第46話 積み込み作業
惑星『コベルギス』は赤い惑星だった。
遠目に確認しただけだが、珍しい惑星だ。俺の知る限り、知的生命体がいる惑星はそのほとんどが青か緑の色をしている。
あんなに赤い星は、見たことがない。
そして、惑星『コベルギス』には五つの月が存在し、その一つの月『モルケン』の側に浮かんでるスペースコロニー群の中に、目的の『211』コロニーが存在する。
「……青い月って、きれいだな」
『あの青い月は、氷で覆われているそうですよ、マスター』
「氷?へぇ~」
太陽からそんなに離れているわけでもないのに、氷で覆われている月の『モルケン』。
これぞ、宇宙の神秘なのかもしれないな……。
そんな月を横目に、宇宙船『アーサー』は進み、スペースコロニー『211』へ到着する。
コロニー『211』に、今、二隻の宇宙船が入港しているところだ。
ここは、待たせてもらう間に、宇宙港側に連絡をしておくか。
「オリビア、宇宙港に宇宙運搬会社『ショルフダール』の宇宙船が到着したことを知らせてくれ。
そうすれば、入港した時すぐに支援物資の積み込み作業に入れるから」
『了解しましたわ、マスター』
オペレーターのオリビアが返事をして、すぐに連絡を入れている。
向こうも、俺たちの到着を待っていたようで、すぐに入港許可が下りた。
『マスター、第四宇宙港に入港するように言ってきましたわ』
「了解。エヴァ、今、誘導灯が出てきた宇宙港に入港してくれ」
『了解、マスター!』
二隻の宇宙船が入港しようとしている宇宙港から、少し左にずれた入り口に誘導灯が点滅。どうやら、そこが第四宇宙港らしい。
▽ ▽
「初めまして、今回のプロジェクトを指揮しているエルビー・ドレルと言います。
『ショルフダール』にお願いして、すぐに来てくれるとは……。
今回は、よろしくお願いします」
「いえ、こちらこそご依頼ありがとうございます。
『ショルフダール』所属の加藤と言います。
今回のご依頼、緊急を要すると思ったので、一番近くにいた私が選ばれたみたいなんですよ」
「そうでしたか、こんな大型貨物宇宙船の方が近くで、助かりました」
エルビーさんは、俺に自己紹介と握手を済ませると、俺にソファーに座るようすすめながら、感謝を述べてくる。
今いる、第四宇宙港にある、宇宙船『アーサー』の見えるロビーは、現在使われておらず、話し合いにはもってこいということだ。
エルビーさんの見た目はガッチリとした体格で、まるで軍人のようだが軍属に所属したことはないそうだ。
しかも、この『211』コロニーの管理責任者でもあり、一番偉い人ということになる。
そんな人が、今回の支援に乗り出したのは、連邦大使の人が、幼馴染なのだとか。
連邦政府に知らせた後、エルビーさんに連絡をしたそうだ。
主に愚痴を聞かせるためだとか……。
「まあ、本当は助けてほしそうだったので、私にできる助けといえば、支援物資を送るぐらいですがね?」
「ソ、ソウナンデスカ……」
そんなこと聞かされても、俺にはどう反応したらいいか分からない。
でも、その連邦大使の人って、ここの生まれなのかな……。
「それでですね、支援物資の入ったコンテナが五百近くあるんですが、全部積み込めますかね?」
「コンテナの大きさは分かりますか?」
「え~と……あ、あったあった、こちらのコンテナになります」
エルビーさんが見せてくれた画面には、『ショルフダール』で使われているコンテナの一覧が載っていて、その中の一つを大きく表示する。
縦六十メートル、幅二十五メートル、高さ十五メートルの一番大きなコンテナだ。
これが五百近く……。
「十分積めると思います。うちの宇宙船はほとんどが貨物室になっていますから、大丈夫ですよ」
「それは助かります。では、すぐにでも積み込み作業に入りますので」
「はい、こちらも運搬用ロボットを出しますので、よろしくお願いします」
そう言って、お互いもう一度握手をして、エルビーさんは宇宙港のロビーを駆け足で急いでいった。
それを見て、俺はソファの後ろに立って控えていたカレンに指示を出す。
「カレン、すぐに貨物室の運搬用ロボットを起動させて、手伝うように連絡を。
今回は、オリビアとヘレンに任せようと思うけど、どうかな?」
『はい、それで大丈夫と思います。
ただ、今回載せるコンテナは大型のもの、如何に『アーサー』の貨物室が広くても五百近くも積み込めるでしょうか?』
まあ、確かにね。
宇宙船『アーサー』の大部分は貨物室になっている。
その長さは、全長三キロの三分の二の二キロ半。
横幅も五百から六百メートルだ。
外壁と内壁の幅、そのほかのいろいろなものを引いても、十分積み込めると俺は予想した。
大型コンテナを縦に三つから四つ積み上げれば、十分入るだろう。
ここは宇宙空間だ、重さは考える必要はない。
この宇宙船『アーサー』は大気圏突入能力は無いし、重力下での航行能力もない。
今回の目的地は、避難しているコロニーなのだから、大丈夫だろう。
「まあ、大丈夫だよ。
コンテナは縦に積んでも自重でつぶれることはない。
そもそも、そんなにやわなコンテナじゃないだろ?』
『了解しました、マスター』
▽ ▽
俺とカレンが、ブリッジに戻ると、そこにはエヴァとニニシアさんとマナルルさんの三人がモニターで積み込み状況を見ていた。
「ただいま」
『ただいま戻りました』
『お帰り!』
「お帰りなさい」
「お帰りなさいませ」
俺の挨拶に返事をするときだけ、俺たちの方に顔を向けたが、すぐにモニターに顔を戻す。
何かあるのかな?と俺とカレンも、エヴァの見ているモニターの画面を見ると、大きなコンテナが次々と運ばれてくる映像だ。
運搬ロボットたちが、フル回転で運び入れ、そして積み上げ固定していく。
また再び、貨物室から出て、大きなコンテナを運び入れてくる。
そんなことの繰り返し。
オリビアとヘレンは、そんな運搬ロボに細かな指示を出し、コンテナの数や積み上げた後の固定のチェックなどをしている。
「……面白い?積み込みの光景は」
『面白いよ、マスター。
でも、今回のコンテナは、今までの中で一番大きいね?』
「支援物資だからね。
それに、ほら、色分けされているコンテナがあるだろ?
青いのが冷蔵用コンテナ、赤いのが生活必需品と色分けして分かりやすくもしているんだよ」
エヴァは感心しているが、初めて見たんだろう。
まあ、ここまで大型のコンテナにならないと色分けってしないんだよな。
今回は支援物資だ。中身が何が入っているか分かるように、コロニー『211』側で色分けしたそうで、普通は色分けはしていない。
何故なら、ドロボーに狙われるからだ。
コンテナの中身が分かればドロボーに狙われやすい。
特に宇宙海賊に襲われて、コンテナを強奪されるときなんて、いい目印だ。
今回のように支援物資でもない限り、こんな色分けは運搬側が許可しないだろうな……。
そして、それから三時間後、すべてのコンテナを積み込んだ……。




