莫大な資金で村おこし!――特大スパリゾート計画と、神話級農具による温泉発掘!?
莫大な資金で村おこし!――特大スパリゾート計画と、神話級農具による温泉発掘!?
闇金シンジケート『黒蛇商会』の襲来から数日後。
ポポロ村の村長室には、眩いばかりの黄金の山が築き上げられていた。
「……金貨五万枚。辺境の一つの村が持つ予算としては、完全に規格外だな」
腕を組んでその山を見下ろしながら、レオンハルト様が感心したように息を吐いた。
彼が辺境伯として治めるシュヴァルツ領全体の年間予算にも匹敵しかねない、莫大な額。それが、キャルルさんが一晩で(物理的に)巻き上げた……もとい、寄付された資金だった。
「はい! これだけの資金があれば、村の負債をチャラにするどころか、最高のお釣りが来ます!」
デスクの前に立ち、長い指示棒を持ったキャルルさんが、ウサギ耳をピンと立てて得意げに胸を張った。
今日は彼女の提案で、この莫大な資金を使った『ポポロ村・特大村おこし会議』が開かれていたのだ。
「そこで私、新しい村長として、このポポロ村を辺境一の観光地にすべく、最高の計画を立てました!」
キャルルさんが、背後の黒板にバサァッ!と大きな設計図を広げた。
そこに描かれていたのは、巨大な湯船や、木造の立派な休憩所、さらには『お食事処』まで備えられた、見慣れない巨大な施設の絵だった。
「名付けて、『ポポロ村・超特大スパリゾート計画』です!!」
「すぱりぞーと……?」
私が首を傾げると、キャルルさんは目をキラキラさせて説明を始めた。
「はい! ルナミス帝国で大流行している『銭湯』と『サウナ』を融合させた、究極のリラクゼーション施設です! 冒険者や商人たちが旅の疲れを癒やし、ついでに美味しいご飯を食べてお金を落としていく……まさに最高のビジネスモデルですよ!」
「なるほど。この村は主要街道に近い。そのような巨大な『癒やし』の施設ができれば、近隣からの集客は間違いなく見込めるな」
レオンハルト様が、為政者としての鋭い目で設計図を評価する。
「しかし、ウサギよ。お前のその『すぱりぞーと』とやらには、大量の『湯』が必要になるのではないか? この村の近くに、そんな都合の良い温泉など湧いていないぞ」
イグニス様が的確なツッコミを入れた。
確かに、ポポロ村には綺麗な小川はあるけれど、温かいお湯が湧き出る温泉なんて聞いたことがない。
「そこは問題ありません! 温泉がないなら……掘ればいいんです!」
キャルルさんが、ビシッ!と指示棒を、壁際でタバコをふかしている龍魔呂さんに向けた。
「農作業のプロフェッショナルである龍魔呂さんなら、地下深くの水脈まで、パパッと穴を掘れますよね?」
「……あぁ? 俺をなんだと思ってやがる」
龍魔呂さんが面倒くさそうに三白眼を向けた。
「俺は野菜を育てる農家だぜ? ただ穴を掘るだけの土方作業なんざ……」
「温泉施設には、特大の『農家直営レストラン』を併設します。龍魔呂さんの野菜を、毎日数百人の客に食べてもらえる最高のショーケースになりますよ!」
「……悪くねぇな。表の広場に案内しろ」
龍魔呂さんが、一秒で神話級農具『創世のクワ』を肩に担ぎ上げた。
その見事な手のひら返しに、私たちは思わずクスッと笑ってしまった。
* * *
「この辺りが、一番地脈のエネルギーが溜まってやがるな」
村の端にある、開けた空き地。
龍魔呂さんが地面にクワを突き立て、スッと目を細めた。
そして、赤黒い闘気を全身に漲らせると、クワを高く振り上げた。
「深さ一千メートルってとこか。……一発で貫くぜ。――『大地割り』ッ!」
ズドォォォォォォォォォンッ!!
龍魔呂さんがクワを振り下ろした瞬間、大地が真っ二つに割れ、凄まじい地響きと共に、巨大な亀裂が地下深くへと走った。
すると次の瞬間。
ゴボァァァァァァッ!!
割れ目の奥底から、もうもうと湯気を立てる超高温の地下水――『温泉』が、まるで間欠泉のように空高く噴き上がったのだ。
「うぉぉぉっ!? ほ、本当に温泉が出たぁっ!」
「龍魔呂さん、すごいです! 一撃で温泉を掘り当てるなんて!」
キャルルさんがウサギ耳をピョコピョコと跳ねさせて大喜びする。
「へっ。土を耕すのは俺の専門だからな。だが、嬢ちゃん……このお湯、このままだと硫黄の匂いがキツすぎるし、温度も熱すぎて入れねぇぞ」
龍魔呂さんの言う通り、噴き出した温泉はボコボコと煮えたぎっており、卵を入れれば一瞬でゆで卵になりそうなほどの超高温だった。
「フッ。出番のようだな、クロエ」
「はい、お任せください!」
私はエプロンをきゅっと結び直し、噴き上がる温泉の源泉へと両手をかざした。
ただのお湯を、最高の癒やし効果を持つ『神話級の霊泉』へと作り変える。錬金術師の腕の見せ所だ。
「私の魔力と、陽薬草のエキス、それに龍魔呂さんの畑で採れた『月見大根』の酵素をブレンドして……! ――【万物昇華】ッ!!」
カァァァァッ!
私の手から放たれた黄金の光が、源泉に溶け込んでいく。
すると、キツかった硫黄の匂いは、ふわりと香る上品なハーブの香りへと変わり、熱すぎたお湯の温度も、人が入るのに完璧な『適温(四十二度)』へと自動調整された。
「すごい! お湯がキラキラ光ってます!」
「これでお肌はツルツル、疲労回復効果は通常のポーション並みです! それに……イグニス様!」
「分かっている」
イグニス様が指先を鳴らすと、源泉の底に『火竜の魔石』が設置され、お湯の温度が未来永劫、完璧に保たれるシステムが完成した。
「完璧です! 龍魔呂さんの発掘力、クロエさんの錬金術、イグニスさんの魔石……。これぞまさに、奇跡のコラボレーションですね!」
キャルルさんが、ガッツポーズを決める。
あとは、莫大な資金を使って、シュヴァルツ領から腕利きのドワーフの大工さんたちを呼び寄せるだけだ。
ポポロ村の超特大スパリゾート計画は、最強の仲間たちの力によって、ものすごいスピードで形になり始めていた。
* * *
それから、数週間後。
莫大な資金とドワーフたちの超絶技巧、そして私たちの魔法の力によって、ポポロ村の巨大スパリゾート『ルナ・ポポロの湯』は、あっという間に完成の日を迎えていた。
「ふはぁ〜っ……極楽、極楽ですぅ〜……」
広々とした岩造りの露天風呂。
湯船に浸かりながら、キャルルさんが頭にタオルを乗せ、だらしなくウサギ耳を垂らしてとろけていた。
今日はグランドオープン前の、私たちだけの貸し切りプレオープンだ。
「本当に、すっごく気持ちいいですね……。お肌がすべすべになります」
私も、肩までお湯に浸かりながら幸せなため息をついた。
澄み切った青空の下、温かいお湯に浸かって女の子同士でおしゃべりをする。こんな贅沢な時間が来るなんて、実家にいた頃は想像もできなかった。
「むぅ……悪くない。我の神炎で温めた石に水をかけ、蒸気を発生させる『さうな』とやらも、なかなか心地よい暑さだったぞ」
隣では、バスタオルを巻いたイグニス様が、少しのぼせたように顔を赤くしながらも満足そうに頷いていた。火竜である彼女は、サウナ室の圧倒的な熱気がすっかり気に入ってしまったらしい。
「えへへ……。私、ポポロ村に来て本当によかったです」
キャルルさんが、お湯の中でパシャパシャと足を揺らしながら、柔らかい笑顔を向けた。
「お姫様だった頃より、ずっとずっと楽しいです。クロエさんやイグニスさんと一緒にお風呂に入って、美味しいご飯を食べて……こんな尊い日常、絶対に手放したくありません」
「キャルルさん……」
私は、キャルルさんのその言葉がとても嬉しくて、思わずお湯の中で彼女の手をギュッと握り返した。
「……ッ、キャァァッ! 尊いぃぃっ! クロエさんのピュアな笑顔、眩しすぎます! ああ、でもこの笑顔の隣にはやっぱりレオンハルト様がいないと……!」
キャルルさんが急に興奮し始め、鼻血を出しそうな勢いでバシャッと立ち上がった。
相変わらず、私のことになると急に『推し活』モードのスイッチが入ってしまうらしい。
「ほらクロエさん! 早く上がって、レオンハルト様のところに行きましょう! お風呂上がりの色気で、一気に畳み掛けるんです!」
「えぇっ!? た、畳み掛けるって何をですかぁっ!?」
キャルルさんにぐいぐいと背中を押され、私は顔を真っ赤にしながら脱衣所へと追い立てられた。
一方、その頃。
男湯の露天風呂では。
「……いい湯だな。あのウサギの娘、なかなか面白いことを考える」
「へっ。俺の畑で採れた野菜を使ったフルーツ牛乳も、絶品だぜ。お坊ちゃんも飲むか?」
レオンハルト様と龍魔呂さんが、湯船に浸かりながら、のんびりと杯を交わしていた。
かつては冷徹な『氷の死神』と呼ばれた騎士と、異世界のヤンキー農家。
二人の背中には、村の平和を守り抜いた男たちだけの、静かで確かな絆が漂っていた。
「……クロエの笑顔が、この村にある。俺は、それだけで十分だ」
「違いねぇ」
新村長キャルル・ムーンハートの加入により、ポポロ村はさらなる活気と、最強の防衛力を手に入れた。
莫大な資金で作られた『スパリゾート』は、これから先、辺境一の観光名所として大繁盛していくことになるだろう。
ドタバタで、規格外で、だけどどこまでも温かい。
私たちの辺境スローライフは、まだまだこれからも、賑やかに続いていくのだ!
ここまで「第四章」を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
闇金シンジケートから巻き上げた(?)五万ゴールドという莫大な資金の使い道は、キャルルさんの現代知識を活かした「特大スパリゾート(銭湯&サウナ)」の建設でした!
龍魔呂アニキの神話級農具による源泉一発掘り、クロエの万物昇華による泉質調整、そしてイグニスお姉様の魔石による温度管理。最強の仲間たちのコラボレーションで完成した極上の温泉、いかがでしたでしょうか。
露天風呂での女の子たちのキャッキャウフフなサービスシーンから、やっぱり「推し活」に走ってしまうキャルルさん。そして男湯でのレオンハルトと龍魔呂の渋いやり取り。
これにて、波乱万丈だった第四章も、ぽかぽかに温まるハッピーエンドで完結となります!
「温泉回最高!」「キャルル推せる!」「クロエたちの日常がもっと見たい!」と思っていただけた読者様!
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