第45話 現状の確認
ナンシー班長への報告と、次の依頼の話は終わった。
次は、援助物資の配達だ。
まずは、載せる援助物資を取りにいかなくてはいけない。
「エヴァ、惑星『コベルギス』のスペースコロニー『211』へ向かってくれ」
『了解、マスター!
……座標確認、亜空間長距離ワープで発進!』
宇宙船『アーサー』のブリッジの艦長席から、パイロット席に座るエヴァに指示を出す。そして、エヴァが亜空間長距離ワープに入った。
▽ ▽
ブリッジからの景色が、宇宙空間から光のトンネルへと変わると、すぐにニニシアさんとマナルルさんがブリッジに入ってきた。
「ご苦労様、ニニシアさん、マナルルさん」
「……ありがとう」
ニニシアさんが、小さな声で、俺にお礼を言ってきた。
多分ミアって子との別れの事だろう。
「そのミアってことは、再会を約束しましたか?」
「ええ、必ず会おう、ってね……」
「そうですか」
俺は笑顔で、ニニシアさんに答えた。
ニニシアさんは照れ隠しにそっぽを向き、マナルルさんはそんなニニシアさんの態度に苦笑いだった。
「と、ところで、次の仕事が入ったの?」
「ええ、次は支援物資の運搬です。
惑星『コベルギス』にあるスペースコロニー『211』から、支援物資を乗せて、惑星『シンガー』の避難民たちを受け入れているコロニーへ運ぶ仕事です。
時間がありませんからね、ナンシー班長から依頼を聞いて、すぐに行動に移したわけです」
「支援物資って、その惑星『シンガー』で何かあったんですか?」
マナルルさんが、気になったのか俺に質問してくる。
ニニシアさんも聞きたそうだ。
「小惑星の衝突です」
「しょ、小惑星って……」
「惑星『シンガー』の地表に激突し、数億トンの土砂が巻き上げられ衝突から十日経っているそうですが、今も惑星全体をその巻き上げられた土砂が覆って、日の光が地表に届かないそうです」
「そ、そんな……」
マナルルさんもニニシアさんも驚きで、声も出ないようだけど、これって地球でいえば恐竜絶滅時の様子らしいんだよね。
これから何年も日の光が地表を照らすことはないとか、氷河期並みの極寒の寒さに襲われるとか……。
惑星『シンガー』に住んでいた人は、ある程度救出されるけど、生態系は変わることになるんだろうな。
地球で、恐竜から変わったように……。
「惑星『シンガー』は、宇宙とかかわりはなかったのか?
いや、こうして支援物資が運ばれるんだから、かかわりはあったんでしょ?」
「ええ、連邦政府から大使が派遣されるほど、交流はあったようですよ。
ただ、現政府になってからは連邦政府とは距離を置いていたみたいですね」
「距離を?連邦の大使が派遣されているのに?」
「ナンシー班長の資料によれば、連邦からの干渉を現政府は嫌っていたようで、それで距離を置いていたそうです。
ただ、反政府の勢力が連邦寄りで、そこと争っていたそうですね。
さらに、現政府のやり方に反発した勢力も存在したそうで、そことは小競り合いが絶えなかったとか」
つまり、惑星『シンガー』は内輪で揉めていたってことだ。
現政府と反政府、そして敵対勢力で。
ナンシー班長の資料で、今はもう戦争状態になっているとあるから、気をつけないと巻き込まれるな……。
「もしかして、小惑星衝突の回避や迎撃の時も揉めていたの?」
「みたいですよ、お互いがお互いの足を引っ張り合い、結果衝突したとか」
「バ、バカじゃないですか!
いくら揉めていたとしても、惑星全体の危機です。
揉めている場合じゃないでしょうに……」
そうなんだよね、普通なら、一致団結して事にあたったはずなんだけど。
惑星『シンガー』の権力者は、そうはならなかった、というわけだ。
「それじゃあ、今惑星『シンガー』からの避難を指揮しているのは……」
「連邦大使の人みたい。
その人が、見かねて避難を指示しているそうだよ」
「現政府とかは……」
そいつらは、現在戦争中だそうだ。
現政府軍と反政府軍で戦い、さらにもう一つ小規模ながらの勢力が、ちょっかいを出して戦っているらしい。
現政府を打倒し、新政府をつくって惑星『シンガー』を立て直すのだとか。
一体、どこを見て戦争なんてしているんだろうね、こんな時に……。
ニニシアさんもマナルルさんも頭を抱えちゃったよ。
まあしょうがないよな……。
「でも、惑星『シンガー』の人達は傷ついているから、戦争なんてできないですよね?人手はどこから調達をしているんですか?」
マナルルがいい質問をしてきた。
戦争をするには、戦力がいる。人を集めて兵士に……。
まあ、それはこの宇宙では通用しない考え方らしい。
「ナンシー班長の資料だと、戦力はロボットを使っているそうだ。
疑似人格を形成して、自軍の戦力とする。
特に、ちょっかいをかけている第三勢力なんかが積極的に投入しているらしい。
現政府軍も反政府軍も、ロボットを導入しているから、まるでゲームだよ……」
「……そんなゲームに、傷ついている人々を巻き込むなんて……」
ニニシアさんが、拳を握りしめながら怒っている。
怒りは分かるんだけど、俺たちにはどうすることもできないのが現実なんだよね。
「ニニシアさん、怒りはわかるけど俺たちにはどうすることもできませんよ?」
「……そ、そうよね、私たちは運搬屋。
戦争を止める力も権力もないんだったわね……」
「まあ、連邦大使から連邦政府に働きかけているようですから、介入があるでしょう。それまでは、私たちの仕事をするだけですよ」
「……はあ、運搬屋ってもっと気楽なものだと思っていたんだけどな……」
ニニシアさん、それは認識不足ってもんですよ。
まあ、俺も人のこと言えませんけどね。
宇宙で運搬業をするってなって、うれしかった覚えがありますよ。
この仕事のできる範囲ってやつを深く考えずにね……。
「それで、惑星『コベルギス』のスペースコロニーまで、何日かかるの?」
『そこは、明日のお昼頃到着します。
支援物資の搬入に少し時間がかかりますが、その日の夕方ぐらいには出立できる予定です』
俺の後ろにいたカレンが、時間を答えてくれる。
惑星『コベルギス』から、惑星『シンガー』までは亜空間長距離ワープで約三日。
ただ、戦闘宙域が存在しているから、そこを避けるとなると、ワープアウトから一日見た方がいいかな。
安全に、避難している人たちがいるスペースコロニーにたどり着かないとね……。




