第21話 リュウガ族⑧
久々の更新ですが、会話多い。。。
――なんだって!?
魔力解析してみる。死体がズタズタで分かりづらいが、よく見ると確かにホムンクルスだ。
だけど、黄竜でもなければ分からないレベルで精巧だ。
そんなレベルのホムンクルスを一度だけ見たことがある。
以前、ゴルゴンゾーラの建物に侵入したとき、奴を護っていたホムンクルスである。
あの時のホムンクルスも、拘束してよく見なければ分からない程精巧だった。
だとすれば、ズーユィンが!?
どうする? 言うべきか? これがホムンクルスであれば、本物のダイシャードは恐らくまだ生きて……
「ところで、マーリン殿は?」
「それが、どこにも……」
ああ、うん。マーリンは僕の中にいて、マーリンの体だったケイオルカは今ゾーハン達が使って……
ちょっと待ってストップ。何その訝しげな視線。
僕は咄嗟にケイオルカを転移門で呼び寄せ、その瞬間にマーリンをケイオルカに移す。
マーリンは直ぐにゲートで何処かに再び転移した。ケイオルカはまだ砂ネズミの姿だったから、誰にも見られなかったはずだ。
「まさか……マーリン殿がダイシャード様を……?」
「ちょっと待ってくれ。まさかマーリンを疑ってるのか? 僕たちは戦争を止めに来たんだ。ダイシャードはそれに協力してくれている。」
「そもそも、クリスティア殿とマーリン殿は何者なのですか? どこでそれ程の実力を身に着け、どこで知り合われたのですか?」
――二人ともドラゴンです。書架のスキルコピーでこんなに強くなりました。とは今言えないよなぁ。
「そもそも、ダイシャード殿は蛮族で最強の戦士です。それを殺せる者など限られています……。」
「そうだ。マーリンでも難しいはずだ。蛮族の気は特に魔法防御力が高い。」
「では誰が!?」
「……ズーユィン。奴なら可能だ。」
――そうだよ! 最初からこの流れで行けば良かった! これならこの死体がホムンクルスだと証明しなくても……
「ズーユィンって、さっき言ってた魔導士の協力者かぁ? 嬢ちゃんより強いとかいうぅ?」
ウスランが会話に入ってくる。
「そうです。誰にも気づかれずにこんなことができる者は限られている。」
「そいつが何で小僧を殺したぁ?」
「ゴルゴンゾーラはレナード王国に復讐したがっていました。ズーユィンはそれに協力している。だからダイシャードが邪魔だったのでしょう。」
――そう。ダイシャードが邪魔だったはずだ。じゃあ、なぜ殺さずにホムンクルスなんて出してきたんだ?
「……じゃあ、なんでそのゴルゴンゾーラは今ここにいねぇ?」
「……というと?」
「だからぁ、王国に復讐すんのが目的だったなら、なんで中途半端で消えちまったぁ?」
――ああ。そこまで戻るのか。
「それは、たぶん僕がいるからです。ズーユィンはあくまでもゴルゴンゾーラの協力者だ。表立って直接僕と闘うのは避けたいんだと思う。ゴルゴンゾーラに僕を倒させたい。だから陰に隠れたんでしょう。」
「陰……ねぇ。気になってたんだがよぉ。嬢ちゃんら以外でそのズーユィンて奴知ってるやつぁいるかぁ?」
ディグダッドが前に出る。
「儂が知っておるよ」
「ディグダッドかぁ。お前から見てそのズーユィンって奴はどんな奴だったぁ?」
「……実力は知らん。儂の前では抜けた魔導士じゃった。」
「つまり、そいつがクソ強えぇってのは、嬢ちゃんしか知らねぇ、と?」
「……ウスラン殿。何が言いたいのです?」
「んや? 実はズーユィンなんてクソ強えぇ魔導士はいなくて、嬢ちゃんとゴルゴンゾーラがグルで、小僧を殺したのも嬢ちゃんらじゃねぇの? って可能性もあるかなぁとよぉ」
「さっきも言ったでしょう!? ダイシャード殿は僕たちに協力してくれてたんですよ!?」
「さっきも聞かれてたろぉ? 嬢ちゃんらが何者でどこで出会って、どうやってそんだけ強くなったぁ? そいつが分かんなきゃ、本当に小僧が嬢ちゃんらに協力してたかなんて分かんねぇぜ?」
「僕達がダイシャード殿を殺したのだとすれば、それこそ何のために? 僕はあなたといた。マーリンが一人でダイシャード殿を殺すのは実力的に難しいですよ?」
「……毒、ではないですか?」
ジンダッドが再び口を開く。
「ただの毒では蛮族にはほとんど効きません。ですが、マーリン殿程の実力者ならば、私達の耐性を超える毒を作ることもできるでしょう。」
「確かに出来ない事はありませんけどね。」
鈴のような声が響く。
「!?」
「マーリン殿!?」
戻ってきてくれたらしい。状況が好転したかはまだ分からないけれど。
◆◆◆
「……今まで、どこに?」
「森を調べていたのですよ。それより、」
マーリンがジロリ、とジンダッドを睨む。
「私がダイシャード殿を殺したとすれば、何のために?」
「たとえば、蛮族と王国の間にもう一度戦争を起こして、蛮族を皆殺しにするためとも考えられます!」
「ジンダッド殿はクリスティアの実力を知っているはずだ。素手でリュウガ族の戦士を全員叩きのめした。剣を抜けば一人で蛮族全員を皆殺しにできますよ?」
「嬢ちゃんがどんだけ強くても、逃げるくらいはできるぜぇ? それじゃ皆殺しにはならねぇ。」
「私が逃がしません。」
――ああ、うん。冷静に見えて、マーリンさん、ブチ切れていらっしゃる。
竜は基本的に他生物を見下している。英雄や勇者、何かに秀でた人間を認めることはあっても、それはあくまで個人レベルでの話だ。
今の蛮族で辛うじてそれに該当するのはダイシャードだけである。他の蛮族はマーリン達にとって、殺すほどでもないから生かしている、僕が望むから協力してやっている、だけだ。
「ともかく! 疑いが晴れるまではあなた方を拘束させていただきます!」
「へぇ? 疑いは誰がどうやって晴らすのかな? それまで、お前達がどうやって私たちを拘束できるつもりなのかな?」
マーリンの口調が変わりつつある。殺気と魔力が駄々漏れだ。
このまま竜の姿に戻りそうな勢いである。
無意識に漏れ出た竜威圧に蛮族の数名が青ざめる。
「落ち着け、マーリン。ジンダッドもだ。とにかく拘束は断るが、一週間以内に何らかの情報を見つける。それでいいだろう?」
「そんなことが認められるわけ……」
「勘違いするな。譲歩しているのはこちらだ。認められないならお前らを拘束して勝手にさせてもらう。」
「ジンダッドっつったかぁ? それでおいときな。どうせお前らじゃあ嬢ちゃんはどうしようもねぇ。だがよ、嬢ちゃん。一週間で何も見つからなかったらどうするつもりだぁ?」
「お前達次第だよ。僕は戦争を止めに来た。それが叶わなければ遺憾に思うだけだ。」
皆が殺気立つ中、ディグダッドが疲れたように溜息をついた。うん。ごめん。




