第28話 新しい依頼が二件
休暇を終えて、宇宙船『アーサー』に戻ってくると、最初に俺を迎えてくれたのは、秘書のカレンだ。
転送装置で、寮の俺の部屋から宇宙船の転送部屋へ転送される。
『お帰りなさい、マスター』
「ただいま、カレン。他のみんなは?」
『みんな、マスターの帰りを待っていましたよ』
そう笑顔で言ってくれる。嬉しいな~。
迎えてくれたカレンと一緒に転送部屋を出ると、エレベーターの前にヘレンがいた。
「ただいま、ヘレン」
『お帰りなさいませ、マスター』
「ヘレンはこんなところで何をしているんだ?」
『マスターを待っておりました』
ヘレンも、そう笑顔で言ってくれた。
ヘレンは、雇ったアンドロイドだ。俺のことをマスターと呼んでくれるようになるとは、距離が縮んだ証拠かな?
俺は、カレンとヘレンと一緒にエレベーターに乗り、三階上に上がる。
宇宙船『アーサー』のエレベーターは、四回止まる階がある。
上から、ブリッジや居住区のある階層。
次が、貨物室のある階層。ここが一番広い。
次が転送部屋や治療部屋に、身体強化の体を慣らす部屋など、重要な部屋がまとめられている。
そして、最後の階層が、駐車階層だ。
ここは、移動用の乗り物なんかを駐車しておくスペースがあるんだが、今は使っていない。何せ、俺もカレンたちも、この宇宙船『アーサー』を降りることが今のところないからだ。
宇宙船を降りて、惑星の地表を走る乗り物が必要になったら、そのとき考えようということだな。
そんな仕事を、ナンシー班長が回してくれるとは思えないけど……。
俺たち、まだ新人だしな……。
エレベーターを降りて、すぐに居住区へ。
とりあえず、購入してきた荷物を置くためだ。
食品類などは、購入した後その日のうちに、転送装置で転送して、冷蔵室などに保管してもらっている。
それと、家電製品は電圧などのことをオリビアに確認したところ、問題ないとの回答があった。
どうやら、地球の、それも日本の家電が使えるように一部、仕様を変えることができるとかで、購入の許可が下りていた。
俺も、一応その辺りのことは確認済みなのだ。
俺の部屋に、購入してきた家電やゲームなどを置いて、俺はブリッジに行く。
ブリッジの扉が開くと、エヴァとオリビアに歓迎された。
『お帰り、マスター!』
『お帰りなさいですわ、マスター』
「ただいま、エヴァ、オリビア」
全員が、宇宙船『アーサー』のブリッジにそろった。
これから、新しい仕事の依頼がナンシー班長から……班長から……?
「あ!そうだ!」
忘れてた。
ナンシー班長には、休暇が終わったらこちらから連絡するんだった……。
「オリビア、すぐにナンシー班長に連絡を入れてくれ。
休暇が終わりました、とな」
『了解しましたわ』
「みんなも、配置について」
『『『了解』』』
こうして、みんなが自分の席に座る間に、オリビアがナンシー班長に連絡を入れる。すると、すぐに通信が入った。
『マスター、ナンシー班長から通信が入りましたわ。
すぐに、メインモニターに映しますわね』
どうやら、やることは分かっているようで、オリビアはパネルを操作しメインモニターにナンシー班長を映し出した。
『お帰りなさい、加藤さん。休暇はいかがでしたか?』
「はい、ゆっくりと里帰りとかできました」
『それは結構。でも今日からは、またお仕事頑張ってくださいね?』
「分かりました」
艦長席を立って一礼して、また座る。
その光景をモニター越しにナンシー班長が見て、頷いた。
『では、仕事の話に移りますね?』
「ああ、ちょっと待ってください、ナンシー班長」
『どうしました?』
「実は、休暇中にある噂を耳にしたんです」
『噂、ですか?』
休暇中に聞かれた、例のあの事を聞いておくか。
何もないとしても、会社の方で対策とかうてるはずだろう。
「はい、うちの会社が麻薬の密輸をしているんじゃないかって」
『……それは、地球の日本にある貿易会社のことですか?』
「はい、俺がそこで働いているということになっている貿易会社です」
おや、ナンシー班長が考え込んでいる。
もしかして、ナンシー班長も知らなかったことなのかな?
『……分かりました、そのことは後でこちらから連絡を入れておきましょう。
何かしらの対策を立てるはずです。
加藤さんは、宇宙のお仕事に集中してください?』
「了解しました」
やっぱり、日本の会社は会社で対策を講じるってことか。
まあ、新人の一社員である俺にできることなんてないからな。
後はお任せして、俺は俺の仕事に集中だ。
『では、今回のお仕事についてよろしいですか?』
「はい、お願いします」
そう言うと、俺の斜め後ろからカレンが、タブレットを差し出してきた。
ナンシー班長の資料が転送されてきたようだ。
『今回のお仕事は、前にも行ってもらった惑星『クトゥ』で、遺跡から出た出土品を、惑星『スライブ』へ運ぶ運搬業です。
ミュージーさんとオーベベン博士からの指名依頼となります。
おめでとうございます、加藤さん。
もうリピーターのお客が付くなんて、新記録ですよ?』
ミュージーさんって、惑星『スライブ』の宇宙ステーションで応対してくれた人だよな……。その人から、再び指名依頼。
「ありがとうございます、ナンシー班長」
『この依頼は、現地で詳しいことを聞いて対処してください。まあ、難しい事にはなりませんから大丈夫でしょう。
問題は、この依頼の次の依頼です』
「次の依頼って、もう決まっているんですか?」
『ええ、決まっています。
それに、もうそろそろ経験してもらった方がいいですからね……』
ミュージーさんたちの依頼の次がもう決まっているなんて……。
いや、ナンシー班長は依頼を班の人達に割り振るのが仕事。ということは、次の仕事で俺たちに何かをさせるために割り振ったということか。
「あの、経験とは?」
『宇宙海賊との遭遇と対処の仕方です』
「う、宇宙海賊ですか……」
宇宙海賊。そういえば、今まで遭遇すらしてなかったな。
遭遇しそうな宙域もあったのに、運よく会うこともなかった……。
『まあ、今までは積み荷と宇宙船が原因で、出会うことはなかったんですが』
「積み荷はともかく、宇宙船が原因ですか?」
『ええ、加藤さんが前乗っていた宇宙船は、新人専用の宇宙船なんです。
ですから、積み荷もたいしたものはないと宇宙海賊も分かっていて手を出してこなかったんですよ』
……なるほど、そうだったのか。
それで、安全な航行が出来ていたというわけ……か?
……まあ、戦闘に巻き込まれたことは、今はノーカンだな……。
「あの、それで、宇宙海賊が狙う積み荷とは、どんなものなんですか?」
『新造宇宙戦艦です』
……新しく造った宇宙戦艦を、狙ってくるわけですか。
「……あの、それ貨物室に入るのでしょうか?」
『ええ、入ります。
新造宇宙戦艦二隻は、どちらも全長500メートルありません。
加藤さんの宇宙船は、全長が3キロメートルもありますから、余裕で入れることができるでしょう?』
確かに入りそうだけど、横とか高さは大丈夫なのか?




