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就職先は宇宙船の艦長さん  作者: 光晴さん
惑星『クトゥ』へ、そして惑星『地球』へ

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第53話 心配な次の依頼




ニニシアさんとマナルルさんを、無事に送り届けた俺たちは、休暇のため、地球を目指していた。


亜空間航行も、慣れたものである。

ただ、地球から持ってきた食料もほとんど底をつきかけていて、計算しながら食事をとる毎日となっていた。


明日、地球のある宙域に到着するとなった、亜空間航行最後の夜。

俺は、ブリッジの艦長席に座って、次の依頼の資料を読んでいた……。



「……シャロンさん、なんて依頼を新人の俺に回してくるんだ……」


資料を読みながら、俺は頭を抱えていた。

そこへ、カレンがブリッジへ入ってくる。


『マスター、コーヒーをお持ちしました。

あと、これが最後の一杯となります』


とうとう、日本から持ってきた、インスタントコーヒーも終わりか……。

俺は、カレンにお礼を言って、最後の一杯を味わって飲む。


『ところで、どうしましたか?

何やら、頭を押さえていましたが……』

「ああ、次の依頼の資料を読んでいてね?頭痛がしてきたんだよ……」


俺がそう言うと、カレンは、俺の後ろから覗き込むように資料を見る。

……俺の後ろに来るだけで、カレンのいい匂いがするな……。


『どんな依頼なんですか?マスター』


「……ああうん、それがな?

今度の依頼は、シャロンさんが言っていたように『宇宙客船』の運搬、となっているが、本当は別にある」

『別に?』


「ああ、宇宙客船の運搬はカモフラージュで、本当は惑星『キュテル』のお姫様の送迎が目的だ。目的地は惑星『ハーベン』だ」

『マスター、確か、惑星『キュテル』と惑星『ハーベン』は、戦争状態ではなかったですか?』


ほう、さすがカレン。

宇宙の情報もある程度は、知っているんだな。


「よく知っていたな、カレン」

『私、こう見えても最新式のアンドロイドですので』


カレンが、こんなふうに得意げになるのも珍しいな。

まあ、可愛いからいいのだが……。


「……で、『キュテル』と『ハーベン』は、過去のいざこざから戦争をしていたんだが、ここにきて戦争終結を、お互いが言い出したんだ。

まあ100年も戦争をしていれば、なぜ戦争をしていたのかの理由も忘れるというもの。それに、その戦争の原因になった張本人も、もう戦死しているし」


『では、今回の表向きの宇宙客船の運搬は……』

「戦争終結への、第一段階ってやつらしい。

『キュテル』と『ハーベン』が戦争をする前に、『ハーベン』から『キュテル』へ送られた宇宙客船のメンテナンスや修理を目的に休戦を、というやつだろう。

表向きは……」


昔は、お互いの技術交流もあるほど、仲が良かったらしい。

人と人との繋がりもあるようで、戦争の激化で、別れた夫婦もいたとか。


それにしても、どんな理由で、戦争になったのかね?

さすがに、ナンシー班長の資料にも書いてないしな……。


『それで、真の目的は?』

「『キュテル』のお姫様と、『ハーベン』の皇子様の結婚だそうだ。

戦争終結を画策した人たちが、この二人の結婚をきっかけとして交流を始めようと考えたらしい。

そして、以前のような関係になれればと、考えているようだな……」


『なれるでしょうか……』


カレンが、心配そうな顔になる。

……まあ、答えは決まっている。


「お互いの努力が必要だろうな……。

戦争が終わったところで、怨む心は変わらないだろう。

それよりも、明日へ生きることを考え努力すれば、戦争の記憶を歴史へと変えることもできる。

いがみ合ってばかりでは、何も解決しないからな……」


『マスター、実感がこもっているように感じましたが?』

「ま、地球もまだまだだからな……」


日本の周りは特にな。

憎むばかりで、何も解決にならない。感情的になるのは、本人だけにしろと言いたいね。

経験してない人が、特にうるさいからな……。


まあ、ここで愚痴ってもしょうがない。

今は、依頼の話だ……。



『戦争終結、うまくいくといいですね』

「『キュテル』と『ハーベン』は、前向きに考えているようなんだが、このことに反発しているところがあるんだよ」

『戦争が終わることに、ですか?』


「それが、この二つを支援してきた、惑星『ニバシア』と惑星『カハル』だ。

どちらも軍需産業でのし上がってきた惑星だ。

『ニバシア』の政府は、例の惑星『シンガー』へ技術提供だけではなく、軍需品も提供していたらしい。

そして、『カハル』は、『ニバシア』のライバルといったところか」


この二惑星政府は、兵器などを宇宙海賊へも売っているのだから、金のためならというやつなのかもな。

連邦政府が、この惑星を監視対象のみとしているのも、先の惑星『シンガー』での戦闘でもあきらかだけど、まだまだ脅威になっていないかららしい。


……しかし、ナンシー班長、こんなことまで調べたのか……。

調査能力が、ずば抜けてないか?


で、『キュテル』と『ハーベン』のお姫様、皇子様による結婚を、どこからか聞きつけ、邪魔をしようと画策しているとか。

何なら、二人の暗殺も……。


まあ、そんな黒い噂を聞いて、計画を早めたようだ。

まずは、昔の宇宙客船の修理などから始めていくつもりが、一気に婚約か結婚まで行ってしまおう、てことらしい。


『でも、何故マスターにそのような依頼が?』

「たぶん、新人だからだろうね。

新人の運搬社員が、宇宙客船の運搬は任せられても、お姫様の送迎はないだろうとの予想からじゃないかな?」


『……確かに、そんな大事な裏があるなら、ベテランの社員に任せますよね。

お姫様のお相手とか、マナーとか知っていないと……』

「そういうことだ」


読めば読むほど、こんな依頼が何故俺に来るのか、はなはだ疑問である。

ベテランの社員でも、新人のふりはできるだろうし……。




▽    ▽




次の日、地球に到着した俺は、次の依頼の事なんか忘れて日本で買い物を楽しんでいた。


そういえば、買い物をしていて気が付いたんだが、日本はいつから電子マネー化が進み始めたんだ?

宇宙で過ごしていると、ほんと浦島太郎状態になるな……。


俺の知らないアニメや映画が発売されているし、4kだの8kだの5Gだの。

ゲームも新しい奴がかなり出ているな……。


とりあえず、気になるものは片っ端から購入しておいた。

もちろん、食料や飲料、さらにレシピ本も購入。

そして、宇宙でのんびりと休暇を過ごし、次の依頼へ出発する。



……あ、家族に連絡するの忘れていたな……。

まあ、電話はできるし、その時でいいか。


こうして俺たちは、地球の宙域から亜空間ワープで旅立っていく。







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