第2話 取り戻す日常
「太陽ご飯できたわよ」
母親の声が自室まで聞こえた。
すごく懐かしい。ずっと聞いてみたかった声だ。
だが、両親に戻ったことは話せない。話しても信じてもらえない。
頬をつねり、夢でないことを確認するとすぐに返事をした。
ノートと教科書を閉じ、リビングへすぐに向かう。
リビングには割烹着姿の母がいた。
いつもと同じようにご飯を茶碗によそっている。
その姿に太陽は自然と涙がこぼれた。
「太陽どうしたの?」
「え?」
涙をぬぐうと同時に営業時代のように考えて嘘を突く。
「あーごめん、さっきまで寝てて」
「そうなのね、手伝って」
「うん……」
配膳を手伝っていると、19時過ぎに父が工場から返ってくる。
いつもと同じような作業着で汗臭い。沸かしてある風呂に入っていく。
普段通りの生活だ。
だが、ずっと太陽はこれを求めていた。
「太陽、勉強はどうなの?」
「ぼちぼちかな。多分大丈夫だと思うけど」
「大丈夫って、将来はお父さんの工場を継いでもらわないと」
「わかってるって」
太陽はずっと工場を継ぎたかった。そのため、大学では経営学を学び、会計から工場に貢献できないかと考えスタートした。
けれど、大学2年の時に父からあまり工場のことを気にするな、それに一度ほかの会社を経験してからウチに戻ってこいと言われ、就職先は外部を選んだ。
父からは大きな男になってこいという意味だったが、今となってはその当時から借金の気配が漂っていた。
「けど、受験で忙しいからあんまり、その話はしないで」
「わかった。けど、本当に大丈夫?」
「何とかなると思う」
先ほどついた嘘で太陽は確信したことがある。
知能指数、記憶はほとんど二〇〇五年の自殺前と変わらない。
むしろ運動能力が当時よりも高いので、総合力では今のほうが高い。
まずは整理しなければいけない。
今は一九九〇年の一二月二〇日。
受験まであと六〇日。
そして両親の自殺まで一〇年
問題は両親に借金になることを伝えて大丈夫かどうか、
そして、その借金を未然に作らせない方向に進む。
もしくは借金1億円をそのまま返済してしまうかの二択。
前者に関しては大学受験に失敗したのちに工場で世話になる。そこで信頼を勝ち取ればなんとかなる可能性はある。
だが、問題はそこではない。未来の知識はあるが、両親は太陽のことを信用するかどうか。
営業を五年やって理解した。
メリットだけ語る人間は信用されない。
子供の私の言葉など、なおさらだ。
——なら方法は一つ。
私は、十年で一億円を稼ぐ。
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