第14話 人を運ぶ依頼
最初の運搬業務を終え、俺たちの宇宙船ランスロットは宇宙を通常航行している。これには訳があり、まだ次の目的地が分からないからだ。
ナンシー班長へは、既に報告を済ませてあるので次の指示を待っている状態だ。
地球へ帰るという選択肢もあるが、ここは惑星『クトゥ』のある恒星系から外に向かって進んでいる状態。
地球からは、約1100光年離れた宙域なのだ。
帰るにしても、一月ぐらいはかかるだろう。
惑星『クトゥ』を離れて二日目、ようやくナンシー班長から次の仕事の指示が来たようだ。
『マスター、ナンシー様から通信が入っていますわよ』
「ありがとオリビア、すぐにメインに回して」
『分かりましたわ』
いつも通り、パネルを操作しメインモニターにナンシー班長が現れる。
今日は、椅子に座った状態のようだ。
『まずは、初業務、お疲れさまでした。
いろいろあったようですが、報告書を書いてくるところはよかったと思います。
が、相談はするべきでしたね?
私は、あなたの上司であると同時に仲間でもあるのです。
次からは、何かあったら報告と相談はするように』
「申し訳ありません」
『まあいいでしょう。
では次の仕事ですが、惑星『ニプルネル』へ行ってもらいます。
後で詳しい資料を送りますが、あなたの仕事は避難民の輸送です。
戦争により、惑星『ニプルネル』から惑星『ニーネル』への全人類避難となりました。その避難のお手伝いをしてもらいたいのです。
通常であれば、避難民運搬用宇宙船を使い避難させるのですが、我社にある運搬船十隻をフル活動してもあと五万人の避難ができません。
加藤さんには、その五万人の避難を任せます。
すぐに、惑星『ニプルネル』へ向かうように。
では、よろしくお願いしますね』
そう言って通信が切れ、メインモニターのナンシー班長の姿も消える。
「しかし、今度は人を運ぶのか」
『マスター、今回のお仕事の資料がこちらに』
カレンが、そう言って俺の左後ろからA4サイズのタブレットを渡してくれる。
それを見ていくと…。
「まず、戦争って星間戦争のことか……。
やっぱりあるんだな、宇宙戦争って……」
『はいマスター、今回の戦争は七回目のようですね……』
ふむ、第七次星間戦争て、ところか……。
「う~ん、あ、エヴァ、とりあえず惑星『ニプルネル』へ向けて発進!」
『了解、マスター!惑星『ニプルネル』へ向けて発進します!』
『惑星『ニプルネル』の座標、そっちに送りますわよエヴァ』
『ありがと、オリビア!……座標確認、亜空間長距離ワープ開始!』
パイロットのエヴァが、亜空間長距離ワープを作動させるためのレバーをゆっくり押すと、いつも通りの光の現象の後、光のトンネルへ突入した。
現在の場所から、惑星『ニプルネル』までの距離は314光年。
亜空間を六日とちょっと移動すれば、惑星『ニプルネル』の近くに到着するはずだ。
しかし、どこもかしこも、生命体がいる惑星は遠いな……。
これだと、地球で宇宙人と出会うなんて、本当に奇跡のようなことなのかもしれないな……。
『マスター?資料はよく読んで確認しておいてください?』
「ああ、ごめんごめん」
ボーっとしていたからか、カレンに注意されてしまった。
今は、資料に集中集中!
「え~と、運ぶ人数は約五万人で、そのすべてが冬眠カプセルに寝かせて運搬する……。
カレン、この冬眠カプセルって安全なの?」
『はい、冬眠カプセルに入ると約六十日間、仮死状態になります。
冬眠カプセルに入った人たちからすれば、寝てすぐ起きたような感覚らしいですね』
「へぇ~、便利なものがあるんだな~」
『この冬眠カプセルは、移民船用に開発されたものですが、今回は戦争避難用に使うのでしょう。
……ほらマスター、ここに届け先の惑星との距離が』
カレンが俺の後ろから、俺の読んでいるタブレットの資料にある届け先の場所を指さす。すると、カレンの匂いが香る……。
……いい石鹸使っているな……。
って、そうじゃなくて、届け先の惑星の距離だ。
「……1600光年?亜空間長距離ワープで、三十日以上になる距離だぞ?
何で、こんな場所に避難することに……」
『マスター、その下に理由が記載されていますよ』
さすが、ナンシー班長の資料。隙が無いな。
「……なるほど、避難惑星は運搬会社が用意したのか。
でも、うちの運搬会社『ショルフダール』が用意したんじゃなくて、別の運搬会社が用意したのか……」
確か、この宇宙には大きな運搬会社が三つあるらしい。
まず、一番大きい運搬会社が『マーティン&リニシィ』という会社だ。
この会社は、アンドロイド研究の最大手『リニシィ社』と手を組み、運搬会社のトップに立った。
人類系宇宙人が支配する銀河全体を、網羅しているめちゃくちゃ大きな会社だ。
二番目に大きいのが、『ケビン・ドルディ運搬』という会社だ。
この会社は、運搬業一本でここまで大きくなった会社で、今の宇宙連邦政府に一番信用がある会社でもある。
三番目が、うちの『ショルフダール運搬会社』だ。
10の銀河に顧客を持ち、地域密着型で大きくなった会社でもある。
痒いところまで手が届くサービスを目標に、運べるものはあらゆるものを運んでいる会社だ。
こう見比べると、うちの会社って大手だったのね……。
で、今回避難民の依頼を受けたのが『ケビン・ドルディ運搬』のこの銀河担当の下請けの下請け会社。
そこが運ばなければならなかったのだが、その会社、避難民運搬用の宇宙船を持っていなかった。
そのため、避難民運搬用の宇宙船を持ち、なおかつあまり使っていないうちに回ってきたというわけだ。
まあ、ある意味失礼な話だが、出来るところがすればいいのだから、ふってわいた儲け話なわけだな。
「で、避難民運搬用宇宙船を出したはいいが、入りきらなかったというわけか……」
『避難民運搬用宇宙船の収容人数は、一隻約二億人です。
今回避難に出した宇宙船が十隻。運ぶ人数は、約二十億人ですから、半端の五万人ほどが余ってしまったというわけですね』
一隻で二億人運ぶことができる宇宙船っていうのもすごいが、避難民が二十億人てのもすごいな……。
「その約二十億人ってのが、惑星『ニプルネル』の全人口かな?」
『ニプルネル人全体の三十パーセントですが、そうなりますね』
……な、なるほど。惑星『ニプルネル』が母星で、全体の人口の三十パーセントが住んでいたということか……。
ニプルネル人って、もう宇宙進出しているんだな……。
地球は、まだまだだな。
確か、今も国同士で宇宙の覇権争いをしているとか……。
現実知ったら、争い辞めるかな~……。




