第25話 新しい宇宙船
新しい宇宙船に足を踏み込むと、まずは小部屋に入ることになる。
ここは、外の宇宙側になっている気密扉から入り、しっかり外側の気密扉を閉めてから中へ通じる扉を開けて入ることになる、所謂待機部屋だ。
この待機部屋がある事で、中の空気が漏れるのを防ぐわけだな。
今回は、通路を設置してあるので、そんなに神経質に気を使う必要もないので自動扉のようにしてある。
中に入ろうと中へ通じる扉の前に立てば、自動で開くわけだ。
中へ入ると、通路が左右に分かれている。
今回は、新しい宇宙船のブリッジから見て右側から入ったので、通路の右がブリッジへと通じる廊下で、左が居住区へと通じる廊下となる。
まずは、ブリッジへ向かう。
右側の廊下を進むと、左へ曲がりすぐのところにエレベーターが設置してある。
これは、下の貨物室へ向かうための直通エレベーターだ。
さらに、そのエレベーターの右隣に、階段も設置されているが、これは非常階段だろう。
そして、さらに廊下進むと、右側に扉があり、その先がブリッジになる。
ブリッジに通じる扉の先には、左に通じる扉がある。
この左に通じる扉の先はが、艦長室になってる。
今回は、艦長室よりブリッジが見てみたいので、ブリッジに入る。
ブリッジに入り、俺は驚いた……。
「……これは、広いブリッジだな」
『このブリッジの収容人数は、十人ですからこれだけ広いのでしょう。
特に、この宇宙船は本来軍用の宇宙船でしたからね』
そうだったな、この宇宙船は軍用で開発されたものだったんだった。
だから、これだけオペレーター席があるのは、索敵と攻撃のためだったのかな?
「……まあ、今は運搬用の宇宙船だから特に人を増やす必要はないか」
『今は、必要ないでしょうね』
よくブリッジを見渡せば、所々まだカバーが付いていたりする。
後で、みんなで外したりしないとな……。
ブリッジからの景色を少し堪能した俺とカレンは、ブリッジを出て廊下を右へ向かう。すると、艦長室の先に、来た時と同じ非常階段へ通じる扉があった。
て、事は、その隣にはやっぱり、下へ降りるためのエレベーターが設置されている。
「カレン、これも貨物室への直行なの?」
『いえ、これは宇宙船の前方への直通エレベーターです。
本来、兵器を積み込んで宇宙船の前方に設置してありますから、そこが故障したりしたときや交換の時、そしてメンテナンスのために使う予定のものです』
なるほど、これは軍が作った宇宙船だから、兵器が本来は積み込んであって当然のこと。しかし、民間の運搬屋が使う宇宙船となれば、兵器が積み込まれるか分からないから一応設置してあるということか……。
まあ、今これを利用することはないな……。
そう思ってさらに廊下を進む。
すると、左への曲がり角が現れ、そこを左に曲がると、入ってきたときと同じ宇宙船の外へと通じる扉が右側にあった。
今は開くことはない。
なぜなら、その先は、宇宙へ通じる気密扉が存在するだけだから。
「それじゃあ、居住区へ行ってみようか」
『はい、マスター』
カレンを伴って、俺たちは廊下進む。
居住区に入ると、まず、扉が現れた。確か、この先はリビングのはずだ。
宇宙船の見取り図、みたいなものをもらって眺めていたから、間違いないだろう。
扉を開け、中に入ると、さすが居住区の中心のリビング。
おそらく、五十畳ぐらいあるんじゃないかってぐらいの大きさと広さだ。
そこから、食堂やキッチン。トイレにお風呂、そしてそれぞれの個室が用意されていた。トイレが三つ、お風呂が二つ、個室にいたっては、十二部屋用意されている。
個室の広さも、それぞれ十畳から二十畳ほどある。
さすがに、それぞれの部屋にトイレはついてなかったが、それでも広かった。
「個室には、それぞれでベッドが付いているんだな……」
『はい、大きさがキングサイズではありますが』
……とりあえず、俺とかヘレンは、自分の荷物を部屋に運んだ。
部屋の広さに比べて、荷物が少なく感じてしまう。
一応、それぞれの部屋を決め、宇宙船『ランスロット』から荷物を新しい宇宙船へ運び込んだ。
片づけなどは、今は後回しで急ぐ。
▽ ▽
小一時間ほどで、引っ越しは終了し先輩に連絡を入れる。
「お待たせしました、ロニー先輩。無事、引っ越しが完了しました」
『お疲れ様、加藤君。
今、ドッグ宇宙艦で、前の宇宙船をけん引するための準備に入っているから、今のうちに登録作業を終わらせよう。
まずは、新しい宇宙船の名前は決まっているかい?』
新しい宇宙船か、出来ればランスロットを継がせたかったが、その名前はやっぱり前の宇宙船の名前だからな。
この新しい宇宙船には、別の名前を付けるべきだよな。
「はい、この宇宙船には『アーサー』となずけようと思います」
『了解、その宇宙船には『アーサー』という名を登録しておこう。
次に艦長だけど、これは加藤君の名前を入れておくとして、次の乗組員の数だけど、どうしようか?』
ん?何故質問してくるんだろう。
「あのロニー先輩、どうするとは?」
『宇宙船の乗組員って、通常は登録しないんだよね。
何せ、増えることも減ることもあるからね。でも、中には最大人数を設定する宇宙船とかがあるんだよ。
で、加藤君は、どうしようかなってね?』
そういえば、ヘレンが加わって増えたんだよな。
そう考えると、登録しない方が増やせるってことか……。
「では、登録は無しでお願いします」
『了解。では次に、兵器の登録はどうしようか?』
「兵器の登録、ですか?」
んん?兵器って運搬業に必要なものなんだろうか?
『どうやらその反応は、この仕事に兵器が必要かどうかわかっていないようだね?』
「兵器、というか武器が必要なんですか?」
『勿論、必要な時もあるんだよ。
特に、今回のナンシー班長からの依頼は、必要だったと思うけどどうなんだい?』
……確かに、あの時攻撃できていれば、敵宇宙戦艦の衝突は避けられたかもしれないな。それに、攻撃の衝撃を受けることもなかったかも……。
『地球には、『攻撃は最大の防御』という言葉があるんだろ?
それを考えれば、武器は必要だったかもしれないね』
「……良く知ってますね、地球の言葉なのに」
『まあね、加藤君が初めての地球からの艦長ではないということだ。
でもまあ、武器をつけるにしてもうちの会社は自腹でつけないといけないから、今は無理だろうけどね』
自腹なのか……。
もしかして、うちの会社ってケ…。
『ケチじゃないよ、加藤君。自主性を重んじるってだけだよ』
「は、はあ……」
『とにかく、今はこれで登録しておくからね。
ドッグ宇宙艦も、けん引できるようになったしこれで私たちは帰還する。
……ああ、ナンシー班長からの伝言だ。
『休暇中に困ったことがあったら、必ず私に連絡してくれ』だそうだ』
……休暇中に何かあるのかな?
そんなことを考えていると、ドッグ宇宙艦がスラスターを点火させ、出発し始める。そして、それを追うようにロニー先輩の宇宙船が、出発した。
『それでは加藤君。また、どこかの宇宙で会おう』
「はい、その時を楽しみにしています!」
そこで通信は切れた。
俺は、新しい宇宙船『アーサー』のブリッジから、ドッグ宇宙艦と宇宙船『ランスロット』に、先輩の乗る宇宙船が見えなくなるまで眺めていた。




