資料の載ったタブレットを受けとり今回の仕事に関する資料を読んでいく。
一通り目を通したら、すぐに行動開始だ。
「エヴァ、惑星『オーハス』に向けて発進!
亜空間長距離航行で、十日の距離にあるんだな……」
『了解、マスター。
……惑星『オーハス』の座標確認、入力……完了!
惑星『オーハス』に向けて、出発します!』
操縦パネルを操作し、宇宙船『アーサー』を惑星『オーハス』のある方向へ向けると、亜空間長距離ワープに入った。
▽ ▽
亜空間航行二日目のブリッジ。
相変わらず俺は、ブリッジでナンシー班長の資料を読みふける。
ただ、今回はいつもと違う依頼の内容に、少し困惑していた。
それは、まず個人依頼であると。
今までの依頼は、必ず依頼してきた人の後ろに大きな組織があった。
それは、惑星政府であり、部隊でありだ。
依頼の内容も、大きな事に関係し、さらに宇宙船『アーサー』を使うような大きな荷物を届けるものであった。
しかし、今回は違う……。
そこに、カレンがコーヒーを持って入ってきた。
『マスター、コーヒーをお持ちしました。
一息入れてください』
「ありがとう、カレン」
艦長席の側にある机に資料の入ったタブレットを置くと、カレンの持ってきてくれたコーヒーを一口飲む。
「……今日は、ブラックなんだな」
『砂糖は入れましたよ?
でも、今回の依頼は初めての個人依頼ですから、肩に力が入りすぎていないかと思いましてね』
「……そうか、心配してくれてありがとう」
俺はもう一口コーヒーを飲むと、カップを置き再びタブレットを持って資料を読み始める。
『今回の依頼は個人依頼ですが、そんなに難しい依頼なのですか?』
俺の真剣な表情で、カレンは今回の依頼が難しいのではと、心配しているようだ。
ここは、カレンにも教えておいた方がいいな。
「今回の依頼が個人なのは間違いないよ。
依頼者は、シャロンさんが言っていたとおり『ミャリー』という女性だ。
ミャリーさんは、二十二歳の独身で、髪は金髪、目は赤色。
髪形は腰まで伸ばした髪を、ポニーテールにしているみたい。
服装は………」
俺は、ミャリーさんの全体映像を見て驚いて言葉を失った。
それを心配して、カレンが声をかけてくれる。
『マスター?どうなさいましたか?』
「……ん?ああ、大丈夫。ちょっと驚いただけだよ。
ミャリーさんの服装は、『メイド服姿』だ。
それに、大きめの白いコートをそのメイド服の上に着てフードを被っている、と」
メイド服!
……宇宙ってすごいな、日本じゃあコスプレでぐらいでしかお目にかかれないメイド服が、当たり前のファッションであるんだから。
しかも、着慣れている感が出てすごく違和感がない。
そんなことを考えていると、カレンが、俺の後ろからミャリーさんの映像を見る。
カレンも、その映像を見て少し考えているようだ。
『この方が、宇宙ステーションで待っていらっしゃるのですね?』
「そうらしい。
向こうに着いたら、俺が会いに行って案内しないとね。
今回の依頼は、彼女と彼女の持つあるものを運ぶ依頼みたいだ」
タブレットに映し出される画面を、指でスクロールさせると現れる。
そのあるものという宝石の画像が。
『これは、宝石、ですか?』
「依頼には、宝石とあるけど……こんな宝石、地球じゃ見たことないな」
透き通る青い宝石、しかも中に赤い種のようなものがある。
それが合わさり、美しい宝石になっている。
だけど、宝石とは何かが違う気がするんだよね。
この赤い種が、生きているような感じがある。
『……これって、もしかして……』
「ん?カレンは、これが何だかわかるの?」
『えっと、はい、おそらくですが……。
これは、約三千年前に見つかった『超新星の涙』と言われたものではないかと』
「『超新星の涙』?」
『はい。マスターは、超新星爆発はご存知ですよね?』
「ああ、星が死ぬ時の最後に爆発するっていうあれだろ?」
『少し違いますが、概ねその通りです。
この『超新星の涙』は、その超新星爆発に匹敵するエネルギーを内包しているらしく、発見当初は恐れられたものなのです』
まあ、そんな超エネルギーを内包した物なんか、どう扱っていいのか分からないからな。恐れて当然ではあるな。
『ところが、この『超新星の涙』が、『シールドシステム』と同じテクノロジーで造られていることが、約千年前に分かりました。
それからは、この『超新星の涙』の研究が本格的に始まったのです』
なるほど、『シールドシステム』と同じテクノロジーということは、ちょっとやそっとでは壊れないし影響がないと判断されたのか。
『シールドシステム』の長年の研究が役に立ったということか?
「それで、その研究はうまくいったのか?」
『いいえ、うまくいくどころか内包するエネルギーの取り出し方すら分かっていません。
ですから、今も研究対象としてどこかの研究機関で研究されているはずです』
それなのに、このミャリーさんが持っている……って、まさか、ね。
「いやいや、セキュリティーは万全のはずだ。
ミャリーさんが持っているのは、その『超新星の涙』に似たただの宝石だよ」
『……そうですよね。
もしミャリーさんが持っていたら、連邦法違反ということに……』
こ、これは、ものすごく面倒くさいことに巻き込まれているのではないだろうか?
頭痛がしてきたな……。
「カレン、大丈夫だよね?この依頼……」
『ナンシー様が選ばれたものですから、大丈夫だと思います。
思いますが、不安もありますね……』
……大丈夫だ。
今回は、あまり深く考えるのはやめよう……。




