第17話 戦闘に巻き込まれる
惑星『ニプルネル』の宇宙ステーションにある搬出口に直接、宇宙船『ランスロット』の貨物室をつなげて冬眠カプセル五万人分を入れていく。
冬眠カプセルは、100体単位で繋がっており貨物室に入れた後は固定して終わりだ。
それを繰り返し、貨物室にすべての冬眠カプセルを入れた。
『オリビア、五万人分の冬眠カプセル、すべて固定し終わったよ~』
『エヴァ、ご苦労様でしたわ』
『ご苦労も何も、搬入ロボがほとんどやってくれたからね』
オリビアとエヴァが、貨物室との連結通路でタブレットを見ながら確認している。
すると、そこに新たな貨物が運び込まれてきた。
大型のコンテナが三つ、ホバープレートに乗せられ運ばれてくる。
運んできたのは、帽子をかぶった作業員風の男が五人。
「すみません、これも運び入れるように言われてきたんですが……」
その男に対応するオリビア。
『申し訳ないですが、中身は分かりますの?』
「あ、こちらが納品書になります。
急ぎだったみたいで、連絡できなかったとか言ってましたが……」
オリビアが、男が出した納品書を受けとり確認する。
それを、後ろから覗き込むようにエヴァも確認。
納品書は、正式なもので怪しい所はない。
コンテナも、簡易ではあるがスキャンしても爆発物は入ってなかった。
『……いいですわ。エヴァ、搬入ロボを使って搬入させてくださいな』
『了解~』
エヴァは、ポケットから出した小型のパネルを操作して搬入ロボを呼びだし、男達が持ってきたコンテナを運んでいく。
その後をエヴァが、軽い足取りでついて行った。
『……これで、搬入は終わりですわね』
「それじゃあ、俺たちはこれで」
男たち五人は、オリビアに一礼すると宇宙ステーション内へ帰っていった。
オリビアも、連結部分から貨物室に入り、備え付けのパネルを操作して搬入口を閉める。ゴォンゴォンと重い音をたてながら閉まっていく搬入口。
約一分ほどで完全に閉まり、密閉作業をしてから宇宙ステーション側の搬出口を外した。
宇宙ステーション側も、宇宙船『ランスロット』の貨物室の搬入口を閉めると同時に搬出口を閉めていたから、事故につながることはなかった。
そのことを確認すると、オリビアは頷き宇宙船の中へ戻っていく。
▽ ▽
「ジニバ、これでいいんだな?」
「ああ、これであいつらは荷物として目的の星へ運ばれる……」
最後のコンテナを運んできた男たちの一人が、走りながら会話していた。
薄暗い通路を、まるで何かから逃げるように……。
「あいつらを、戦争の道具にして堪るか……」
先頭を走る男の呟きが、今の男たちの思いなのだろう。
次の行動を起こすために、男たちは走る……。
▽ ▽
惑星『ニプルネル』の宇宙ステーションにある会議室を出ると、一人の女性が待機していた。
会議室を俺たちと一緒に出てきたニルーナさんが、その女性に近づく。
「加藤さん、彼女がお願いしたヘレンと言います。
ヘレン、こちらがこれから働く宇宙船の艦長の加藤さんよ」
そう紹介されると、ヘレンさんは俺に一礼した。
『初めまして、ヘレンと申します。
この度は、ニルーナのわがままを聞いていただきありがとうございます。
これから、どうぞよろしくお願いします』
「加藤さん、よろしくお願いします」
今度は、ニルーナさんが頭を下げてお願いしてきた。
俺は苦笑いだ。
「カレン、ヘレンさんに宇宙船の中を案内してやってくれ」
『分かりました、マスター。
ヘレン、ではこちらへ。宇宙船の中を案内します』
……やっぱり呼び捨ての方がいいのかな?
雇ったんだし、その方がいいのか……。
そうこう考えているうちに、カレンはヘレンを宇宙船『ランスロット』に連れて行った。それを、黙って見送るニルーナさん。
「あのニルーナさん」
「はい?」
「ニルーナさんは、これからどうするんですか?
惑星『ニーネル』へ避難しないんですか?」
「勿論、私たち避難計画の責任者や携わった人たちも避難しますよ。
ただ、まだやることが残って…」
―――ビィー、ビィー、ビィー、警告、警告。
―――敵の大部隊がワープアウトしてきました。
―――ここも戦場になります。急ぎ避難してください!
―――繰り返します。
「ニルーナさん、これは?」
「どうやら、敵の攻撃のようです!加藤さん、急いで出発してください!
私たちも、すぐに後を追いますから!」
そう言って、ニルーナさんは、走って宇宙ステーションの奥へ急いだ。
俺はと言うと、勿論走って自分の宇宙船へ急ぐ!
……しかし、運搬会社の社員になったのに、なぜ戦争に巻き込まれるのか……。
▽ ▽
宇宙ステーションの中を一人、自分の宇宙船へ向けて走っていると、宇宙港のロビーで外の様子が見える。
外はまだ、戦闘状態にはなっておらず何隻もの宇宙戦艦が、宇宙ステーションの下方部から出てくるところが見えた。
「あれが、この惑星の宇宙戦艦か……。カッコいいな~」
走りながら、次々と発進していく宇宙戦艦が見える。
そして、俺の宇宙船『ランスロット』へ続く通路が見えた。
後は、その通路を通って宇宙船に入るだけ……。
その時、ロビーの外が一瞬明るくなったかと思うと、次々と光が瞬きだした。
どうやら、戦闘が始まったらしい。
「急げ!急げ!急げ!」
そう言いながら、俺は走り続ける。
自分の宇宙船にたどり着くことだけを考えて……。
そして、ついに俺の宇宙船『ランスロット』の搭乗口の中へ入り、減圧室でホッと一息ついた。
備え付けのパネルを操作し、こちらの宇宙船の扉を閉めると同時に搭乗口側の扉も閉まる。
密封を確認し、連結されていた通路を切り離した。
「はぁ、はぁ、これで、出発、出来る」
俺は、減圧室を出ると、その足でブリッジへと駆け込んだ。
ブリッジに入ると、カレンを始めエヴァにオリビア、ヘレンもいてくれた。
みんな、ブリッジに駆け込んできた俺を見てホッとしている。
「すぐに出発する!冬眠カプセルの積み込み、および固定は終わってる?」
この質問に答えたのはエヴァだ。
『はい、終わったよ!』
「よし、宇宙ステーションとの切り離しは?」
『貨物室、搭乗口、固定アーム、すべて外れていますわ』
オペレーターのオリビアが答えてくれた。
「ヘレンは、オリビアの隣の席に座って」
『はい、分かりました』
そう返事をして、オリビアの隣に開いていた椅子に座る。
そこは索敵を主にするための席だ。
普段は、エヴァやオリビアがやっているので、使っていない席だったりする。
『マスター、大型のコンテナが三つ、搬入されて固定しています』
「カレン、リストになかったものなの?」
左後ろから、A4タブレットを出して俺に見せてくる。
リストにないものを搬入して、大丈夫なのか?
『はい、ですが危険物ではないようです。
それに、急な運搬物らしく事前の納品書が間に合わなかったようです』
「……危険物じゃないなら、大丈夫だろ。
納品書もあるし、このまま目的の惑星『ニーネル』へ運ぶよ」
『分かりました』
「よし、エヴァ、シールドレベルを五へ。
外ではすでに戦闘が始まっている。交戦中の中を突っ切っていくからね!
宇宙船『ランスロット』発進!」
『ランスロット、発進!』
エヴァが俺に続いて宣言すると、宇宙船『ランスロット』は動き出した。
ブリッジの中からも、外の宇宙空間で戦闘がおこなわれているのが確認できる。
いくつもの宇宙戦艦が傷つき、爆発し、沈められていく。
俺たちの宇宙船は、そんな中を進んでいった……。




