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就職先は宇宙船の艦長さん  作者: 光晴さん
中継基地『ブローグ』~惑星『ケルナー』へ

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第44話 投下後と次の依頼




大気圏突入した投下用コンテナは、北半球にある大陸の一つに落下した。

そこは、近くに村がありミアが保護された森の側の草原だ。


パラシュートと逆噴射で、安全に投下用コンテナが地面に降りると、少しだけ側面の扉が開き中を満たしていた水と再生医療に使われる液体が、少しだけ開いた隙間から勢いよく流れ出る。


そして、五分ほどするとコンテナの中で気を失っていたミアが起き上がった。


「ここ……どこ?」


周りを見渡すも、コンテナの中としか分からない。

少しだけ開いている隙間から外を見ると、草原が広がり森が見えた。


「……草原に、森?」


ミアは起き上がり、外に出ようと扉に手をかけたところで自分の姿に気付いた。

今、自分は素っ裸だということに……。


すぐに、何かないかとコンテナの中を探すと、コンテナの天井に厳重に括り付けられたトランクを発見する。

ミアは、すぐにそのトランクを外し、床に置いて開けた。


「……これって、服に鞄に……手紙?」


ミアは手紙を手に取り、読んでみる。



―――ミア、この手紙を読んでいるということは、無事地上に降りたんだな。

ミアをあの森から保護してはや十年。

魔法が使えるようになりたい、という願いはようやくかなえることができたと思う。


魔法は、もう使ってみたか?

この手紙を読んでいるということは、まだなんだろう。

この手紙と同じトランクに入っている服や鞄は、私たちからのプレゼントだ。


ぜひ、使ってやってくれ。

使ってくれないと、キニーやドウラたちが悲しむ。

ミアのために、唸りながら買っていたものだからな。


私たちは、この十年という長い年月、触れ合うことなく話だけで過ごしてきたが、みんな大切な娘のように思っている。

また、会うこともできるかもしれない。


お母さんに会いたがっていたね?

今いる場所は、君を保護した森の側の草原だと思う。

そこから君の生まれた町まではすぐの距離だ。

会いに行ってみなさい。


その前に、魔法の練習を忘れるな。


研究員一同より。


PS 絶対、生きていくんだよ?どんなことがあっても!

私とドウラがついているから!絶対会いに行くからね!


キニー




「……う…うぅ……」


ミアは静かに泣いていた。

調整槽の中にずっと浸かっていたけど、退屈はしなかった。

いつも、研究員の誰かがいたし、話しかければ答えてくれる。


不安になることも笑うことも、この十年いろんな事があった。

運ばれるときもそうだ、あそこではニニシアさんとマナルルさんが話し相手になってくれた。そしてお友達に……。




▽    ▽




ひとしきり泣いたミアは、トランクに入っていた服を着て、鞄を下げた。

少し、鞄が大きいがいろいろなものが詰まっている。

主に入っているのは、研究員たちが調べた魔法の使い方の本だ。


「……みんな、ありがとう」


そして、ようやく扉を開け、コンテナの外に出るとミアは感じた。

この世界の風を、光を、そして温かさを……。



「あ、そうだ。このコンテナを回収しておかないと……」


ミアは、コンテナに手を触れて、『収納』と呟く。

すると、今まであった大きな投下用コンテナは、跡形もなく消えた。

あるのは、投下用コンテナが落ちた形跡のみ。


「……すごいこれ、確か『亜空間コンテナ』だっけ?

魔法世界でもないのに、こんなものを発明するケニーたち宇宙に住む人たちはすごいよ」


そう言いながら、ミアは自分の住んでいた町を思い出し歩き出す。

魔法の本を読み、魔法の練習をしながら……。




▽    ▽




惑星『ケルナー』の衛星軌道上で、俺はナンシー班長に報告をしていた。


『ご苦労様でした、加藤さん。

このような依頼を頼んでしまって、本当にごめんなさい……』


おお、上司のナンシー班長が、モニター越しとはいえ肩を落として謝っている。

上司が部下に謝る姿、生で初めて見た……。


「いえ、今回の依頼は、ニニシアさんたちにとって良かったみたいですから。

それに、俺も勉強になりました」

『……そう言ってもらえるなら、助かるわ。

……さて、次の依頼に行くわね?

次の依頼は、物資の運搬をしてもらいます。


受け取る場所は、惑星『コベルキル』のスペースコロニー。

『211』と書かれたコロニーの宇宙港で受け取って。

運ぶ荷は、食料をはじめとした援助物資よ』


「援助物資、ですか?

それなら、俺の宇宙船『アーサー』につめるだけ詰め込んで運びます」

『目的地は、惑星『シンガー』。

二日ほど前、小惑星が落ちた惑星よ。

今は、避難や混乱で大変らしいわ。連邦政府に加盟している文明の発達した惑星だったけど、小惑星の迎撃に失敗して衝突を許してしまった』


文明惑星ってことは、宇宙とも取引があった惑星ってことだ。

しかも連邦に加盟しているってことは、それだけ宇宙進出しているってこと。

それなのに、小惑星の衝突って……。


「……あの、衝突回避に失敗したんですよね?

なんでそんなことに……」


ナンシー班長は、ため息を吐いて答えてくれる。


『政変よ。現政府と敵対勢力とが争っていてね?

しかも、小惑星が接近しているさなかにも、争いが絶えず、現政府も敵対勢力も対処をしようとすると必ずどちらかが足を引っ張って邪魔していたそうよ。

結局、何もできずに小惑星は衝突。

甚大な被害が出ているそうよ……』


バ、バカすぎる。

どちらも自分たちのことしか考えていなかったってことか?

それで、甚大な被害が出てたら、意味ないだろうに……。


「それで、救助などはどちらが主体となってしているんですか?」

『連邦大使が主体となってしているわ。

連邦の宇宙船で避難をさせて、スペースコロニーが三つほど協力をして受け入れているそうよ』

「現政府と敵対勢力は……」


ナンシー班長は、大きくため息を吐いた。


『戦争しているわ……』

「……え?ホントに?」

『ええ、頭の痛いことにね。

これまで多くのいざこざがあったにしても、小惑星の接近という危機的状況でも協力できない。

それで、これをきにお互いが戦争を始めたのよ。

連邦大使が、呆れていたわ。

人の業、ここに極まれり、って連邦政府に嘆いていたそうよ』


ダメだ、その二つの勢力を助けたいとどうしても思えない。

それよりも、それに巻き込まれて被害に遭っている人たちが可哀そうすぎる。


『加藤さんは、戦闘を経験しているわね?』

「はい、前の宇宙船で、ですが経験しています」

『今回は大丈夫だと思うけど、もし戦闘に巻き込まれそうなときはすぐに逃げること。

加藤さんの宇宙船には、兵器は積まれてないって聞いているわ。

無理をしてまで、物資を届ける必要はないのよ?』


「わ、分かりました。もしもの時は、全力で逃げますから」


……大変な依頼が回ってきたな……。








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