第32話 スペースコロニー
スペースコロニー群の中の『41』と円筒の側面に書かれたコロニーに、俺たちは誘導されコロニーの宇宙港に入港した。
全長三キロある宇宙船『アーサー』が、難なく入るコロニーの宇宙港は大きく、物資の搬入のための貨物宇宙船が三隻ほど泊めてあって、積み荷の出し入れがおこなわれている。
その横に、俺の大きな宇宙船が大型貨物室の扉を全開にして泊める。
『はい、ご苦労様です!
宇宙戦艦の搬入はこちらでやりますので、しばらくお待ちください!』
ブリッジのモニターに映る女性から、そう指示される。
ここは、スペースコロニーが丸々宇宙戦艦の製造ドッグになっているらしく、ほとんどの宇宙戦艦はここで受領されるらしい。
ただし、今回のような例外があり、直接現場もしくは前線に運び受領ということもあるのだとか。
そんな時は本来、チームが組まれ、そのチームに操縦させて運ばれるのだが、今回は、そのチームが別の宇宙戦艦の運搬で手が離せなく、さらに、時間がないということで運搬会社に頼むということになったらしい。
今回、俺たちが運ぶ先は、前線ではなく惑星移民のために見つけた惑星『ドールーン』で、護衛を務める宇宙戦艦を届けること。
すでに、受領する予定の乗組員は決まっていて、現地で待っているそうだ。
惑星『ドールーン』に移民も始まっており、すぐに届けてほしいと軍の偉い人に、モニター越しではあるがお願いされた。
「ふぅ~、積み込みを向こうがやってくれるのはいいけど、緊張するな~」
『マスター、後で積み荷のチェックはしておきますね』
「ああ、よろしく頼むよ。
積み方がまずいと、ちょっとした衝撃で傷をつけてしまうからね」
せっかく新造したばかりの宇宙戦艦だ、新品のままで相手に届けたいし。
相手も、新品の方がうれしいと思うからね。
「なあなあコウスケ、惑星『オニなんちゃら』の人達は、そんなに広範囲に勢力を拡大しているの?」
「ん~、そうみたいだよ。ここの惑星『オニレルド』を中心に、五つの惑星に移民しているみたい。
ただ、他の知的生命体との戦争はないようだね……」
「ふ~ん、戦争しないでここまで拡大できるとは、運がいいんだね」
運がいい?それはどうかな。
ナンシー班長の資料によれば、宇宙戦争をしたことがないため、軍の一部で暴走が見られるって記載されている。
すでに、一部は暴走しているんだ。
それが、どんな影響を及ぼすのか分からないんだよ?
……もしかしたら、すでに宇宙連邦法に抵触、なんてこともありえるんだ。
そうなった場合、銀河連邦軍が出張ってきて、粛清、なんてこともありえるらしい。
現に、この資料には、連邦軍に粛清された惑星軍のことが載っていた。
……どんな内容かは、守秘義務のためにいえないけどね……。
▽ ▽
積み込み作業が始まって、二時間が経過し、そろそろ食事にでもしようかってところで、貨物室からの衝撃により宇宙船全体が揺れる。
「!壁にぶつけたのか?!」
『貨物室のモニターを表示しますわ!』
オリビアがパネルを操作し、メインモニターに二十四の映像が映し出される。
そのどれもが、貨物室の中を映し出した映像だ。
そして、そこには、新造の宇宙戦艦が二隻、固定作業に入っていたところへもう一隻の宇宙戦艦が貨物室に入ってきた。
固定作業をする作業員の頭上を、もう一隻の宇宙戦艦が奥まで抵抗なく入り、壁に激突していた……。
どうやら、あの衝撃は、この三隻目の宇宙戦艦が壁に激突した衝撃で、間違いないようだ。
「……原因は、この宇宙戦艦か。
今の映像に切り替えてくれ、オリビア」
『分かりましたわ』
オリビアがパネルを操作すると、貨物室の今の映像に切り替わる。
そこでは、怒号が飛び交い、突っ込んできた三隻目の宇宙戦艦が搬出されていき、この現場の責任者らしき女性のもとに、何人もの作業員が文句を言っている様子が移っていた。
文句を言われている女性は、頭を下げて謝っているみたい。
「ん~、三隻目が入ってきて、宇宙船の貨物室の壁にぶつけたのか……」
『積み込む数を間違えた、というところでしょうか?』
『それはないですわ、あの人たちの会話を聞いているかぎり、三隻目が積み込まれるのは予定していたことみたいですし』
三隻って……。
ナンシー班長からは、二隻って聞いていたんだけどね?
「……もしかして、余裕がありそうだから、三隻目を入れたってところかな?」
『……違いますわね。
会話を聞くと、あちらは、数の指定を受けてないようですわ』
ということは、積み込めるだけ積み込めってことか?
……まあ、重量が変わって宇宙船の速度が落ちるってことはないけど。
なんだか、この依頼、不安になってきたな……。
『マスター、どうしますか?』
「後で、ナンシー班長に報告。宇宙空間であれば、積み荷の重量はあまり関係ないから、向こうの積み込みを邪魔する必要はないでしょ……」
『でも、次からはこの手の依頼は断ることになりそうですわね』
「その辺りは、会社の上が判断するでしょう。
俺たちは、依頼された仕事をきちんとこなせば、評価してくれる人は評価してくれるさ」
「達観しているのね、コウスケって……」
そう言って、ニニシアさんは呆れていた。
それからしばらくして、宇宙戦艦を四隻積み込んで、固定し作業が終了した。
貨物室の壁にぶつけた三隻目は、新しい宇宙戦艦に交換され、積み込まれた。
『お待たせしました、こちらの手違いで、内壁にぶつけてしまい、本当に申し訳ございません。
もし、そのことで何かありましたら、こちらで弁償させていただきますので……』
「分かりました、もし何かありましたら、ご連絡します。
勿論、何も無くてもご報告はしますので」
『はい、よろしくお願いします』
そんなやり取りの後、俺たちはコロニー港から出立し、目的地へ向けて亜空間航行に入る。コロニー港は、俺たちの宇宙船が出ていくときも、何隻か入港しようとしていた。
ここは、活発な活動をしている惑星なんだと、俺は肌で感じた。
『マスター、亜空間長距離ワープに入るよ?』
「ああ、目的地の座標を入力する……。
……よし、目的惑星『ドールーン』へ向けて、発進!」
『了解!目的惑星『ドールーン』へ向けて、亜空間長距離ワープ!』
宇宙船『アーサー』は、亜空間長距離ワープをして、すぐにスペースコロニーから見えなくなる……。
その光景を見ていた、女性責任者は、頭を下げるのだった。




