第30話 惑星『オニレルド』へ向けて
亜空間長距離航行、二十日目。
宇宙船『アーサー』のブリッジには、俺を含め乗組員全員がそろっていた。
もうすぐ、目的地の惑星『スライブ』に到着する。
『マスター、時間だよ!』
「よし、亜空間長距離ワープを停止して通常空間に移行!」
『了解!ワープアウトまで、5……4……3……2……1……0!
ワープアウト!』
エヴァが操縦席で操作すると、ブリッジから見える景色が変わっていく。
亜空間航行の景色である、光のトンネルから光の線に変わり、そして、通常の宇宙空間に変わっていった。
通常の宇宙空間に変わると、すぐにオリビアが宇宙船『アーサー』の周りの索敵を行う。こうすることで、もし何か障害物があってもすぐに対処できるのだ。
『ワープアウト完了!船体に異常なし!』
『こちらも索敵、終わりましたわ。本船の周りに異常なしですわ』
「それじゃあ、惑星『スライブ』の宇宙ステーションにいる、ミュージーさんと連絡を取ってくれ」
『了解ですわ』
ようやく目的地に着いたようだ。
これで、ミュージーさんに積み荷を渡して、次の目的地へ行くことができる。
次はいよいよ、宇宙海賊体験か……。
次の依頼のことを考えていると、オリビアが声をかけてくる。
『マスター、ミュージー様と連絡が付きましたわ。
宇宙ステーションの第3宇宙港に入ってくれ、とのことですわ』
「よし、エヴァ、宇宙ステーションの第3宇宙港へ入ってくれ」
『……この、モニターに映ってる誘導灯に従えばいいの?』
「ああ、そうみたいだな」
『了解!』
操縦席で、宇宙船『アーサー』を操作して、誘導灯の指示に従い第3宇宙港に入ることができた。
そして、すぐに通路がドッキングし、貨物室への搬入口もドッキングをした。
「ニニシアさん、マナルルさん、お二人はお会いになりますか?」
「ミュージーとか?会うと、そこでこの体験入社とやらが終わりそうな気がするな。だから、会わずにここにおる」
「わ、私も、そうします……」
ふむ、結構鋭いな。これが女の勘というやつか?
……それにしても、二人が座っている場所は、オリビアと同じオペレーターが座る場所。目の前の機械の操作なんてできないんですから、あちこち触らないようにね。
とりあえず、俺とカレンが下りてミュージーさんと会うことにした。
ニニシアさんとマナルルさんのこと、報告しておかないとな……。
▽ ▽
第3宇宙港にあるロビー。
ここにミュージーさんが、待っていてくれた。
「お久しぶりで、ミュージーさん。宇宙運搬会社『ショルフダール』をまたご利用下さって、ありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ。身内がお世話になってしまって……」
そう二人で握手しながら、俺はお礼をミュージーさんは謝っていた。
謝ることはないのに……。悪いのは、あの周りを振り回しているニニシアさんの方なんだから。
「それよりも、加藤さん。宇宙船、新しくしたんですか?」
「ええ、前の宇宙船、戦闘に巻き込まれてベコベコになりましたんでね。
修理するより、新しい方が安いとのことでしたので」
「ほ~、なるほど」
ロビーから大きな窓越しに、俺の新型宇宙船『アーサー』を見下ろすミュージーさん。どんな宇宙船なのか、興味津々みたいだ。
「……乗ってみますか?」
「いいんですか?!ぜひ、おねが……い……」
そこに現れたのは、ミュージーさんの秘書官をしているササナーさんだ。
その姿を見て、ミュージーさんは見る見る消沈し、諦めたようだ。
「ハルド主任、積み荷の搬入と確認が終わりました」
「そうですか……早かったですね?」
「コンテナに積み込まれていた遺跡の出土品の量が、少なかったですから」
……確かに、少なかったよな。
おそらく、ニニシアさんをどうにかするというのが目的だったんだろう。
食事の度に、機嫌が悪くなっていたそうだし……。
「加藤さん、あの新しい宇宙船の案内はまた今度みたいです……」
「ああ、はい。ではニニシアさんたちをお返しに来た時にでも」
「おお、よろしくお願いしますね!」
もう一度握手をして、俺たちは別れた。
▽ ▽
『マスター、楽しそうですね』
「ん?分かるか?」
『はい、顔が緩んでいますから』
宇宙船『アーサー』の外壁を閉めながら、カレンが質問してきた。
どうやら、俺が嬉しそうに作業しているのが不思議だったらしい。
外壁の密閉扉を閉めて、宇宙船の中に入ると、宇宙港側から出ていた通路が宇宙船から離れていく。
宇宙港側にしまわれているのだ。
俺とカレンは、宇宙船の中の通路をブリッジへ向かう。
さらに、その間には、貨物室と宇宙港側の搬入口を繋いでいた通路も離れて、宇宙港側にしまわれていく。
勿論、貨物室の扉が閉まってから、通路が離れていくわけだけども。
「みんな、ただいま」
『ただいま戻りました』
俺とカレンが、ブリッジに入るなりすぐに挨拶をすると、エヴァとオリビアとヘレンがすぐに挨拶を返してくれて、ニニシアさんとマナルルさんは、その後挨拶してくれる。
『お帰り!』
『お帰りなさいませ』
『お帰りなさいですわ、マスター』
「おかえり~」
「お帰りなさい」
俺が艦長席に座ると、すぐにオリビアから連絡を知らされる。
どうやら、ナンシー班長からだ。
『読みますわよ。
惑星『スライブ』への運搬、ご苦労様でした。先に話した通り、次の依頼先へ向かって下さい。現在会議中につき、連絡のみで御免なさい。だそうですわ』
ナンシー班長にも、会議とかあるんだな。
上から回ってきた依頼を割り振っているだけではないのか……。
そんなことを考えてしまった俺に、後ろからカレンがタブレットを渡してくれる。
おそらく、次の運搬依頼の資料だろう。
「オリビア、了解、と連絡を頼む。
エヴァ、次の目的地は、惑星『オニレルド』だ。今座標を入力する……」
『……座標確認したよ!亜空間長距離ワープができる場所まで移動!』
エヴァは、宇宙船『アーサー』を操作し、惑星『スライブ』の宇宙ステーションを離れていく。
そして、十分ほど離れると、目的地へ宇宙船の方向を調整する。
『惑星『オニレルド』へ向けて、亜空間長距離ワープ開始!』
エヴァの宣言と同時に、ブリッジからの景色が、宇宙空間から光の線に変わり、光のトンネルへと変わった。
亜空間長距離ワープに突入した証拠だ。
『ワープ成功、目的地まで……何日ぐらい?カレン』
『目的地の惑星『オニレルド』まで、約十日かかる予定よ』
エヴァが質問すると、カレンが答える。
エヴァは、座標は分かっても日数までは分からないか……。
「ねぇねぇ、惑星『オニなんとか』に何しに行くのよ」
「……ニニシアさん、俺たちは宇宙運搬会社。
最初に向かう場所は、荷物を受け取りに行くんですよ。それから、指定のあった場所へ運搬するんです」
「ふむ、ということはその惑星『オニなんとか』へ荷物を取りに行くのね?」
「そういうことです」
うちの会社の仕事について、理解していなかったのか……。
それと、惑星『オニなんとか』じゃなくて『オニレルド』ですよ。
積み荷は、新造した宇宙戦艦二隻。
宇宙海賊に狙われているらしいけど、がんばっていきましょう!




