第13話 おそらくこれで解決
『マスター、発見しました。
惑星『クトゥ』から左に少し離れたところにいるようです。
向こうもこちらを発見したようで、護衛艦と思われる宇宙船が二隻、動き出しました』
亜空間長距離ワープを抜け、通常宇宙域にて目的の宇宙船を発見するも、カレンが相手側の動きを教えてくれる。
おそらく、ニニシアさんたちの密航のことが知らされているための行動だろう。
「オリビア、向こうの船に連絡してくれ。
宇宙運搬会社『ショルフダール』の宇宙船ランスロットが荷物を運んできました、と」
『了解、こちら……』
これで、こちらの目的はわかるし、ニニシアさんたちもまとめて運んできたと分かってくれるはず……。
『マスター、相手側が通信を求めますわ。回線を回しますか?』
「メインモニターにか?……そうだな、回してくれ」
『了解、回線をメインモニターへ回しますわ』
オリビアがパネルを操作すると、メインモニターが起動し俺たちの前に相手側の様子が映し出された。
中央にいるのは、おそらく向こうの艦長だろう。
そして、少し後ろに引いた両隣にいるどちらかが、ニニシアさんの祖父だろうな。
『初めまして、この探索宇宙船『ホウゴート』の艦長ネムムゴー・キュルツだ。言いにくければ、キュルツ艦長で構わない。
そちらも名乗ってもらおうかな?』
俺は艦長席から立ち上がり、ニニシアさんたちの前に立ち名乗る。
「こちらこそ初めまして、宇宙運搬会社『ショルフダール』の新人社員で、この貨物宇宙船『ランスロット』の艦長もしています加藤康介と言います。
私の呼び方はお任せします」
『それなら、加藤君と呼んでもいいかな?』
「はい、構いません」
『では、君たちの目的をもう一度教えてくれるかな?』
これは確認のためか?それとも、ニニシアさんたちの仲間かもしれないと考えているってことかな?
「私たちは、惑星『スライブ』でミュージー様からお預かりした、十四個の荷物をお届けに参りました。
中身は、食料と生活物資と聞いております」
『……それだけかな?加藤君』
キュルツ艦長の目が少し細くなる。
どうやら、少し疑っているようだな……。俺たちは巻き込まれた側なんだが……。
「はい、それだけです」
『ふむ、では、加藤君の後ろにいる三人について教えてもらえるかな?』
俺はいったん後ろを振り向く。
すると、ニニシアさんたちがそろって頷く。
「はい、彼女たち三人は、密航者です。
それぞれで考え、どうしても会いたい人がいるためここまでついてきたようです」
『……では、その三人はこちらで引き取ろう。構わないかな?』
「はい、お願いします」
『よろしい。では今から案内するための護衛艦がそちらに着く。
その護衛艦の指示に従ってくれ』
「分かりました」
そこで通信は切れた。
ここから先は、俺たち運搬会社の者が関与していい話じゃない。
ニニシアさんたちが、それぞれに解決しなければならない話なのだ。
俺たちが手を出しても、おそらく何もできないだろう。
『マスター、護衛艦が到着したよ』
「おっし、エヴァ、護衛艦の指示に従ってくれ」
『了解です!』
護衛艦は、俺たちの宇宙船の左右について誘導してくれる。
このまま、探査宇宙船まで誘導してくれるだろう。
▽ ▽
―――パァーン!
銃声ではない。平手打ちの音が響き渡ったのだ。
今、俺たちはランスロットから食料や生活物資の入ったコンテナを、運搬ロボットを使って移動させている。
そこには、カレンやオリビアも手伝っている。
エヴァは、ランスロットの点検のために残してきたが、問題はない。
運搬ロボットは優秀であるのだ。
そして、音のした方を見れば、ススーニさんが足にしがみついている女の子に、そっと手を添えもう片方の手で、ススーニさんの目の前に立っている男を睨んでいた。
そう、あの平手打ちの音は、ススーニさんが男を叩いた音なのだ。
『響きましたわね、マスター』
「ああ、ススーニさんたちの会話は聞こえないんだけどね……」
『そして、……向こうも修羅場ですわ』
そう言ったオリビアの視線の先には、ニニシアさんとマナルルさんがお爺さんの前で怒られていた。
……あのお爺さんが、オーベベン博士か。
『オリビアもマスターも、見学なら仕事の後にお願いします』
おっと、こちらも怒られてしまった……。
カレンに注意され、俺たちは仕事に戻る。
『あ』
「ん?」
『あら』
カレンの短い言葉に反応した俺とオリビア。
その視線の先のススーニさんを見ると、男に抱き着かれキスされていた。
……あれ?どうなってんの?
仲直りか?それとも問題解決か??
もやもやが晴れないまま、俺たちは仕事に戻った。
当事者でなく、ただ巻き込まれただけの俺たちに、問題に足を踏み入れることはできない。しかし、ススーニさんと男と女の子と三人で抱き合う姿を見れば、一応問題は解決したのだろう。
「ちょっといいかの?」
仕事に戻ろうとした俺に、話しかけてきた人物がいた。
その声に反応して振り返れば、そこにいたのはオーベベン博士だ。
白髪で、丸眼鏡。典型的な博士顔のオーベベン博士だが、俺より身長がある。
おそらく二メートル超えているだろうな。
「はい、何か私に御用ですか?」
「いや、何、孫娘がしでかしたことに付き合わせてしもうて、すまんかったの」
どうやら、孫の不始末の謝罪に近づいてきたようだ。
「いえ、私どもは目的地に運ぶのが仕事ですから」
「しかし、道中かなりうるさかったじゃろ?孫は、好奇心が旺盛過ぎての、密航までしたほどじゃから……」
「とんでもない、道中はおとなしかったと思いますよ。
本を読んで過ごしていたようですから」
「お主の星の本かの?」
「はい、亜空間長距離ワープの間は、基本暇ですからね。
暇つぶしになるかと思い持ってきていました」
オーベベン博士が、うんうんと頷いている。
何か、関心を引くところあったかな?
「ところで、ニニシアさんたちはどうなるんですか?」
「ん?気になるのか?」
「まあ、ここまで運んできて気にならないと言ったらウソになりますよ」
「そうかそうか、まあうちの孫娘たち三人は、この探索宇宙船でしばらくの間謹慎ということになろう。
ここで、しばらく働かせて密航のことを反省してもらおうかの」
オーベベン博士と俺が、ニニシアさんとマナルルさんを見ると、ニニシアさんは涙目で睨んでいてマナルルさんはしゅんと落ち込んでいた。
対照的である……。
『マスター、コンテナの移動終了しました。
オーベベン博士、この書類にサインをお願いできますか?』
「おお、良いぞ」
そう言うと、カレンから渡されたタブレットの画面にペンでサラサラと書いた。
これで、俺たちの仕事は終了だ。
このまま、俺たちは地球に帰ればいいのだ。
『はい、ありがとうございます』
「うむ。ところで、お主たちはこれからどうするのじゃ?」
「私たち、次の仕事に向かうだけですよ。運搬業は、結構需要があるみたいなんで」
そう言うと、オーベベン博士は少し落ち込んだようだ。
「そうか、孫から聞いたお主の星の本を読みたかったんじゃがのう……」
「あ~、それは申し訳ないです」
「まあ、よい良い。またお主たちに運搬を頼むやもしれん。
その時にでも、見せてもらうとしようかの」
「では、その時に」
そう言って、俺たちとオーベベン博士たちとは別れた。
ススーニさんたちの方を見ると、頭を下げて一礼するススーニさんと女の子。
そして、男の人。
確か名前は、男の人がダダールさんで、娘さんがリリロちゃんだったかな。
今後は仲良く、幸せになってもらいたいものだ。
『……マスター、何かいいことありました?』
「まあね」
『それは、よかったですね』
カレンに笑顔を向けられ、俺たちは宇宙船ランスロットに戻る。




