第37話 本来の仕事
惑星『ドールーン』が見える宙域に、大型宇宙戦艦が何隻も停泊している円筒形のスペースコロニーが一基、そこにあった。
そのスペースコロニーこそ、今回の目的地であり、惑星『ドールーン』宙域に展開している宇宙艦隊の基地でもあったのだ。
円筒形スペースコロニーの内側は、人々が暮らしていける生活空間であるが、その前後には大きな宇宙港が存在していた。
スペースコロニーの前方部は、宇宙艦隊の停泊港となっているが、後方部は外との交流に使われている。
つまり、俺たちのような荷物運搬業者などが利用するために、後方部を解放してあるのだ。
そして、今、この後方部の宇宙港で、俺たちは荷下ろしをしていた。
「初めまして、宇宙運搬会社『ショルフダール』の加藤と言います。
この度は当社をご利用、ありがとうございました。
新造の宇宙戦艦をお届けに上がりました」
俺は、宇宙港の中に停泊している一隻の戦艦のブリッジで、挨拶をしている。
一応カレンも秘書として付き添ってくれているが、アンドロイドのため紹介は無い。
「これはご丁寧に。
オニレルド第四大艦隊所属のビラードです。主に宇宙戦艦などの管理を任されています。よろしくお願いします。
いや~、それにしても、災難でしたな~」
ビラードさん、簡単なあいさつの後、今回の宇宙艦族の件を話題に出してきた。
会話の掴みとしては、こんなに話題性のあるものはないだろうな。
「ええ、まあ、私としても初めての宇宙海賊の襲撃でしたからね」
「おや、ということは加藤さんは新人さんということですか?」
「はい、まだ一年未満です」
「そうでしたか。あ、まあどうぞ、お座りください」
ようやく椅子を勧められたので、俺とカレンは座ることができた。
そこからは、宇宙海賊の話題ばかりだ。
どんな宇宙海賊だったのか、とか。
攻撃は大丈夫だったのか、とか。
積み荷の量に関しても聞かれた。
「そういえば、新造の宇宙戦艦なんですが、四隻積まれてましたね。
これは、加藤さんの指示で?」
「いえ、『オニレルド』で積み込む際に、女性の責任者らしき方がすべてこちらで積み込むからと……」
「ふむ……なら、ジュニー君の仕業か。
買取希望の行商人が来ていたが、そのことで手配したってことか……」
何か、ブツブツと言っている。
ビラードさんの中で、何か納得した答えがあったのだろうか?
「あの……」
「ああ、申し訳ない。加藤さんは行商人の方と面識が?」
「えっと、一緒に入港した姉妹ですよね?
ええ、宇宙海賊の襲撃に巻き込まれる前に、少し話をしましたから」
「実はその行商人の姉妹に、加藤さんが運搬された新造の宇宙戦艦の一隻を売却する話があったんですよ。
今、その女性責任者に確認しているところですが、どうやら本当のことらしくてね」
「では、その行商人に売却されるんですか?」
「公的の約束をしているらしく、書類などもそろっていましたのでね。
確認が取れ次第、適正価格で売却となりそうです」
「軍の宇宙戦艦でも、売却される場合があるんですね……」
「いえいえ、本来は無い事です。
今回は特別なコネと、必要な書類がそろっていたからこそでしょう。
また売買できるかといえば、新たに規制が出来て無理でしょうな」
なるほど、あの姉妹は運がよかったのかもな……。
まあでも、宇宙海賊に遭遇したわけだし、運もトントンかもね。
「艦長、積み荷の新造宇宙戦艦四隻、搬出終わりました」
「おう、ご苦労様。
では、加藤さん、今回の配達、本当にご苦労様でした」
「こちらこそ、ご利用ありがとうございました。
これをきに、またのご利用をお待ちしております」
俺と艦長は握手をして別れる。
この後は、例の赤い艦隊の事情聴取だ。
▽ ▽
戦艦のブリッジから出て、繋がっている通路を今度は俺の宇宙船『アーサー』へと戻る。
赤い艦隊から、聴取のために二名の人間が来ているからだ。
そして、『アーサー』のブリッジの向かい側にある艦長室に入ると、赤い艦隊の軍人の男性二名が迎えてくれた。
まずは、二人と握手して挨拶だ。
「初めまして、宇宙運搬会社『ショルフダール』所属の加藤康介です。
こっちは、秘書のカレンです」
「これはご丁寧に、自分は連邦惑星『グトリル』の赤の部隊所属、ニーセルです。
こちらは、部下のミッシルです」
紹介とともに握手をして、地球で買った応接室の革椅子を勧めた。
隊員の二人は、一礼して座る。
軍人とはいえ、なかなか礼儀正しい人たちだ。
「さて、まずは宇宙海賊に襲われた経緯を教えてもらえますか?」
「はい、まずは………」
俺は、この依頼が宇宙海賊に狙われているとの、銀河警察から情報があったことから説明していく。
そして、これを利用しての新人研修のことや対処の仕方などを説明していった。
二人は、ナンシー班長のことは知らなかったが、赤の部隊の隊長が、今回の件で誰かに頼まれたということを言っていたらしいので、その頼んできたのがナンシー班長だろうということになる。
「これは隊長に確認しておくか。
それにしても、反撃はしなかったんですか?」
「あ~、実はこの宇宙船には兵器の類は積んでいないんですよ」
「……それは、何か特別な理由で?」
「いえ、お金がなかっただけです。私はまだ、新人なもので……」
「なるほど、兵器は自己負担でということですか。
なかなか厳しい会社のようですね」
俺たちは、お互い笑いあい、事情聴取はここまでとなった。
「そういえば、あの宇宙海賊は今後どうなるんです?」
「あいつらは、今までどんな船や惑星、もしくはステーションを襲ったかを調べた後、処刑されることになると思います。
この宇宙に刑務所のような場所は存在しません。
罪を犯した場所の法で裁かれ、刑務所に送られるときは、裁かれた場所の刑務所に送られることになります。
惑星ごとに法が違いますからね、統一できるところはしていますが、ほとんどは裁いた惑星に任せています」
なるほどね~、惑星ごとで違うってことか。
宇宙で宇宙海賊を撃退すれば、大半は死ぬだけだからな。
刑務所何かは、必要が無いってことか。
「……と言うことは、惑星をまたいで罪を犯している場合は……」
「その時は、罪を犯した惑星ごとで法の裁きを受けることになりますね。
Aの惑星では懲役刑でも、Bの惑星では死刑ってことはざらですよ」
……まさに宇宙海賊家業は、命懸けだな。
少し雑談をして、赤の艦隊の二人は、帰っていった。
捕縛した宇宙海賊を、赤の艦隊の所属する惑星『グトリル』へ連行して裁くそうだ。
この惑星『ドールーン』に裁く場所がないからというのが理由らしい。
……さて、行商人の姉妹と挨拶できれば挨拶をして帰ろうか。
次の仕事が待っているだろう……。




